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未来へ続く道~Wings to flap~  作者: 禾楠
第一章
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委員会・部活




「あー、今日の総合授業の時間は、所属する委員会活動を決めてもらう。基本的に、免除される部活動以外の奴にやってもらうから、そのつもりでな」


「えぇ~!?」



我がクラスの担任であり、生活指導でもある小山(こやま) 一志(かずし)の宣言に、クラス内から非難の声があがる。

時間は月曜日の6限目。


各クラスで、例えば今回のように委員会活動を決めるだとか、体育祭や文化祭等の行事の活動に使われる時間だ。

行事がなければ、担任や学年毎に内容が考えられ、実施される。

今日は、先生の宣言通り委員会活動について決める事になるらしい。

俺は、席決めによりうまく一輝の前――窓際の後ろから2番目――になったので、その席を有効活用し、後ろを向いて話しかける。



遼「なぁ、一輝。この学校ってどんな委員会と部活があるんだ?」


一輝「んぁ? そういうのに興味ないから去年何もしてないんだわ……だから梨央か水城に聞いてくれ。ふぁ~……おやすみ……」



面倒くさそうに一蹴すると、大きな欠伸と共に机に突っ伏した。

相変わらずというか何というか、大体予想通りの返事と行動に苦笑いしてしまう。


ちなみに、梨央廊下側の前から2番目。

水城さんは中央列の真ん中らへんと、席は若干離れている。



小山「委員会は全部で6つだ。生徒会、学級委員、美化委員、体育委員、保険委員、図書委員だ。委員会に所属しない奴にはクラス内での仕事、教科事の手伝いみたいなもんがあるからな。何も役職につかない奴はでらん。早い者勝ちだからな。学級委員だけは先に決めにゃならんが……誰かいるか?」



教室にいる生徒が皆黙り込み、目を逸らす。

学級委員といえば、何かある事にクラスを仕切り、休み時間や放課後は仕事に追われる等、誰もが敬遠しがちな役職だ。


学級委員が中々決まらないのは、何年になっても変わらないらしい。

教壇に立つ小山先生がわざとらしくため息をついた。



小山「ったく……誰もいないのか? 仕方ない……樋沢、頼めないか?」


梨央「わぁ……ご指名ですか?」


小山「貧乏くじですまんな。水城も候補だったが、まぁこういうのは樋沢の方が適任だろう」


さくら「……ほっ……」



小山先生のご指名に唖然とする梨央に隠れ、水城さんが安堵のため息をついた。





梨央「しょうがないなぁ……センセ、貸し1ですからね?」


小山「あぁ、それでいい。んじゃ頼んだぞ」



教師に対する態度としてはどうなのか、甚だ疑問ではあるが、小山先生は笑って答えると窓際にある自分の机に戻った。

入れ替わりで梨央が教壇に上がる。


黒板に、先程上がった委員会の名称と教科事に役職が書かれていく。

書き終わると、梨央は長い髪を振りながら振り返った。



梨央「よしっ。えー、このクラスの委員長に任命されちゃった樋沢 梨央です。ちゃっちゃと決めちゃいたいと思うので、協力よろしくね♪ それじゃ~……まずは保険委員からっ! 立候補は?」


