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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第二章 白妙(しろたへ)のネコは気位が高い
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それは立派なお社でした

雷「檜皮葺ひわだぶきとは日本独自の技法で、樹齢70歳を超えた檜の皮を、木の血管でもある維管束を傷つける事無く薄く剥ぎ、その皮を竹釘を用いて幾重にも重ねて屋根を形作る技法ですね」

太「あの~~~?」

雷「この技法は、維管束を傷つけない事により、剥いだ皮は二十年から三十年で再生され、環境にとても優しいと云われていますが、高度な技術を要求されるその担い手である職人や、また檜の減少により、とてもお高くなっております」

太「うわ~、突然、何を言い出すんだこの人は?」

雷「わたくしの好みとしましては、檜皮葺職人が効率化を求めて袋ではなく、口に含んだ竹釘を一本一本取り出して屋根に打ち据える様は、とても身振りよきものでした」 

太「色々突っ込みたいけど、本編を見ればみんな理解するか」

雷「次回は、幾度か出てきた中間音について述べたいと思います」

太「またね~~~」


社といえば、人はどんな形を連想するのだろうか。社と一言に述べても、その形にはお国柄がとても出てくるようだ。

煉瓦で造った丸いドームのような形をした建物。石のブロックを積み重ねた三角形の屋根を幾つか連ねた、壁一面に何とも豪華な装飾を隙間なく施された建物。

個々の美意識をとやかく言うつもりは無いが、ボクがその建物を――コチさんの社を見た時に感じた感想は―――


「すごくシンプルですけど、そのシンプルさゆえの究極の美を感じますね」

「これはコチの造った社ね。彼曰く、これには足す事も引く事も出来ない究極の美がある。何て言っていたわね」

究極の美って、そこまで言わしめるモノがこれには込められている。―――のだろうか?

「この屋根って見た事がない形ですね」

「う~ん、あたしもここ以外では見た事はないから知っているのは名前だけだけど、檜皮葺ひわだぶきと彼は呼んでいたわね」


「ひわだぶき?」

「詳しくは今回の副音声で解説するだろうから、話を先に進めましょう」

「????」

時々なんだけど、この人の言っている意味が理解できない。

「ボクの感覚では、これらの建物は社と云うよりも、神殿と呼んでいる人が多いんじゃないですか?」

「そうだね。社というのは彼の国の呼び名だからね。どちらを呼ぶのかは、個々の趣味でお願いしますね」

また人差し指を立てながら、可愛らしいウィンクを一つ。

こういった仕草って、可愛らしかったら何歳になっても似合うよねと思った。

――――たとえ、中身はどうしょうもない変態だったとしてもだ。

「お願いするって―――まあ、社で統一しましょう。その方が発音しやすいですし」


それにしても、社町には初めて訪れたけど、様式の異なる多種多様な建物が並ぶさまは壮観だよね。観光地になったとしても不思議ではないぐらい面白い。

「それなのに、人はあまりいませんよね。どうしてでしょう?」

「――――そうね。それぞれの国に一つずつこういった区画を設けているから、新鮮味があまりないのが原因なのか、初詣に年に一回行けばもう満足になってしまうのが原因なのか、難しい問題よね」


社町に入ってからしばらく経つけど、すれ違った人の数は片手で数えるぐらい。

冬の肌寒さと相まって、何とも物悲しい感じがする。

「え~っと、それにしても、あのお金に困っているコチさんがどうやってこんな立派な社を建てたんですか?」

コチさんの社には、新鮮で圧巻されるモノを感じさせつつ、その立派さに大きな戸惑いをボクに感じさせた。


「だって、あのコチさんですよ。日頃から『お金がない。金が欲しい』とぼやいているあの、あの貧乏なコチさんがどうやってこんな建物を建てたんですか?」

「あなた、いくら信じられないからって、そんな剣幕で人の襟元を掴んで詰め寄って問いただす事でもないでしょうに……」

「だって、だって~~~~」

あと一月弱で、立派な社を建てなければいけない身としては、貧乏でもなんとかなる方法があるのなら、知りたいと思うのは当然じゃないですか。

「はいはい、答えを教えてあげるから一緒に境内に入りましょ」

「はいっ!」

「無駄に元気で快活な声ね………はあぁ、まあいっか」



社と一言で述べても、その規模は様々だ。社町に集まっている建物は、どれも大きなモノではなく、こじんまりとしたモノが殆どだ。

境内には鳥居と呼ばれる門があり、敷地には一面、白い石が敷き詰められてある。

石を踏みしめるその感触は、何とも上体が安定しなく、だけど面白く、足つぼマッサージをしている気分にさせる。


「気になったんですけど、この社の隣にある空き地は何ですか?」

「ああ、それはこの前死んだ神の社が建っていた場所ね。社は神が死んだら分解して、その材料をその神の思い入れのある場所に奉納するのがしきたりなの」

「へえ、つまりはあの空き地にボクの社を建てるんですね」

「そうね。多分、そうなる筈よ。ここは神の敷地なので土地代は掛からないから、ありがたみは無く誰も寄らないだろうけど、今からそこに賽銭箱だけ置くのも可能よ。」

おおっ、それはイイ事を聞いた。お金が貯まらなかったら、最悪その手で行こう。


「何なんだろうな、この不思議な感覚は」

境内の奥、社の前に来た時、ボクには言い知れぬ違和感があった。

その建物は、とても立派なモノだった。しかし、そこに歴史的な厚みを感じない。つまり、真新しさが目立っている。それは、この建物はコチさんが神になってから建てられたモノだから。

