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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第二章 白妙(しろたへ)のネコは気位が高い
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三柱の神は、周りをよく見ない

雷「前にわたくしが述べた、もみじの件について解説したいと思います」

太「読んだ人で、あれの意味が理解できた人って多分、一人もいないだろうからね」

雷「日本の古来では、神への捧げものはお賽銭ではなく、ぬさと呼ばれていました。ぬさとは当時では貴重な紙や絹を細かく切ったモノなのですが、もみじはその代用品で使われる事がありました」

太「もみじが代用品ですか。それはわびしいですね」

雷「用意できぬわけが、敢え無いモノなれば、それでも良いのですが、神の御心を試すためにもみじを奉納するバカもいたのですよ」

太「ああ~、そんなものを貰って、果たして神様が怒るかどうかと?」

雷「困ったものです。放置すべきか天誅を下すべきか、悩んでしまいます」

太「やっちゃえば、良いじゃないですか? 今度、あらすじの旅人みたいに二人でやりましょ?」

雷「そうですね。それも良いかも知れませんね。その折には、お願いします」

錬「二人とも物騒な事を考えているな」

「ナルカミさんって、路銀はどうやって稼いでいたんですか?」

ずっとあのまま境内で喋っていると、待ち合わせの時間に遅れてしまうと云うので、速足で船が置いてある場所まで行く事になった。

「海の水を電気分解し、塩を取っておりました。塩は内陸では高き値が付くので」

「おお~~、雷様って本当に便利な能力を持っていますよね」

その道すがら、改めてお金儲け――もとい、どうやってここまで旅してきたのか尋ねた。

その話を聞くたびに、自分の能力の汎用性の低さを噛みしめる事となる。

「そうでしょうか? 八方すべからくに事を収めれる神はありません。雷には雷の、天日あまつひの神にもまた益体があります」

「そうでしょうか~?」

相変わらず、微妙に彼女のいう事が分からないけど、慰められているなっていうのは、何となく分かる。

船が置いてある場所はどうしても、町の北側の端に位置するのだが、コチさんが買い物に行かれた商店街?はその近くに位置し、僕たちがいた社町はその向こう側。

立地の状態を見ると、完全に船乗りたちを商売相手に選んでいるのが良く分かる。

後で聞いた話だけど、風の道の脇ある町は、大体こんな感じらしい。いわゆる、陸の港町と呼ばれているとみたいだ。


「あれっ? 誰かが騒いでいますね。コチさんたちでしょうか?」

船の置き場に着くと、そこでは数隻の船と、騒がしい集団が一ついた。

その顔ぶれは、どう考えてもボクの身内だよ。恥ずかしい~~って、一人だけ知らない人がいるね。誰だろう?

「彼女は、マルティさんですね。わたくしを此処まで運んでくださった方ですよ。いささか変わった方なのですが……ね」

普段のすまし顔から、やや困ったような顔をするナルカミさん。

「何ですか、その歯切れの悪い言い方は?」

珍しいモノを観察するような気分で、ボクは尋ねた。ただ、返答の前に答えは分かった。

こちらを発見したのだろう。失礼にもこちらを指さしながら、彼女はこんな事を叫んだ。

「あなたを今から、スズメさんと呼ばせて頂きます」

「……はい?」

後ろを振り返るが、そちらには誰もいない。彼女はもしかして、見えないモノが見える口だったりするのかな?



