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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第一章 太陽さんの長い一日
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大変心地よい朝です。

巫「前回、衝撃の事実があった筈なのに、今更過ぎて軽く流しちゃったね」

太「そうですね。ボクも誰も驚かないだろうなって思ってました」

巫「あれっ、伝ちゃんはどうしたの?」

太「伝ちゃんって――あの人ならご飯を作りに行きましたよ。完成は次回だと」

巫「そうなの? 催促したつもりはないんだけど、相変わらず世話焼きな人だね」

太「いやいや、それよりもやっとボクの出番なんですから注目してください」

巫「え~~~、私も飽きて来たから次の人に交代したんだけど?」

太「交代って、そんな人来る予定ないじゃないですか。当分は三人で回します」

夢を見ている間、自分の体が何処にあるのか気にしている人間はどれぐらいいるか?

少なくとも、ボクにはそんな事に思考を巡らした事がない。

だから、その日のボクも自分が何処で寝ているのか全く気にしていなかった。

ぼんやりと、ああ自分はまた夢を見ているんだなとそれだけを考えている。


『真っ白な世界だ・・・・・・』

何もない。本当に何もない世界だ。そこにボクだけが存在している。

・・・・・・いや、違う。もう二人、子供がいる。男の子と女の子だ。

何をしているのか。よく見てみると二人は白い地面に何か落書きをしている。

それをただ黙って見ているいると、もう一人女の人が現れてその落書きを消させ始めた。

『誰だろう?・・・・・・二人の親かな』

ぼんやりと、漠然とした意識。やがて、三人は姿を消し始める。

それと同時に自分の意識も少しずつ目覚め始める。まるで、その白い世界から隔離されるみたいに。意識が肉体に戻っていく。


「・・・・・・・・・ここは?」

目が覚めると最初に考えたのは、自分が何処にいるのかだった。 

夢の中では全く考えなかったのに、不思議な話だ。

見慣れない天井。慣れないベッドと布団の感触。

最初は泊まった旅館なのかと思ったけど、それにしては見窄らしい場所だ。

「あらっ、やっとお目覚め?」

頭の回転自体は起きていた時からハッキリしていた筈なのに、隣で本を読んでいる人物に全く気づかなかった。


視線を声のした方に向ける。そこには綺麗な女性が座っていた。

歳は二十の半ばぐらいかな。真っ直ぐで長い茶髪。色白の肌。スラッとしていて、どこか豊満な体。一目で綺麗だと思う。

「んっ、大丈夫?」

眼鏡を掛けている。それに、何か本を持っている。ボクが寝ている間、ずっと読んでいたのかな?

「え~と・・・・・・」

それにしてもこの人、何処かで見たような気がする。

確か、夢の中で見た人に似てる。


「・・・・・・お母さん?」

知的な感じで本を読んでいた女性が、盛大にコケてくれた。

かけていた眼鏡も綺麗な放物線を描いて飛んでいる。

『そりゃ、年齢的にはもう結婚して子供がいてもおかしくないけど、子持ちに見えたのかしら? あの男が態度をハッキリしないから、ズルズルと今まで・・・・・・』

何か、小声で呪詛を唱えているよ。触れてはいけない事だったのかな?

