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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第二章 白妙(しろたへ)のネコは気位が高い
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社ともみじとお賽銭と

太「今回は、前々回の続きです」

雷「『人以外の生き物に言葉は存在するか?』そう、問いかけられれば是と答えましょう」

太「ボクがビックリしたのは、奈良公園の鹿たちが売り場のせんべいは食べないのに、観光客のせんべいは欲しがるんですよね。あれって、親から子へと決まり事を教えているんでしょうね」

錬「普通に考えて、動物たちも人間たちと同じく言葉を持っているんでしょうね。種類は多くないかも知れないけど。その代わり、彼には文字は無い」

雷「そうです。そして、それは古の人々にも言える事。故に、文字ありきの言葉ではなく、言葉ありきの文字である。これを念頭に置きましょう」

太「つまり、言葉が生まれてから文字が生まれた。言い換えれば、言葉を記す為に文字が生まれた」

雷「日本では、漢字が中国から伝来し、漢字のくずし文字からひらがなやカタカナが生まれた。それはつまり、日本の文字は純粋に、日本の言葉の為に生まれた言葉ではないと云う事」

錬「最初から文字を日本だけで作っていれば、中間音と呼ばれる存在は生まれなかったかも知れない――と、云うのかい?」

雷「憶測ですがね。確証はありません。ひらがなやカタカナが生まれたのは、漢文だけでは日本語を表すには不都合が大きかったからですし、それでさえ、やはり不完全の感を否めません」

太「はあ~、言葉というのは面倒なものですね」

神同士で、お金を稼ぐ方法――もとい、社の存在意義についてナルカミさんと熱く語り合う。

―――いや、ボクだけが熱く語っているの間違いか………

「お社はとくに、大きく立派である必要はありません。ともすれば、犬小屋でも良いのです。あれは神へ願いをかける場であり、神を幾度となく思ひ起こす場。しかるに、賽銭箱は是非という事でもありません」

「ええ~~~~~!? それは困りますっ!」

ボクの悲痛な叫びが、境内に響き渡る。それを冷静に――というか、やや呆れた様子でこちらを

見るナルカミさん。


彼女はそんなボクは放っておいて、境内に置いてある賽銭箱にそっと指で撫でている。

「この染みを見るに、お兄様は廃材を用いて賽銭箱を作りましたね。あなたはそもそも、人が何故なにゆえお社へ参り、お賽銭を落とすのか、案じた事がありますか?」

だって、ナルカミさんはさっきから淡々とすまし顔で喋るだけなんだもん。

そこには感情が見えない。うまく隠しているだけなんだろうけど……

「………習慣ですか?」

案じるも何も、今まで一度も考えた事なんてありません。ただ漠然と、そういう行事があると思っているだけでした。


「それも、間違いではありませんね。しかし、核心ではありません。身も蓋もない述べ方ですが、一つはご利益の有無です」

「ご利益? そんなものあるんですか?」

神様がそれを言っちゃおしまいです。などと思いながらも、ボクの家族もお参りをして願った事が毎回必ず叶えられていないのを何度も見ている。

そりゃ、神の身体は一つしかないんだから、何千、何万の人の願いを叶えるなんて無理です。世の中の皆さん、無茶を言っちゃいけません。


「神は人にとって便利屋ではなく、個々の願いを叶える事が出来るモノでもありませんから。お賽銭を上げるのは『私たちはまだあなた様の事を忘れてはいませんよ』と人から神への言霊のようなモノです」

「お銭=言霊?」

それは何とも、俗っぽい話だね。そんな俗っぽい話に興味が無くなったのか、ソフィアさんはとっくに何処かにいなくなっている。


「銭は是非を問わず、もみじに籠らぬ心あれど、心籠らぬ銭はなし」

「????」

「ふっふっふっふ、つまり身銭を切るのは痛いという事です。神はその痛みを感じ、人を思い越し、困った時には手を差し伸べる」

「はあ………」

色々と疑問が浮かぶけど、つまり銭はタダでくれるモノじゃないという事かな?