時間はやや下り、ボクたち四人とナルカミさんとマルティ?さんと、合わせて六人で炊事場の傍にある大き目なテーブルを囲んでいた。

一体、どんな嗅覚をしているのか、朝食が出来るといつの間にか寝ていたヨミさんも合流している。何でも、これを食べたらまた寝るんだってさ。

余談だけど、テーブルとイスの文化はナルカミさんの国には存在せず、コチさんと違ってナルカミさんは未だ慣れていないようだ。

「どうして、戸惑っているんですか?」

「いえ、このテーブルと云うモノ。人をものぐさにさせますね」

そう言って、彼女の視線は真っすぐに自分の兄へと向けられていた。そこには呆れと諦観の気持ちが込められているような気がした。

「わたくしの国では床の上へ一人ずつ膝ほどの高さの膳を並べるので、椀を持たねば食事が出来ません」

「それは、凄く面倒臭そうですね」

「しかし、このテーブルと云うモノは椀を持たずとも、物を口へと運べる。そのひと手間を省ける様は、わたくしには全く美しく見えないのです」

「ふ~~ん」

云われてもう一度、コチさんとナルカミさんを見比べる。対照的にすると分けるけど、確かに椀を持った方が猫背にならず、美しく見えるんだよね。

「コチさんって、本当にナルカミさんのお兄さんなんですか?」

「…………それにしてもマルティ、どうして、スズメなんだ?」

あっ、あからさまに話を反らした。まあ、ボク自信そんなに深く突っ込みたい話じゃないから別に良いけどね。それに、スズメの謎も気になるしね。

「それが、彼女からは何か将来的には、頑張るんだけど、ぬか喜びしてがっくり来るような、そんな幸薄そうな雰囲気を醸し出していたので」

「おい、こら!」

彼女が何を言っているのか、全く理解できない。しかし、コチさんには何を言っているのか理解できるようだ。深く、深~くため息を吐く。

「まあ、実害がある訳でもなし、早く飯を食べよう」

「ええ~、それで済ませちゃうんですか?」

ボクの抗議は全く聞き入れられず、皆は箸やスプーンを動かし始めた。



朝食の内容は、野菜が沢山入ったお粥だった。

何故これになったのか訊いたら、疲れている時にはお粥が一番である事と、旅先では食器が限られるので、一皿で済むような料理が適しているらしい。

「梅干しはありませんか?」

「梅干しかい? たまたま切らしているけど、好きなのかな?」

「はい、わたくしの国では料理の味付けは塩と梅干しで決めていたので」

「ああ、そういえば昔はコチの奴も言ってたっけ? 梅干しを入れないと味が締まらないとか」

交わされる言葉は、異文化なコミュニケーションもあれば―――

「それにしても、おすましいさんが――」

「おすましさん!?」

――――訳の分からない言葉が飛び出す事もあった。

おすましさん? それは一体、誰の事だって……一人しかいませんよね。

基本的には優しい人だけど、起こったら雷を落とす怖い人の事ですよね、はい。

思考とセリフが挟まっちゃったけど、続きの言葉をどうぞ―――


「―――風の帝王さんの妹ですか―――似ていると云えば、似ていますよね」

「そうですか?」

それは果たして、彼女にとって嬉しいのであろうか? ボクだったら、ちょっと遠慮したい言葉だよね。

当の本人はどう思うっているんだろう? 表情を伺うが、いつものすまし顔だった。

「どうしました?」

「いいえ、別に、何でも」

いつものすまし顔だけど、何とも言えない感情が見える気がする。気のせいだろうか?



―――はっきり言って、言い知れぬ雰囲気だよ。これは少し話題をそらした方が良いかな?

「え~っと、そういえば、コチさんは仕事でクモを探すようですが、どうして南へ?」

云ってみて、これは今さらな疑問だなと思った。だけど、気づいたら説明するのを忘れていたんだよね。不思議な話だ。

当たり前だけど、お粥はあったかい内に食べた方が美味しい。

「ああ、お前は知らないのか。北の虫は冬の間、冬眠をしていて外に出てこん。南へ往けば、年中様々な虫がいるからな」

「へえ、なるほどね」

しかし、悲しいかな、話が長くちょっとて冷ややかになっている。


そんな中でも、ソフィアさんたち姉妹は要領よく普通に食事を進めていた。

「大体、何故、ただの虫にお金を払って取らせると思う?」

「ああ、要は季節のめぐりが悪かったんですね」

簡単な話、長旅は慣れていない人には拷問に等しいもんね。加えて、森へ分け入って虫捕りをするのも疲れる話だよね。

「金のない俺にとっては、有り難い話だがな」

それは喜ぶべき事なんだろうけど、その仕事のせいでボクはソフィアさんと二人っきりで、猫と人の仲を取り持つ事となるのは、やっぱりちょっと重荷です。


「―――蜘蛛をお探しなのですか? 陰陽寮の方にでも頼まれたのですか?」

そんな風に未来への不安を案じていると、いきなり聞き慣れない言葉を発した。

「おんみょうりょう?」

「ああ、気にするな。俺たちの国で天文や占いをする人が勤めている部署だ。風の噂では呪術を用いてお祓いのような事までやっているらしいが」

呪術? 呪術って何だろう? 神の力とは全く違うモノなのかな?

「ああ、それは亀澤さんですね」

「かめさわ――ですか」

海外の人の名前って、聞き慣れないからどうとも言えないけど、ちょっと面白い名前の人な気がする。


「知り合いか?」

「ええ、この大陸へ赴く前に些か頓着させる事があり。その折で、よしみを結びました」

「へえ~~」

大した話じゃないけど、話に加わって来ないソフィアさんだけでなく、マルティさんまで食事が終わってるよ。


気が付けば、食事が終わっていないのは、神様三人組だけだった。

「ボクたちもそろそろ食べ終わりましょう。三人とも待っていますよ」

「そうだな」

「そうですね」

人間たち三人の視線がちょっと痛いです。作ったソフィアさんは、面白い気分ではないだろうな~。口にはしないけど、口にしない分、何故か怖い感じがする。

・須く(すべからく) 当然、そうすべき事として

益体やくたい 役に立つ事  『~もない』の場合、役に立たないと意味する。

・糠喜び(ぬかよろこび) 糠とは米糠の事ですね。米が脱穀され、その抜け殻を見て米があると喜ぶスズメの様子が元ネタ。

・頓着(とんぢゃく 又は とんちゃく) 気にかける事 心配事 

・敢え無い いきづまって、どうしようもない様

・塩と梅について 昔の言葉で『物事の程度』を表す言葉で塩梅あんばいと云うモノがあります。これは昔の日本の味付けがこの二つしか無かった事が由来。昔は醤油や酢、みりんなどは存在せず、またあった時代でも高級品でした。梅には酸味があり、お酢などと同じような働きをします。


エンジンが掛からなかったら、開き直って新しい参考書を買って読みふけっていたら、随分と間が開きましたね。

最近の悩みは、古語と同じかなふりをして、変換ミスする事が多くなりました。

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