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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第二章 白妙(しろたへ)のネコは気位が高い
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新たな依頼と、船出の準備

太「船で思い出しましたけど、雷神さんってどうやってこの大陸に来たんですか? この世界の海って年中大嵐でまともな航海が出来ない筈なんですけど」

雷「わたくしは折節おりふしで海の底を歩いて往くか、小舟さをぶねに乗りますよ」

太「ええっ? 神って水の中で呼吸できるですか?」

雷「出来なくはありませんね。水を電気で水素と酸素に分解し、身体を常に濡らさぬようはこべば」

太「うわ~、無茶苦茶だよ、この人………」

雷「あなたにそう言われるのは、このうえなく腑に落ちませんが、直人ただびとからはそう見えるでしょうね」

水の抵抗を計算された形状故の縦長な船底の独特なフォルム。

沢山の風をイッパイに受け止める為の大きなマスト。

何かの鳥かな? 猛禽類のような顔をした翼を広げた鳥の船首像。

あまり大きくはないが、ショボクもないそんな舟が陸地に鎮座していた。

「どうして、こんな所にこんなものが……」

ただ、不思議な事にこれには舵と呼べる物は存在しない。

その代わりに付いているのが、どんな悪路でも踏破出来そうな大きめのタイヤが四つ。

「日曜大工で造ったんだけど、良く出来てるだろ?」

「ええっ? これって、コチさんが造ったんですか。途中で壊れそうでヤダな~~」


それは、ソフィアさんが三日間の作業を終えて色々と作業を終えた後の出来事。

ボクは何の覚悟もなく、いきなり車輪の付いた四人乗りの船に乗り込む事になった。

そうなった経緯いきさつも、新しい仕事が入ったからみたいんだけど……

「どうしてまた、動く棺桶(船)に乗らなくちゃいけないの」

「仕方ないだろ、世の中カネだ、カネ。さっさと済ませて、さっさと帰るぞ」

「は~~い」



―――――――

話は少し遡り、その日の朝食の頃。『久しぶり』というよりも『初めて』四人で食事を食べていた時の会話だ。

「新しい依頼が入っていたぞ。それも、定期依頼では無いものが、同時に二件だ」

「珍しいわね、年に何回あるかしら?」

「一回も無いと言った方が正しい」

「………酷い言われようですね」

本当に自分は就職先?を間違えただろうか?


