病院は戦場だった…のかな?
太「皆の者は猫が好きか!!」
火「愚問ね! 嫌いな人なんていないわ!」
巫「まあ…四本足の生き物なら何でも食べる国もありますが…ね」
伝「基本的に猫派はインドア派、犬はアウトドア派が好きな気がするわね~」
太「これ読んでる人はどっちなんだろう? って今更気になりました」
伝「まあどっちを好きでもイイんじゃない? 互いに楽しめればね」
その日も路地裏は天気が良く、日向ぼっこする黒い毛玉と、白い毛玉は並んであくびをしていた。
何を話す訳でもなく、ただ傍でまったりと他の猫たちを観察する時間。
猫は普段何を喋るという習性がない…のも原因の一つだが、それよりも互いにお喋りな性格でもなかったのだろう。
「最近足の怪我はどう?」
「う~ん、まあまあかな~」
ゆっくりと互いに尻尾を揺らし、ゴミから大物の食い物が出て来て喜んでいる奴らの嬉しそうな声。
黒猫は一つ欠伸をし、怪我をした場所を隠すように丸くなり始めた。
「毛艶もよくなってるし、栄養状態も良くなってるみたいね」
「誰かさんのおかげでな~ふああ~~~」
大きな口を広げ、ゆっくりと瞼を閉じて寝始める黒猫。
笑みを浮かべてその様子を眺めながら、陽の光に眼を細める。
「最近寝る時間が多いわね」
「まあな…話し相手がどうにも素直にならない。正直者でなくてな。疲れるんだよ~」
「……はははは…平和ね~」
「…………やれやれ」
今日はまだ人間の姿を見ていないが、何か彼らにも用事でもあったのだろうか…
警戒は緩める事はないが、眠気を誘ってしまうのはどうしようもない…
「やばいわね…私も何か眠くなって来たわ…ふわ~~~」
「最近、あんたは疲れてる事が多いな…大丈夫なのか?」
「大丈夫よ…ただ最近疲れが抜けにくくてね…」
そう…ただそれだけの事なのに…寝ぼけていた顔が締まり、何やら深刻そうな表情でこちらを見つめ始める…
「まさか、エサが不足しているんじゃないか? 俺に渡すために…」
「………さあね…最近、暑くて眠いだけよ~」
とりあえず、カラスに返り討ちに遭って怪我をしていないだけマシな状況ではある。
―――と、心の中でぼやきながら黒猫の視線を涼しい顔で流しながら、猫たちが散り散りになったらまた森に行って、スズメとか狩りに行こうかな…
「あんたがいくら優秀な狩人でも、限界はあるぞ? 俺の事は忘れて今は自分の事を第一に考えておけ?」
「私はいつだってマイペースにやってるだけよ。何も気にしなくていいわ…」
さてさて…本当に今日はどういう訳か、彼の心配する声が大きい…そんなにこっちを心配するぐらいなら、まずは自分の怪我を何とかしろと言いたい…
「それじゃ…そろそろ行くわ…また明日ね?」
「ああ……またな…」
――――
――――――――
病院に辿り着くとそこは、夜戦病院のようだった…
「くそ~~、あいつら何であんなに素直に懐いてくれないんだ!」
「野良猫はかなり不衛生だから、浅い傷でもちゃんと消毒しないと膿んでいくぞ」
「分かってるよ…だが医者は消毒液がもうないって言ってるんだ」
「まずいな…仕方ないから水で洗って、さっさと作業を終わらせないと!」
まあその戦闘相手は猫なのだが…それが危機感タップリなのだが、微妙に笑えてしまうのは何でだろうか…
――――笑えないのよ…野良猫相手に人間が戦うなんて実際、人間には無理
「そうなんですか? って…脳内思考を読まれた!」
――――太陽神とは言ってもまだまだね…まあ猫は犬よりも弱いけど、逃げる事に関しては異常だからね…隙を突かれない限りは捕まえられない。
「そうなんですか?」
――――ええ、それよりも向こうのベッドが空いてるから、怪我人を寝かせて、私が診断するわ…
「猫が人間の診断をするなんて…シュールですね~」
――――そうね…ソフィア、もう一人の子は隣に寝かせて?