さくら「あ……私やりたい……」


梨央「なら女子からはさくらちゃんね♪ 男子は~?」


「俺やるよ、去年もやったし」


梨央「ん、他にいないなら決定!! 次は~……」



教室が一気に活気づく。

立候補や推薦で、次々と決まっていく。


そんな光景を見ながら、俺は一輝と話しをしていた。



遼「まさか梨央が委員長になるとはねぇ……」


一輝「初めてってわけじゃないからな……去年も何だかんだで委員長やってるし。男女分け隔てなく交流もある。そういうのも指名された理由だろうな」


遼「へぇ~……」



思わず感心。

帰ってきた時、梨央は身長の事を言いながら成長してると言っていたが……


梨央だって、成長してるじゃないか。



小山「よしよし、だいぶ決まってきたな……樋沢、副委員長はお前が決めていいぞ」


梨央「お、決定権頂きました!」



小山先生の言葉に梨央がニヤリと笑みを浮かべる。



一輝「げ……」


遼「あ~……」



俺と一輝は同時に声をあげる。

昔から梨央がこういう顔をする時は、何かを思いついた時であり、その内容はだいたい俺達を巻き込む事が多いからだ。



梨央「んふ~、遼くん?」


遼「……何?」



満面の笑顔で梨央が俺の目の前までやってくる。

このタイミングで声を掛けられるのは、どう考えても嫌な予感しかしない。


横では一輝が「南無~」とか言いながら合掌している。

そんな一輝を無視して、梨央は俺の肩をぽんっ、と叩いた。



梨央「……よろしく、相棒っ♪」


遼「え~っと……ちなみに拒否権は?」


梨央「遼くん、私とじゃ嫌なの……?」



遼「……うっ……」



目を潤ませながら、梨央は上目遣いで俺の事を見てくる。

この時点で、俺の負けは確定していた。



遼「わかったよ、やるよ……」


梨央「さっすが遼くん! そう言ってくれると思ってたよ♪」


一輝「まぁ何だ、諦めるしかないよな。今までお前がドイツにいた間の俺のポジションだと思うと何だか複雑だけどな……ドンマイ」


遼「……はぁ……」



一輝の悟りきった言葉と、在り来たりな慰めが少しだけ心に染みた。











………

…………

……………










各委員、教科事の仕事等が全て決まると、程なくしてチャイムが鳴り響いた。

その後、手早く掃除を済ませ下校準備をする。


全員が席に着くと、小山先生が教壇に立った。



小山「よし、今日はこれで終いだ。連絡事項もなし。委員長、早速頼むぞ」


梨央「起立、礼!」



梨央の号令で挨拶をすると、小山先生は教室を出て行った。

すぐに教室内は、騒がしくなる。


遊びに行く相談をしている人や、そそくさと帰って行く人。

張り切って部活に行く人等、放課後の過ごし方は人それぞれのようだ。


そんな中、梨央と水城さんが鞄を持って俺の席へと近づいてきた。



遼「はぁ……」


梨央「あれ、どうしたの遼くん。ため息なんか吐いて」


遼「……戻ってきたばかりの転校生を副委員長に任命してくれた誰かさんのおかげで、ため息の一つも出るよ」


さくら「あ、あははは……」


一輝「俺は梨央が委員長に選ばれた時点で、俺らのどっちかがやる事になるのは覚悟してたけどな。改めてドンマイだ」



そういう問題だろうか、と内心で再度ため息を吐く。

決まってしまった事だし、俺自身が承諾した事だけにこれ以上文句を言うつもりもないが、やはりため息の一つは許して欲しいものだ。



梨央「まぁまぁ、副委員長してれば学校にもすぐ慣れると思うし……私と一緒に頑張ろうよ♪」


遼「そうだろうけどね。まぁ頑張るよ」



笑顔でそう言い切る梨央には、本当に適わないなぁと思いながら苦笑した。

そんな時にふと、先程感じた疑問を思い出す。



遼「そういえば、皆は部活とか入ってるの?」



どんな部活があるか、一輝に聞いた時から気になっていたのだ。

皆はどこかに所属しているのかな? と。




さくら「えっと……私は帰宅部かな。家の手伝いあるから」


梨央「私も帰宅部だよ? 習い事とかあるし」


一輝「俺は部活じゃなくて同好会だけど、一応入ってるぞ」


遼「同好会?」


一輝「あぁ、総合格闘技同好会」



総合格闘技同好会……

またすごい同好会もあるものだ。



梨央「かずくんの入ってる総合格闘技同好会、略して総技会だけど……学校内じゃ小さいからねぇ……」


一輝「うっせ。行くか行かないかは自由だし、緩い同好会だから楽なんだよ。身体も鍛えれるから良いんだよ」


さくら「水崎くんは、何か部活に入るの?」


遼「いや、まだ考え中なんだけどね」



どうやら、仲間内では基本的に帰宅部所属らしい。

一輝の言う、総合格闘技同好会……総技会も若干気にはなるが、俺自身も帰宅部でよさそうだ。



一輝「そうだ、よかったら遼も……」


梨央「遼く~ん、さくらちゃ~ん、帰ろ~♪ かずくんバイバーイ♪」


遼「へ?」


さくら「きゃっ!?」



一輝が何かを言いかけた瞬間、梨央が俺と水城さんの背中を押して歩き出す。



一輝「ちょ、待ってくれよ! それは酷くないか?」


梨央「さって、“帰宅部”の私達は今日どこ行こっか?」


遼「まぁ、どこでもいいけど?」


一輝「お~い……」


さくら「あぅ……私今日お手伝いあるから……」


梨央「そうなんだ? じゃぁまた今度ね♪」


さくら「うん、そうだね……」



帰宅部を強調しながら梨央は一輝を無視して話しを進め、何となくそのまま会話は進む。

そんなに微妙な同好会何だろうか?



一輝「……待ってくれよ~! 俺も帰るって~!!」



微妙に半泣きになりながら追いかけてきた一輝が、少しだけ不憫だった。


ちなみに、後日梨央に何故一輝の誘いを無視するように遮ったのかを聞いた所……



梨央『え? だって、遼くんが同好会入ったら遊び行く時間減っちゃうもん。ドイツに行ってた4年分、たくさん遊びたいからね~♪』



との事だった。

梨央の言葉を聞いた瞬間、嬉しくはあったが……尚更、一輝の事が不憫に思えたのだった。




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