そうは考えても、もうすでに慣れちゃったし、他に選択肢も無いから別に良いけど……

ただそれとは別に、ちょっと気になる事がある。

「コチさんって、ボクと同じように最近外出してませんよね。どこで依頼を探しているですか?」

「えっ? ああ、そういえば説明していなかったな。あれを見てみろ」

コチさんが指さす方向。あれと言われても、見えるのは壁に掛けられているハト時計だけだ。あれにどんな謎が………

「あれと同型の物が大陸の町々に設置されていてね。宛名と番号を書けば、目的の所まで手紙を届けてくれる」

そんなもの、ボクの住んでいた町にあったかな? まあ、あったとしても前まで外出をあまりしなかったから、知らなかっただけかも。


「そうがどうして、ハト時計の形をしているんですか?」

「伝書鳩をモチーフにしていると言っていたが、別のバージョンではニワトリのタマゴバージョンもあるらしい」

見る分には楽しいらしいけど、いちいち卵を割らなくちゃいけない手間が嫌でこちらにしたそうだ。

このハトは、手紙が届くとポッポと鳴いてくれるだけでお手軽らしい。

「どっちの売り上げの方が良いんでしょう?」

「さあ?」

ちなみに、時計が付いているのは届いたのが何時何分なのか自分で確認させる為らしい。

この装置には、届いた時刻が自動的に書く機能は搭載されていないそうだ。

「へえ~便利なんですね。高いモノなんじゃないですか? よく買えましたね」

「制作者のリンから無理やり押し付けられただけだ。ソフィアと何時でも連絡を取れるようにしたいからとか何とか言ってたな」


「へえ、そうなんですか…………えっ? えっ~~~~――――むぐっ!?」

「うるさいなあ」

それまで無言で手を動かしていたヨミさんが、ボクの皿に乗っていたパンを口の中に放り込んできた。

「二人とも食事中に喋らない。下品だよ」

「はい」

「わかりました」

……………………

奇妙な威圧感を発する言葉に、ボクとコチさんは何も言い返せなかった。

とりあえず、早く食事を終わらそう。



「話が折れたが、俺はこの二つの依頼を受けようと思う」

食事が終わり、ボクとコチさん。それとソフィアさんの三人で食後のお茶を飲んでいた。

「珍しいわね。あなたがやる気なんて」

ちなみに、ヨミさんはもう寝ちゃっている。どうも、あれはヨミさんにとっては朝食では無く、夕食だったようだ。

「それよりも、ボクはあのハト時計がリンさん作だという事の方が気になるんですけど?」

「何だ、彼女が作った事がそんなに不思議なのか?」

彼女にあれが作れるのがそんなに不思議なのか? などと、彼は疑問の眼差しを向けるけど、そういう意味じゃないんです。

ボクだって、この神具を作った彼女なら、あの程度の作れるだろうなと思います。


そう、思うんですが―――――

「いえ、問題はそこじゃなくて。『あれ』が『あの』リンさんがソフィアさんに贈った『物』だという事が問題なんです。何か、良からぬ仕掛けを施しているんじゃないかなと思って」

これは予感というよりも、確信といってもイイかも知れない。

初めて会った時のあのインパクト。多分、一生忘れる事はないだろう。

「それなら、もう心配ないわ。すでに除去してあるから」

「ああ、やっぱりあったんですか……」

「……ゴホン、話を進めるぞ」



「お金を沢山稼ぐのは賛成だけど、内容はどんなのよ?」

この中では多分、一番お金を持っているだろうソフィアさん。余談だけど、飲んでいるお茶は何故か<ほうじ茶>だ。それも、二十種以上の茶葉をほうじた物で、複雑な味が楽しめるそうだ。

ボクにはまあ、よく判らないんだけど、お湯の沸かし方が随分と面倒だったのは判った。


「まあ、内の一つは俺たちというよりも、ヨミにだけどな。大量の蜘蛛の糸が欲しいそうだ」

「やっぱり、一件だけに絞って全力を傾けましょう」

「発言の切り替え速いな、お前」

「え?え?ええ??」

何やら、普段のソフィアさんからは考えられないぐらいの慌てっぷりだ。

普段からセクハラを受けている身としては、それは何となく嬉しい光景なんだけど、何があったんだ?

「心配しなくても、そっちには俺とヨミだけで行く。お前たちはもう一つ件である、ここから南西に位置する国のはふりから。主の手助けをしてほしいそうだ」

はふり? はうり? 何を言っているんか良く分からなかったんだけど、ソフィアさんには理解出来ているようだ。不機嫌そうな顔でにらみ返している。


はふりの主って、神の事でしょ? 神のピンチヒッターを新神(この子)にやらせるの? 無茶じゃないかしら」」

正直、それは正解だと思います。そう何度も頷いたんだけど、無視されました。

大丈夫だと無責任に太鼓判を押しちゃってる目の前の男。実はこの人、ボクの先生です。

「どうして、そっちにこの子を派遣するの? 逆でも良いんじゃない?」

「それはそうかも知れんが、クモの糸を集める仕事の方が実入りは良いんだよ。」

「要約すると、ギャラは四人で均等に分けるんじゃなくて、それぞれが稼いだ分だけ懐に入れられるのね」

「そういう事だな」

太鼓判を押す理由はギャラが安いからだと、正直に言ってくれている目の前の男。信じたくないんだけど、実はあれ、ボクのセンセイらしい。


「自分の欲望に忠実というか、欲求をストレートに言ったわね」

「色々とあってカネが無いんだよ。心配するな。今回も戦闘らしい戦闘は多分……ないだろう」

「その『多分』がもの凄く心配なんですが……」

『多分』は何時だって、『絶対』に変換されるのが世の常なのに、一体この人は何を考えているのか、一度頭でも割ってみようかな?

