久方ぶりの東風が夜に吹く
太「今回の話では懐かしい人たちが出ていますね」
伝「ほんとね~特に雷なんかは大和言葉を調べ直す必要があって調子戻るまでは書けなかったらしい…」
太「今も本調子じゃないのに…よく書こうと思ったね…」
伝「いや~それがね…とりあえず書いてるだけで、修正するつもりらしい…」
太「この作者の修正するって言葉…いつになったらやるのやら…(-_-;)」
投擲にとってもっとも大切なのは、空間認識能力と、相手をしっかりと見つめ照準を定める事と、そして投擲フォームを崩さないでおく為の筋力。
理想のフォームを覚え、視点を動かしていなくても狙いを外す場合は、大体は筋力不足が原因だったりする。
――――そんな当たり前の事を考えていると、一緒に森の中に入った女性はまるでキャッチボールするような表情で投擲用のナイフを投げ、遥か遠くにいる小鳥を射落とす。
「相変わらず見事なモノだな…標的が見えているのか?」
「いや…ただの直感かな? 相手と自分を結ぶ線が見える感じ」
「分かるような…判らんような…俺自身弓を扱ってるから、ある程度は理解できるが…それでもお前ほどの空間認識能力は無いからな…」
この大陸に来てからの付き合いだが…それでも、ヨミの能力の底知れなさは測れない…
などと感心していると、こちらを見返し、パチパチと目を瞬かせ首を傾げている。
「この感覚って…巫女としての能力だと思ったけど…違うのかな?」
「ああ~~どうだろな……神自身も力の使い方を全て理解している訳じゃないしな…もしかして…あるのかな~?」
「神が巫女に力の使い方を教わるとは…何か悲しいんだか、脱力するんだか…よく分からん~」
などと中身のない事を話しながら、夜の森を二人で歩く。
普段から自宅付近の森でも狩猟しているので、慣れてはいる筈だが…それでも生息している生物は違い、暖かくなった分…多種多様な生物がいるようだ。
街の方ではアマノとソフィアが二人で猫たちと、人間たちの仲立ちをしている筈だが…上手くやってるかな?
「完璧に向こうは放置しちゃったけど…まあチロとソフィアがいれば何とかなるだろう…」
「そうかな? 我が姉とあのおとぼけ猫でしょ? 何かとんでもないオチが待っていそうな気もする…」
やれやれと首を振りながら、遠くに放ったナイフを回収しに走り去っていき、数秒後には帰ってきた… おいおい…どれだけ頑張って急いで戻って来たのだ…!
恐らく往復で500Mは走ったであろうに…まったく息切れしてる様子もない…
「チロの事をおとぼけ猫と呼ぶのはお前だけだぞ? 何でそんな風に呼ぶんだ?」
そんな様子を、俺は欠伸をしながら、彼女が手にした今日の晩御飯を見つめる…
こいつは…カモかな? 色は暗くてよく見えないが、地を這うタイプではなく、風きり羽がある所から飛べるのだろう。自宅周りでは見かけない類だが、肉付きも良く食べ応えがありそうだ……
「う~ん…出会い頭に殺されそうになったり~自分を巫女だと気づいていなかった所とかかな?」
「そりゃ、お前が非常識な方法で狩りをしていたからじゃないか? まったく…」
後で聞いた話ではあるが、猫の知覚でも感じれない遠くからナイフを投擲して、小鳥を射抜いてばかりか、血の滴るナイフを掲げながら猫たちを悪ノリで威圧したとか…
「あの時も、森に入ったのは神の力の持ち主を追いかけてる最中だったが…急に飛び出して行ったよな」
「少しだけ、向こうで力の発動を感じたんだ。力を上手く制御出来ずに小鳥一匹満足に狩れないでいるみたいだったから~手伝っただけだよ」
今から三年も前の話だが、あの時の事はよく覚えている。
普段通り荷物を届けて次の街にいこうとしたら、港には誰もおらず積み荷の受け取り人もいない。仕方なく砂で目をやられるのを緩和する為の目薬を買いに行ったら、受付には誰もいないわ、待合室に患者もおらん。途方に暮れていたら向こうから神の力を感じる。
「それでスタッフルームにお邪魔したら、看護師が一人倒れていた…んだよな…」
