コチさんの立派な神様になる為の授業
雷「白妙とは神々しいばかりに光り輝く美しい白の事。そもそも、妙または妙には、神がかっている。上手であるという意味を持つので、そこに色を加えた言葉ですね」
太「『言い得て妙』とか『妙なる調べ』とか、現在でもたまに使われる言葉にも『妙』は出てきますね」
雷「ほかにも『しろたへ』と云えば、白栲という、こうぞの樹皮で織った布を指す言葉もあり、これも白くて美しい事から栲と云えば白と云う例え言葉にも用いられます」
太「へえ~~、そうなんですか。それにしても、今回も本編が短いですけどどうしたんでしょう?」
雷「それは作者がインフルエンザで頭が半分死でいる有様だからです」
太「なるほど、だからもう一人のゲストも出て来ないのか、考えるのが疲れるから」
それは、ソフィアさんが三日間ほど部屋に籠っていた頃の事。
「なんですか、これは?」
それは、不思議な液体だった。
小さな泡がシュワシュワとはじけ飛び、口に含めばピリッと辛い。
しかし、ハチミツの甘みがほど良くその辛みを緩和し、絶妙な味を奏でる。
この不思議な飲み物は、目の前にいるボクが師事している先生――コチさんが目の前で作ってくれたんだけど、どうやったのか良く分からなかった。
「大気中に0.03%含まれている二酸化炭素だけを圧縮、凝固化させた後に水にぶち込んだものだ。忘れているかもしれないが、俺は大気の神だぞ。このぐらいは朝飯前だ」
「………はあ~~~凄いんですね」
凄いんだねえ、神の力って………実際にやっている事は地味だけど。
「地味ですよね、やってる事は………」
「やかましい。生活に根差した力なんてこんなものだ」
別に生活レベルで役に立つ力の使い方を教えて欲しかった訳じゃないんだけど……
昼も過ぎると、既に日が陰っているのか少し薄暗く感じる冬の季節。
丸一日掛けて、何らかの精神的なショックから立ち直ったコチさんに、ボクは授業を受けていた。
この家に来てから、食べて寝る以外何もやっていない。それでは人間ダメになってしまうと、少しは師匠らしい事をして欲しいと、授業を乞うてみた。
この家に来てからというもの、神の力を使った便利な道具の数々―――掃除機や冷蔵庫、暖房などに触れる度にビックリする毎日です。
これらは埋め込められている赤い石に力を込めれば発動するので、簡単なんだけど勉強にはならない。
赤い石を使わず、神の力を使って実際にどんな事が出来るのか見せて欲しい。
そうお願いして見せて貰って、御馳走して貰ったのがこの炭酸水だった。
「ボクにもこういう事が出来るんでしょうか?」
「同じ神ではないから全く同じ事は出来ないが、出来る筈だぞ」
ボクは太陽の神だから、何かを温める事ぐらいは出来ると思うけど、他にあるかな?
「一緒に頑張って、楽で便利な生活をしようじゃないか?」
「いえ、べつに力を使いこなそうとする動機が、便利な生活をしたいからとかじゃないんですけど………」
基本的に、面倒臭がりやなこの人と、がんばり屋なボクとは話が噛み合わない。
授業さえしてくれれば、それはそれで別に良いんだけど、授業内容が所帯じみたものに特化しそうだなと変な確信を覚えちゃっている今日この頃だった。
その後の、授業も基本的に大気を取り扱った内容だった。
真空状態では食品の酸化が進まないとか、酸素の濃度を上げて燃焼の効率を上げ、逆に酸素を抜いて火を鎮火させるとか、様々な用途を教えてくれた。
大気を扱えるというのが凄い便利な事だなと言うのはよく分かる。分かるんですけど……
「あの~~~、ボクは大気の神じゃなくて太陽の神なんですけど? 出来れば太陽の神が出来る事を教えて欲しいんですけど?」
問題は、その知識はボクには何の役にも立たないという事。
そんなボクの当然の質問に、歯切れの悪くなった彼は頭を掻きながら一言。
「それは、自分で考えろ―――というよりも、俺にもよくわからん」
「ええ~~~~!!」
まさかの、教師が匙を投げだす事態。あまりの事態に荷物?(ほとんど手ぶらだけど)をまとめてお暇しようかなと思った。
「お前自身に自覚があるか知らんが、太陽の神は同時代に一柱しか存在しない貴重な存在だ。しかも、発現場所もまちまちで、この大陸では初なんじゃないか?」
つまり、データが少ない――ではなく存在せず、彼にも分からないという事か。
すると、別の人の所に行っても同じ結果になるのか。思わず、今からでも別の所に鞍替えしようかなと本気で思ってしまった。
「本当の所は、本の虫がいる図書館にいけば分かると思うが、雪山登山はもうコリゴリだしな」
「―――やっぱり、鞍替えしようかな?」
「何か言ったか?」
「いいえ、別に何でもありません」
それでは、先生として具体的にどんな事を教えてくれるんですかと訊いたら、効率的な力の使い方を教える事が出来ると言われた。
「そもそも、神と云うのは肉体から精神を一時的に切り離し、裏世界にいるもう一人の自分にこうして欲しいとお願いして、無事に精神が肉体へと帰還出来るだけのタフな奴の事を云う」
場所はまだ居間。時刻はやや経って夕方頃。ヨミさんが寝ぼけた顔でこちらにやって来た。
「それは体感しているから、何となく判りますけど………」
そろそろ夕ご飯の心配をしなくちゃいけないよね。ヨミさんは朝ご飯に手早く作れる料理、野菜炒めだろうか? 何かを作っていた。
「そのタフさの源は人それぞれだが、大抵の場合他人からは偏愛としか言いようがないモノへの執着が、それにあたる」
「ボクの場合は、甘い物への執着ですか。それはまあ、自覚していますから別に良いんですけど」
他の神々はどう思うんだろう? 当然と思うのか、それとも怒るのか。
そもそも、この人の場合はどんな執着があるんだろう?
「その執着さが、神が変わり者だと云われる所以なのだが、要はそのもう一人の自分へのお願いの仕方が全てを左右させる」
ヨミさん、食べるのが速いよな~~。手と口の動きが常軌を逸しているよね。
「この神具や便利道具に付いている赤い石は、結局何なんですか?」
この装備って、便利だけど実は原理を良く判っていない。
原理が判らなくても便利だから良いかって思っていたけど、後学の為にも教えてもらおう
「あの石は世界を変革する願いの力を別の所に保管する為の触媒だ。
故に、補充した分以上の力は発揮しない。出力も制限すれば被害が出る事もない。
だからまだまだ暴走しやすい新神が持つには適していると云える」
確かにボクは、ちょっと火を出そうして部屋を丸コゲにするからこの神具の存在はとても助かっている。
「そろそろ、ご飯にしませんか? お腹空いたんですけど」
ヨミさんは既に食事を終えて、狩りの準備をしていた。
マイペースと云うか、野生動物のような淡白さと云うか、不思議な人だよね。
「そうだな。たしかにそろそろ飯どきか。地下にある冷蔵庫から食材を取りに行ってくれ」
「は~い」