ただ、それを抜きにしても、これには不思議な厚みのなさを感じるのだ。

「う~~~ん」

「どうしたの、首なんか捻っちゃって?」

何かを含んだような笑みを浮かべながら、こちらを見ているソフィアさん。

その笑みに一体何が含まれているのか、考察しようにも情報が少なすぎる。


「いや、情報ならもう目の前にあるのか……」

もう一度前を向くと、目の前には賽銭箱がある。その色合いは、真新しい社と違い、薄暗く彩られていた。

「おかしいな。この賽銭箱だけ妙な厚みを感じる。―――というか、立体感を感じるんだよね」

逆に言えば、社には立体感を感じないのだ。それが、違和感の正体なのだ。

ゆっくりとした足取りで、ボクは恐る恐る社へと近づき、その手に触れた初めて分かった。

「これはっ!――――――――書き割り――というか絵じゃないですか~~~?」

「あっはっはっはっは~~~~っ!」



「正確に云えば、だまし絵の書き割りだね。中々にユニークでしょ?」

「ユニークと云うよりも、ガックリです」

立派な建物だと思ったら、実は舞台用の装置でした―――何て、誰が想像しようか?

「ちなみに、雨風に痛まないように防水加工をしているし、屋根もあるから、触らなければ立派に見えなくもないよ」

それは至れり尽くせりな加工で、涙が止まらない――じゃなくてさっ!

「それはそうかも―――というか、確かにそう感じました。立派に感じましたけど………」

考えろ、考えるんだ。ボクの予感ではこの違和感を放置すると本末転倒な結末を迎える気がする。


「中身はスカスカだけど、どうせ一般人は中に入る機会は無いから、これでイイやとコチは言ってたんだよね。お金も安く済むし」

「それは確かに魅力―――じゃなくてさ、ああもう、何て言ったらイイんだろう?」

問題はそうじゃないと思うんだ。もっと、大事な問題があるような気がする。

どれだけ頭を悩ませても、答えが出ない。一体、どこに矛盾点があるんだ?

「まあ、唯一の欠点は有難みが無さ過ぎて、お賽銭の収集が芳しくない事かね」

「それだ~~~~っ!」

ソファアさんの言葉。それが我が意を得た瞬間だった。



清光すがしひかり射す境内で、如何なる故あって騒ぐのですか?」

ボクが思わず大きな声で叫んだ時だった。後ろから、どこかで聞いた事があるような声が届いたのは……

「あらっ? お久しぶりですね」

振り返ると、そこには纏っている服装は違うけど、数日前に出会った黒髪の女性が佇んでいた

「あっ、この前顎をマリで打ち抜いちゃた人」

「…………ふうむ、はて?」

思わずポロリと零れてしまったちょっと失礼な言葉。それの意味が理解出来ないのか、気に障ってしまったのか、その女性は顎に手を当て何かを思案していた。


「どうしましたか?」

「いえ、ただ前の予告?の中のセリフと此度では、いささか異なるようでしたので」

「前の予告ですか?」

この人は一体何を言っているんだろう? ソフィアさんにも同様に思ったけど、二人とも頭の病気じゃないだろうか?

「大体、テイク2なんだから、微妙に異なるのはしょうがないじゃないですか?」

「あなたも対外だと思うけどね。一緒に精神科に行くかい?」

「はっ………ボクは何を言っていたんだ?」

全くの無意識に、訳の分からない言葉を喋っている自分がいる。

この現象は一体なんだ? 神の見えざる手によるモノなのか? もしかして、他の二人も同じ現象に陥っているんじゃないだろうか?


「―――って、今の問題はもっと別にありましたね。たしか、ナルカミさんでしたっけ?」

あまり記憶力には自信がなかったんだけど、どういう訳か、暗がりだったにも関わらずこの人の事は良く覚えている。

「ええ、お久しぶりですね、アマノさん。ご機嫌は―――あまり、宜しくはないようですね」

「そうなんですよ。ちょっと聞いて下さいよ~~」

正直な話、お互いの関係は何なのかよく解らないまま、ボクは自分の悩みをアマノさんにぶちまけていた。

「社としての責めを果たせているのであれば、何を繕う事も無いと思いますが?」

「ええ~~~~っ?」

清光すがしひかり 清らかな光

・如何なる どのような どのように 

・芳しい 花が良い香りを醸し出す様子の事。『芳しくない』でその具合が悪い様子を表す。

・責めを果たす 義務や責任をしっかり果たす事。ちなみに『つとめ』という字は一発で変換されない可能性がある。『務め』や『勤め』を使う場合は『務め上げる』と書こう。


個人的に檜皮葺で思い出すのが出雲大社なのですが、あそこは塀が邪魔でお社がちゃんと見えなんですよね。他の場所も似たようなモノですが、もっとしっかり見たいなと思う今日この頃。

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