ハルギライ
Twitterで知った深夜様の「春のわくわく死体埋め企画」参加作品です。
ちいさな花が咲き
散る度に思い出す
本当は
これが最後だと
さようならと告げたはずだったのに と
土を掘り
大きな穴を
額には汗を
そして
疲労と焦りを抱えて
埋めた
これが最後だと
決別できると
終れると
さようなら と言えた
その年の桜は満開になった
心も
爽やかになると思っていた
けれど
うすく色づくちいさな花々は
完全犯罪となった身をひどく縛る
花が咲き
散る度に思い出す
あの夜
土を掘り
大きな穴を
額には汗を
そして
疲労と焦りを抱えて
見下ろした 最後の姿を
これからが最高の人生になると
さようならと笑えたはずなのに と
真実が後悔となって押し寄せる
本当は
涙が絶えなかった
本当は
恐怖に包まれていた
後戻りできなくなっただけだ
ちいさな花が咲き
散る度に思い出す
悲しみと絶望に支配されていたあのときの方が
よほど
幸せだったと
桜の木の下に埋めたもの
桜の木の下には埋められなかったもの
今年もまた
桜は満開となるのだろう