「分かったわ」
もう一人の小さい子も、ベッドに寝かせると、白い猫はそれも真っ白のシーツの上を音もなく歩き、二人の匂い、体温、それに息遣いなどをじっくりと診察していく…
「この怪我人たち…まだ起きませんね? 思えばまだ、名前も分かりませんし…」
「私は子供を抱えて歩かされて、病院に棺桶運んだのに騒がれないは…疲れた…」
「やっぱり、棺桶をこれ見よがしにさっき病院に運んだのは、わざとですか!!
いい加減、起きてイイ時間なのに起きないのも、二人で遊んでましたね!?」
その言葉を待っていたかのように、棺桶の蓋が開き、中から見慣れたソフィアさんの妹のヨミさんが欠伸をしながら背伸びをしながら出てきた。
「皆~おはよう~」
「完全に皆スルーして、猫話で埋まるんだもん…きっと読者も言われるまで気づいてないわよ…棺桶を病院に入れる不気味さに…」
「そりゃ、あまりに自然にそこにあるから、皆忘れてますよ!」
「このボケの為に、前回も一回だけ棺桶の描写を挟んだのよ~」
「凄いのか凄くないのか判らない!」
どんなボケを今まで考えていたんだ…と戦慄していると、何やら強烈な視線をベッドから感じ始める…
――――話は終わった? 脱線ばかりで全然話が進まないんだけど?
「はい…すみません…」
「はっはっはっはっは~~」
ひたすら頭を下げるボクとは対照的に、ソフィアさんはとても楽しそうだった…
「…ぱっと見、外傷はないが…頭を強く打ってるとみたが…診断結果はなんなんだ?」
それはボクも思った事だったが、ヨミさんは話が分からないと、いたずらで自分の棺桶に子供を入れて手を組ませる遊びを初めて、ソフィアさんが後ろからツッコミを入れてる。
――――脳挫傷…目を覚まさないのもこれが原因かな?
「どういう意味ですか?」
――――つまり…打ち所が悪くて脳が死んでる。死んではいないけど~目を覚まさない限りは、同じようなものかな?
「脳死という奴か…」
脳死…単語の意味は理解できるが、あまりにもあっさりと告げた内容に、その人の事を何も知らないのに、かなりショックを受けている自分がいた。
「それって治るんですか!?」
――――普通なら治らないわね。
「そんな…」
「風の道を使う奴らではさほど珍しい事でもないが…治せるんだろ? 神であるお前なら」
――――気は乗らないけどね~
「治療行為が乗り気ではないんですか?」
――――色々とあるのよ。色々とね…まあいいわ…相手は人間だしね…
「うん?」
それは、普段は威張り散らしているのに、何やら苦労性のような疲れたため息を感じる声だった。
――――30分あれば治療が終わるので、外で待ってて…あとヨミ、悪戯してないで、ベッドに寝かせない
「怪我人を運ぶ必要があって忘れてましたが、事故った船の中の荷物って、結局なんだったんですか?」
治療するから廊下に出てくれと言われ、怪我人二人と猫を置いてボクたちは退出した。
ボクはやっと手持ち無沙汰になり、ふと気になった事を尋ねた。
横転した船内に入って怪我人を探索したコチさんなら知っているだろうと、隣に視線を向けると…
「ああ…投擲網と、マタタビだったな…あとは猫を遊ばせるグッズがいくつか…」
その内容を伺うとやはり、ここは猫の街なのかなと思い始める…
「この町は猫が多いので有名だからな~。ネコ関係のグッズが輸入されるのはさほど不思議でもないが…問題は…」
問題というか…凄く違和感のあるモノが一緒に運ばれているのが分かる…汗
「……網は多分、猫を捕獲する為でしょ~。マタタビで釣りあげて、網で一網打尽する…難しい事でもない」
ソフィアさんの軽い口調とは裏腹の何ともヒドイ話…確かに逃げる猫を捕まえるならそれしか方法がない…
「…そういえば、依頼内容も猫が関係していましたね。結局の所…争ってる理由って何なんですかね…?」
「さあね…何で人間が猫を捕まえようとしているのか…その謎も依頼猫が話してくれるでしょ」
「今は待つしかないか…」
普通なら脳死の人間を治すなんて無理難題だとは思ったが、神の力を持つ存在なら可能なのではないかと…そう思ってしまうぐらい神というのは…
病院に棺桶が運ばれる時、人は何を連想しますかね~ 汗