「倒れているだけで、特に病に侵されてる訳でもなかった…んだよな~」
「無自覚に神の力を振り撒いていたからね~あの頃は…プププププ…」
口元に手を当てて笑いをこらえる事なく肩を揺らしている。普段から感情を表に出す子じゃないが、チロに関しては表情豊かになる事が多い気がする。
だがそんな状態もすぐに元の無表情に戻り、獲物を一瞥すると、首を掻き切り、体が硬直する前に血抜きを始める。
「お前…チロの事昔から好きだったものな~ふふふ…」
「なっ…なにを言ってるのかな~? アタシには分からないな…」
「まあ…どっちでもイイか…」
普段何かに愛着を持とうとしないヨミがあれほど関心を持てるのであれば、それは歓迎すべき事なんだろうな~きっと…
「さてさて…昔は昔として問題は今だよな~蜘蛛どこにいるんだろ…?」
「多分…糸を作るタイプなら上の方に巣をつくる筈。あとあまり強い風が吹く所は巣作り自体が難しいだろうから…そこそこの風が吹いていて、獲物となる虫の通り道が理想」
そんな風にぼやいていると、ヨミは何かが見えるのか風向きを確認しながら、獣道を一歩一歩と歩いていき、すぐに闇の向こうにいる蜘蛛を見つけると、軽くジャンプをして、どこから取り出したのか、小さな網で捕まえて、籠に入れていく…
「手馴れているな…相変わらず。どうにも蜘蛛の捕獲はまだ苦手だ…」
「小さい頃からやってるからね~中には巣を作らなかったり、南には毒を持った蜘蛛もいるみたいだけど…」
昔から天文学者は蜘蛛の一匹でも見つけれないとダメだとか言われているが、この子の場合は、単に遊びとしてこういう技能を身に着けていたのだろう。
猫並みの目を細めながら、つぶさに辺りを観察し、枯れた木の葉の隙間を縫うように足を運び、時々ジャンプしては籠の中身を増やしていく。
「……この前はほとんど顔を合わせませんでしたが…個性的な巫女ですね~彼女は…」
「いや…普通に一緒に和気あいあいと服を買いに行ってた気がするぞ? まあ~出会った頃からずっとああだからな~マイペースな奴だが、あれで結構気配りする所もあって、凄い奴でもあるんだぞ………」
「そうですか~♪ ふふふ…信頼なさっているんですね」
「…………」
「…………驚かないのですね?」
遠くで蜘蛛を刈り取っているヨミを見ていると、隣から聞き慣れた声が聞こえてくる。
まあ…そこにいる事はずっと気づいていたんだけど、驚いてあげるのもパターンでつまらないかなと、平気そうな顔でやり過ごしていたのだが、不機嫌そうな雰囲気を感じ、慌てて振り向くと、そこには前と同じようにラフな小袖姿になったナルカミがいた…
「どうして、この街にいるんだ?」
「依頼を受けましてね。リンさんからこれを報酬としてね…太陽神を見守りサポートして欲しいと…」
あいつそんな事を話していたのか…結局ナルカミの新しい衣装も予算が足りずに、後で働いて稼ぐと言っておいたが…まさか、その対象がナルカミだとは…てっきり俺が働くと思っていただけに…ばつが悪く視線をずらし、頬を軽く掻いていると…クスクスと笑い声がきこえる…
「いやだわ~お兄様ったら~♪ お兄様に資産や生産力がなくても、わたくしはちっとも気にしませんわよ~♪」
「いや…これでも、前よりは頑張って稼ごうとは思うんだよ…思うんだけど…今の兄を好きになって貰うのも、それはそれで情けない感じが…って…この声はヨミだろ!!」
ヨミとは思えない甘い声色に、思わずツッコミよりもボケに付き合う方を選び、しばし付き合ってしまった…我ながら疲れているのかな? はあ~~
隣にはいつ戻ってきたのか…ヨミがわざとらしく首を可愛く首を傾げながら、足を屈みこちらを上目遣いしている。
「ふふふ…ボケからツッコミまで長いよ~♪」
「そもそも…わたしくがそのような言葉を口にする訳がありません…」
そうだろうか? ああ…そうだった気もするが何分、久しぶりの登場でかなり色々と忘れてしまっている…ダメだな~これじゃ…もっと兄としてしっかりしないとな…!