「仕方ないだろ。何しろ今回の依頼内容は、イキ過ぎたネコ愛に駆られた何人かの町民が、何を考えているのか、町中のネコ達を捕まえて健康診断をしてあげた後、病気を治してあげようなんてバカな事を考えたあげく、追いかけられたネコが疲労とノイローゼで病気になったから、活動の沈静化をして欲しいなんていう内容なんだから」

――――――――

――――

「その人たちも、自分の欲望に忠実というか、欲求をストレートに表現してるのね」

ある意味、彼ととても似ているのかも知れない。

「うわ~」

何だろう? 他に言葉が出て来ないよ。その力をもう少し、別の方へ向けられないんだろうか?

「面倒な事を考える人たちもいるのね」

「そうだよな。どんな思考回路しているのか、一度頭を割ってみたくなるよな」

「コチさんと同じ色の血が吹き出ると思います」

「はっはっはっは、まあそうなんだけどな。確かに面倒な案件だが、依頼主は金持ちだから報酬も破格だし、お前も何時までも一文ナシでは不自由だろう。しっかり達成して、カネを溜めておけ」

「ああ、そういえばそうでしたね」

思い出すと、この前火事で全財産が燃えたんだった――なんて、大事な案件がありました。

たしかに、そろそろお金を調達しなくちゃいけないよね。自分の為にも、ネコ達の為にも頑張ってみようかな?



「ちなみにだが、今回は距離が遠いから乗り物で行くぞ」

「へ? 馬車に乗るんですか……」

この人たちが、そんな高級な乗り物に乗れるのか、甚だ疑問だったんですけど、倉庫から出てきた車輪の付いた船を見た時、本能的にボクは悟りました。

「これは、ヨミさんを搭載した新しい棺桶ですか?」

「国によっては、こんな形の棺桶が本当にあるからな。もう分かっていると思うけど、これを俺が風で前に押し続けて進むからな」

「人目は大丈夫なんですか? 神だってバレたらダメなんでしょ?」

「そうだな。だから、移動は基本夜間になる。。途中、風の強い所に出れば俺でなくても前に進めるようになるから、夜間は頑張って寝てくれ」

「寝れる訳ないじゃないですかっ!」

うわ~~、どうしてこの人たちは、こう落ち着いて移動が出来なんだろう?



「進行方向は帆の角度を変えてソフィアかヨミが調整。アマノは………しがみ付いて、振り落とされない様にガンバレ」

「木に激突して、バラバラにならないでしょうね!?」

「はっはっはっは、心配するな。その時には激突する前に飛び出して受け身が取れれば死にはしない」

「うわ~~、そこはせめて、助けてくれると言って下さい。コチさんの血の色は絶対に赤くないですよね。青色なんじゃないですか?」

「青色の血が流れる生物なら実在するぞ。血の主成分が鉄ではなくて銅らしい」

「そんなビックリ生物がいるんですか? 名前は何て言うんですか」

「自分で調べろ」

「ええ~~~!?」

折節おりふしで 場合場合で


青い血の生物は『生きた化石』とか呼ばれている生き物の一つなのですが、知っている人はどれだけいるでしょうね? 


体力が完全に回復しなくても、日常生活には戻る。

脈拍が十秒で十三回もある。本調子にはまだ遠い。



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― 新着の感想 ―
[良い点] そんなカブトガニの体には、淡い青色をした血液が流れています。 人間のような生き物の血液が赤いのは、酸素を運ぶ物質「ヘモグロビン」に鉄が含まれているためなのですが、カブトガニの血液には鉄の代…
2019/11/10 03:03 退会済み
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