「それで、忘れなかった神は具体的に人に何をしてくれるんですか?」

「それは、神のもつ力によって変わりますね。わたくしの場合は雨乞いをされる事が多かったですね」

「ああ、それは確かに助かりますね」

日照りが続くのは農耕民族にとって大打撃だ。それをお社で願うだけで解決するなら、そりゃ個々の願いが届かなくても文句は来ないかも知れない。

「あとは折節おりふしに、愚かな者に天誅を下す事ですかね。あなたの場合は、逆に長雨が続く地の雲を散らす事が出来るのではありませんか?」


おおおっ! コチさんがあっさりと匙を投げた案件に、アドバイスを頂きました。

確かに長雨が続き、川が氾濫したら大変だ。それを願うだけで叶えてくれる神がいたら、ありがたくてお賽銭をがっぽがっぽとくれるに違いない。

「おお! それはありがたい気がする」

愚か者に天誅を! というくだりは完全に無視し、ボクは明るい未来に胸をトキめかせていた。

「問題はあなたが力を塩梅よくこなす事が出来ない事ですね」

「あっ……」


明るい未来に、暗い影が射した瞬間でした。

「そもそも、個々の願いを叶えたいのであれば、巫女や神主、祝に神の取次ぎを願う方が確実ですしね」

射した暗い影は、意外な言葉の登場に面食らってしまった。

「巫女や神主、祝? ―――ああっ、考えてみれば神は謎の存在ですけど、巫女や祝は正体を隠さないんですね」

神の心得の中では、巫女の話は全く出てこないので、考えの外だったけど巫女は普通、社の管理をするのが仕事で、初詣の時とか見た事があるよね。


「ええ、巫女は唯一神へ言霊を届ける事が出来る者。神の代理を司る者とも云う」

「『きざはしの力』ですか。あれって便利ですよね」

胸元で光る緑色の勾玉。ずっと仕舞っていたから、人肌で暖められており、今はもう違和感を覚えないぐらい馴染んでいる。

「神の中には巫女のフリをする神もいます。それで人々が自分をどう想っているか眺めるのを趣とする者もいます」

「それは……よいご趣味ですね~~~」

あまりのよさに、参考にしようかなと思うぐらいだ。何だか、とっても楽しそう。ボクも有名になったら―――って、それを現実にするにはどうすれば良いのか、相談を続けよう。