「・・・・・・まだ寝ぼけているのかしら? 今、自分がどういう状態なのか理解してる?」

片手で頭を押さえながら何とか立ち上がると、女性はこちらの顔を覗き込んできた。


「状況・・・・・・ですか?」

とりあえず、自分が寝ている布団が安物だという事は理解している。

そして、それは決して口にしてはいけない事も理解している。

「いえ、全く理解してません」

「あなたはね、昨日の夜泊まっていた旅館が焼け落ちて、たまたま居合わせたあたしの彼が助けてくれたのよ。

それで放っておく訳にもいかずに、家に連れ帰ったの」


「そうなんですか?」

言われてみても、ピンと来ない。

何しろ、自分の身体を触ってみてもどこにも火傷の後がないのだ。というか、着ている寝間着も見慣れない服だ。

寝ている間に脱がされてしまったのか? 女の子としては、とてもまずい状況だ。

「ありがとうございます。助かりました」

しかし、見られたのが同姓で、こんなに綺麗な人ならば大丈夫だ。

――――うん、大丈夫だ。


「まあ、あなたの場合は助けが本当は必要なかったのかも知れないけどね」

「?」

よく分からない言葉。首を傾げていると、そんなボクの仕草に彼女は微笑んでいる。

彼女はそのまま視線を後ろ―――机に座りながら寝ている人物に向ける。

「あんた、あの子が起きたわよ」

「ん~~~おお、もう目が覚めたのか。ふわ~ぁ、・・・・・・まだ眠い」


寝ぼけ眼。不安定な足取り。乱れた髪。

そして、何故か全身が煤で汚れて黒くなっている。

だらしなくて、いい加減な人・・・・・・それが、ボクが最初に抱いた印象だった。

「いい加減、お風呂に入りなさい」

「眠いんだよ。今風呂に入ったら沈んでしまう・・・・・・このまま寝たい」

その印象が確信に変わるのに、さほど時を必要としなかった。

「シーツが汚れるでしょうがっ。まったく……」

頭を抱えながらこちらに歩み寄って来る。

近くで見てみると、目の下にクマが見えた。


「え~と・・・・・・」

ボクがどう反応すれば良いのか悩んでいると、女の人が自己紹介を始めた

「あたしの名前は、ソフィア。彼の名前は、コチ。彼は焼け落ちる旅館から、あなたを助けたのよ」

「ソフィアさんにコチさん……」

いまひとつ動きの鈍い頭。それでも、二人の情報を頭の中に刷り込もうと努力する。

そして、ようやく気づく。自分はまだ自己紹介をしていない事に。


「あの、ボクの名前はカ―――」

相手が名乗ったのであれば、自分も名乗るべきだ。そんな当たり前の行為に、何故かソフィアさんは手で口を塞いだ。

「こら、神様になったんだからおいそれと本名を口にしないの。実際、知られたからといって何か実害がある訳じゃないけど、仮の名を付けるのが風習なの」

「風習……?」

「そっ、もうただの人ではなくなったしるしとしてね」

「人ではないしるし―――改めて言われるとなあ……」

「何を重い溜息を吐いているの。今日からあなたが名乗る名前だけど『アマノ』と彼がさっき付けてくれてたわ」

アマノ……どういう意味だろうか? 尋ねるとそのままの意味だと答えた。

ただ本当に問題だったのは、ソフィアさんの次の言葉だった。


「随分とまともそうな子じゃない。ホントにあんたの同族? あたし、『神』って呼ばれる人種は奇人変人の類いだと思っていたんだけど?」

「否定はせん。ただ、中には変わり種もいるという事だろう」

「あっ―――!」

かみ…カミ………神? なにやら、聞いてはいけない事を聞いたような気がする。

ボクはまだ自分が神である事を誰にも話していない。

唯一話した事があるのは、この大陸でこの国にいる最強(自称です)の神と呼ばれる『本の虫』(聞く度に情けない思いがする名前)の老人だけだ。

それ以外に知っている人と言えば、ボクがこれから師事する事になる人だけ。


確か、その人は黒髪の男性の筈。つまり……つまりは、

「変わり種って、どっちが正常なの? まあ、素直な方が『調教』しやすくて楽ね」

「馬鹿者。『教育』を名目に『調教』するだけだ。勘違いをするな」

「あら、ごめんなさいね。おほほほほっ―――」

「あっはっはっはっはっ―――」

このだらしなくて、煤で真っ黒になっている人がボクの先生に―――と考える前に、離脱すべく身体が動くが、ソフィアさんにすぐベッドに取り押さえられてしまう。


「あたしの職業は学者なんだけどね。色々あって、これ(男)の世話をしてるの」

「頼んだ覚えもないのに、世話をし続けているんだ。まあ、迷惑でないから放って置いている」

状況は随分変わったのに、口調は変わらずのんびりと。何とか抜け出そうともがくが、全く動かない。マズイ……色々な意味で危ない。

「なんでただの学者さんがこんな素早い身のこなしで、暴れる人間を簡単に押さえつけれるんですかっ!?」

「いやいや、世知辛い世の中だからね。ただの学者さんも護身術の一つも覚えないと危なくてね~~~」


口調は未だのんびりと、しかし、怪しげな笑みを浮かべ始める。

頭が混乱している。どうすればいいのか分からない。

「―――と云う名目で、男(時には女)を効率よくモノにする為の技術だ」

そんな考えがまとまる前に、横で眺めていたコチという人から一言。それにより、暴れ具合が最高潮に達する。だけど、本当に身体が動かない。

「可愛いわ……ホントに食べちゃいたいぐらい……」

「うわあああ~~~目が爛々としてるよ、この人~~~」


ベッドに押し倒され、耳元で愛?を囁かれる。何だかどんどん頭がクラクラしてきた。

「暴れても無駄だと思うぞ。俺も抜け出せた事が一度も無いからな」

絶望的な情報だよ。もはや、この人に食べられるしか道はないのか………

だけどよく考えてみたら、こんな綺麗な人と良い仲になるのも、それはそれで悪く気がしないような間違っているような、だけど魅力的なような不思議な気分………


「おお、追い詰められて冷静な状況判断が出来なくなって来たな」

呑気な声で実況を続けてくれる黒煤男。助けを呼びかけようとして、どう考えても無駄だと悟る。

「あとちょっとで落ちるんじゃないか?」

「まかせなさい。必ずこの子はあたしのモノに――――」

「――――してどうするのっ!?」

誰かの掛け声。何か鈍い音と共に、身体の拘束が解かれる。

どこから現れたのか、ベッド脇には見知らぬ女の人が―――どこか、ソフィアさんと似ているような、不思議な感じの人が拳を突き出した格好で立っていた。


その拳の先には、もちろん床を転がって目を回しているソフィアさんがいた。

「おお、ヨミ。風呂から上がったのか」

「コチ……あなたも、助けてあげればいいのに」

「巻き込まれたくなくてね。被害が一人で済むのなら御の字だろ」

「………」

役に立たない人だ。これからこの男の人を当てにするのはやめようと、心に誓った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 目線や、しぐさ、本当に丁寧に愛を持って描かれていますね。あなたの小説の魅力があなたの人となりを表していますね。素敵です。ありがとうございました。
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