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舌打ち

 ある昼下がりの事。


 悠二の妹である千春は何の気なしに二階から降りてくるとリビングへひょこりと顔を出した。


 そして、台所に兄の姿を見つける。


 「…お兄ちゃん?」


 ――そんなところで何してんの?――


 「……」


 何もせず、ただこちらに背を向けて立っているように見える兄。


 千春は首をかしげた。


 そして、訊ねる。


 「お兄ちゃん、どうした?」


 「……」


 台所に突っ立って居る兄。


 料理を作るでもなく、一体なにをしているのだろう。


 声をかけても微動だにしない兄を不審に思った千春はとてとてと軽い足音を立てて兄に近寄った。


 ぐいっとその表情を覗き込んで、千春は目をぱちくりさせた。


 目の前に顔を覗かせても反応はなし。


 というかどこを見つめている――?


 焦点が合ってない瞳。


 千春を見ていない。


 その瞳に自分を確認できるのに。


 ということで、とりあえず背中を突っついてみた後、首筋に息を吹きかけてみる。


 兄はこういうことに弱い。


 いつもなら変な奇声とともにすぐビクっとなって背中をのけぞらせるはずなのだが、今は違う。


 何の反応もなし。


 「……」


 ということで、千春は今度は抱きついてみることにした。


 兄の背後に回りこんで後ろから抱きすくめる。


 「……」


 ぎゅっとだんだんと、抱きしめる腕に徐々に力をこめていく。


 だが、それでも反応なし。


 ノーリアクション。


 千春はつまんないとでも言うように、はぁ…と息を吐き出した。


 そして、両目を思いっきり眇めて言った。


 「あんた、誰よ?」


 チッという舌打ちつきで。


 

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