「結局、社は立派にすべきでなんですか? それとも、小さい方が良いんですか?」

「わたくしならば小さくしますね。大きなモノには建立にだけではなく、保つのにも金子が掛かります。高名こうみょうを得るまでは、賽銭を得る事もかたい事でしょう」

「要は、立派な社だけではお賽銭は貰えない。実績を上げろと」

そして、神の行いは巫女や神主が宣伝し、それを聞いた人々は神をありがたみ、お賽銭を落としてくれるのだ。


どうりで神の心得の中で、仲間を増やせと云う訳だ。仲間を集わなければ、神は有名になれない。

「しかと聴くに、アマノさんは金子を欲しているのですね。何故なにゆえに?」

あ~~それを訊いちゃうか。まあ、たしかに不思議だよね。自分でも、こんなにお金に汚くなるなんてビックリだよ。

「それは、ここだけの話なんですけど、やってみたい事があるんですよ」

「ほう」



――――

――――――――

「マルティは、これからどこへ向かうんだ?」

「はい、南西の方へ。お届けしている人がそちらへ用があるみたいなので」

「すると、俺たちと同じ方へ向かうのか」

船着き場へと戻ると、確かに船はもう一艘増えていた。

次のレースがちょうど年末に行われる。それにはやや早い今時分、船の数はまばらだった。


「風の帝王さんは、もちろん高速に乗るのですよね?」

「俺の体調が良かったらな。帆を張るのがソフィアだから、のんびりと一般道を走る」

ソフィアも腕が悪いわけではないが、高速に乘れるまでには至らない。

「ええ~~、一緒に行きましょうよ」

「無茶を言うな」

俺やヨミならばともかく、ソフィアに拘束を走らすのは無謀だ。

そう諭したのだが、それでもやや納得いかないように、それでも最後には頷いてくれた。


「そうですか……判りました……はあ~~~」

「…………」

「…………はあ~~~」

「…………なあ」

仕方なく、本当に仕方なくなのだが、俺は彼女と向こうで会う約束をしてしまった。

自分でも、後悔するんじゃないかなと思うんだけど、落ち込む女の子を見ると、どうしても手を差し伸べてしまう。


「男ってバカね。ま、あたしはマルティちゃんが可愛いから歓迎するけど」

「変態さんは消えてください」

「あっはっはっはっは! 変態とは、あたしの事かな~~?」

「――――っ!」

相変わらず、変態呼ばわりされても全く気にしないソフィア。むしろ、変態呼ばわりされる度に、変態な事をしようとする。そして、マルティは俺を盾にして、ソフィアの魔の手から逃れようと俺の周りをグルグルと追いかけっこをして、最後には船から飛んできたボールがソフィアの後頭部に直撃して終了する。



………一体、こいつらは何度同じ事を繰り返せば、気が済むんだろう?

呆れと、諦観の心持ちで眺めるような、ドタバタ劇が船着き場でさっきから行われていた。

「おい、何時までも遊んでいないで朝飯を作ってくれ」

風の道にある船着き場では、船乗りたちの為の施設が色々揃えられており、炊事場もその一つだ。

荷物はすでに船の傍らに置かれ、出番を待っていた。が、演出家が女の子を相手に遊んで、中々出演を果たせずにいた。


「そろそろ、マルティ遊びにも満足したし、料理を始めようか」

「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ………その言葉、もっと早く言って欲しかったです」

さんざん逃げ回って、肩で息をしているマルティに対して、ソフィアは元気いっぱいのようだ。

炊事場へ向かうその背中をしっかり確認してから、マルティは俺にもたれ掛かってきた。

「ふう…ふう…ふう……」

「やれやれ、アマノたちも遅いし、どこで油を売っているのやら」

おそらく、妹と一緒であろう、我が弟子。まだまだ神として暗中模索な様子。相談事をしてもらっているのだろうが、迷惑をかけていなければ良いが、


「そのアマノ?さんって、どんな人ですか?」

マルティが本名で相手を呼ぶのは、まだ出会ってないか、未定の場合だけだ。

アマノもきっと、あとでなにがしかのあだ名を付けられるのだろうな。

「どんな人かって、そうだな……突っ込みとボケを担当してくれる便利なキャラかな?」

「………?」

「すまん、冗談だ」

一体何の力が作用して、思ってもいない事が口から出たんだ? 少々、不気味な感じはするが、何故か恐怖は感じない。これなら、放っておいても大丈夫だろう。


「甘いもの好きで、いつも元気で、全力で、空回りをするのだが、それにもめげず頑張り続ける子かな。あと、子供らしいしたたかさも持っているが、それを認める強さもある」

云い方を変えると、面の皮が厚いとも云う。それをどう心の中で咀嚼したのか、彼女はしきりに頷き思案をしている。


「ふ~~ん、アリのような雰囲気の人ですね。あだ名はこれでキメでしょうか?」

何やら、彼女の頭の中で凄まじい結論に達しそうだ。それを回避すべく努力すべきだろうか?

俺も疲れているからか、考え方が可笑しくなっているのかも知れない。

「んっ? 向こうに見えるのは、アマノとナルカミか?」

そんな時だった。彼女たちが船着き場へ戻ってきたのは………

「決めました、あの人は―――」

・ともすれば~ 『とも』の意は『例えば~であっても』。『すれば』の意は『そうだとすると、そうすると』となる。合わせると、『例えば~であったとすると』という意となる。

是非ぜひ 是と非 善悪 道理を意味する。『是非、いらしてください』という使われ方の場合、『良いも悪いもなく、来てください』と訳する。『是非も及ばず』の場合『良いとか悪いとか言ってる次元じゃないよね』と訳しましょう。

折節おりふし 時々 場合場合

・塩梅 加減 ほどあい 体の具合 など

おもむき 趣味 心がそちらへと向いている

高名こうみょう 名高い 評判が高い


最近、エンジンのかかりが悪いというか、調子が悪いというか。

モミジのくだりを書こうと思ったら、疲れたので明日か明後日に書き足そう。

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