「話題を戻すが…確か前の港でアマノたちと会っていたらしいが…ここに来ている事とか何も話さなかったのか?」
「ええ…あの子には私はあくまでライバルとして、認識して貰った方が都合は良いでしょ? 彼女の為にもね……」
「…………」
「それに別口で今回の依頼を追いかけた方が良いと思ったもので…ね」
「別口で?」
先程まで笑ったり、すねた真似をしていたのだが、神妙な顔つきをし、こちらの疑問に頷きながら言葉を続ける。
「そもそもが猫たちと人間たちの間にあった溝というか…確執が生まれた事件についてはリンリンさんから聞きました。だがそこで一つ疑問があるのです」
「疑問だって?」
「はい…そもそもがあの病の大本や、蔓延るのに猫たちが関っていたなど、いつ? 誰が? どのような仕方で? 言ひ閉じんだのか…それが誰かは闇に紛れたままでは?」
「ああ…そこに気付いたのか…相変わらず鋭いな…」
当時は皆が混乱状況で、満足な調査時間も、そもそもが原因特定する為の技能に乏しいこの街で、早期に見つかり過ぎている点。北からやってきた病に似ていた…という先入観が悲劇を生んだのでは……
「などと、考えているんじゃないか?」
「はい…違えますか?」
「そうだな…半分以上は当たっているな~それだけでも無いのだが…」
当時の俺はとにかく、金稼ぎに躍起になっていた頃だったからな~、それに他国の街で派手に動いては、その国の神の面子や想いを潰してしまうと、活動を自粛してた頃だったのだ。
だが今は、それが正しかったかどうか…今でも悩んでしまう。
「言葉を重ねる事が…正論を吐き続ける事だけが…正しい訳じゃないと知っているからな」
「そうですね~兄さまは…それを言われたら潰れてしまいますよね?」
茶目っ気たっぷりに、軽くウィンクしながら微笑みかけてくる。その姿に少しドキドキしながら、これはもしかして…?
「グ八ッ…!! それを言われると兄はきついぞ?」
「ふふふふふっ…」
うん……ときめきではなく、ただの緊張だな…(-_-;)
まったくもって、ナルカミには勝てる気がしない…が、それも己の不徳の致す所…
冗談のように大袈裟にドキっとした仕草をし、胸を押えながら蹲る。
「二人して、何を……コントでもしてるの?」
「兄妹の心温まる交流だと言ってくれ…」
「とてもそんな風には見えなかったけど~~?」
「ふふふふ……♪」
穏やかに笑う妹に、じ~っとこちらを見つめてくる同居人。二人の視線に耐え切れずに、顔を逸らしていると…同居人が口を軽く開く。
「はしゃいでいるね~コチ…」
「………ノーコメントだ…ゴホンッ…! 話が大分逸れてしまったな…」
わざとらしく咳をし、とりあえず話を元に戻そうと二人に伝えると、二人して目を合わせ、可愛く笑い合うと、黙って頷いてくれた…
「えっと~だな…その…」
とはいえ…どこから説明すれば良いのだろうか…悩んで口ごもると…ナルカミが助け舟を出すように、口を開いてくれた。
「一つ伺いたい事があります…」
「んっ…何だ?」
「どうして…あの仕事をアマノさんに任せたのですか? 何か狙いでもあったのですか?」
「ああ……それか……簡単な話さ……あいつが猫たちと似たような境遇にいたからさ…だからこそ、問題の本質に気付くのも早い筈だ…」
次の話はさくっと書いていきたいと思います!!




