あと五分は一時間と訳す
巫「愛のパラメーターは献立の手抜き具合でわかるっ!」
伝「せっかく、あたしが登場したのに、その話題?」
巫「絶対ではないけど、真理の一つだよ。私は毎日、『伝』の作るごはんに満足してます。ありがとう」
伝「本編で名前が出ても、この中では呼び名は変わらないよね」
巫「そのような仕様で、これからもダラダラと続きます」
伝「せめて『伝記者』と――」
神は国の数だけ、民族の数だけ、概念の数だけ、人の数だけ、存在する。
人に都合の悪い奴もいれば、良い奴もいる。
愚と呼ばれるものもいれば、賢と呼ばれるモノも存在する。
空想から生まれた存在もいれば、現象から生まれた存在もある。
多種多様、数多の存在が神と呼ばれる。統一していえるのは、力の大小はあれど、人を超える存在だという事だ。
人は決して神を超える事が出来ない。いや――超えれないと思い込んでいる。
人はいつだって、神になる事も、人に戻る事も出来る筈なのにだ。
――――
眠い……とにもかくにも、眠い。
自分の意識が現世ではない、どこかを彷徨っている。
夢を見ているのか。それならば、さっさと覚めて欲しい。そして、もう一度気持ち良く寝直すのだ。この夢はあまり好きじゃない。
思いとは裏腹に、自分という存在が霧散して世界に溶けていく……
「まずいな、これは………ぐぁっ!」
突然、顔面に鈍い音と共に衝撃が走る。ムリヤリ覚醒する意識。顔面が陥没するんじゃないかと思う痛み。跳ね起きると、目に前には腕を組み仁王立ちで睨み付けている女が一人。
「何だ、ソフィアか」
「いいかげんに、起きなさいっ! もう、お昼よ」
起きたばかりで、思考がうまく廻っていない。
こういう状況だと、理性や危機回避能力よりも、優先されるものがある。
「何だ……まだ昼なのか? もう少し寝かせろよ~~」
もぞもぞと再び布団を被ろうとすると、ずるずるとムリヤリ引き摺り出される。
「寒いではないかっ」
「起きてりゃ、そのうち体温も上がるわよ。いいから、その布団を離しなさい」
「………へ~い」
未練がましく、名残惜しさを感じながら、愛しのフカフカ布団を手放す。
肌寒い空気に身を震わせながら、気力を振り絞り凍えきる前に寝間着を脱ぎ、服を着る。
「ああ~~~もうダメだ」
最後の気力を言葉に込めて、そのまま意識が抜けて脱力する。
「立ったまま寝ないでよ。仕方ないわね……」
「…………?」
いきなり、首の後ろに冷たい感触が。びっくりして、何なんだと目を開けると、襟首を掴まれていた。
「―――あっ、起きました起きました、起きましたってば~~~~!!」
と、叫んだつもり―――なんだが、一切の躊躇なく、そのままキッチンまで引き摺られる。
「あの~~~ソフィアさん? うちの廊下ってフローリングをちゃんとしてないから、ささくれて痛いんですけど」
「だから、なに?」
「―――いえ、何でもありません」
嫌な季節になったなと思いながら、そのまま大きなテーブルがあるキッチンへと向かう。
「おっ、もうエサが用意されている。地味に感動だ」
「さっさと目を覚ましてもらわなければ困るんでね」
「君のその深~い愛情には、毎日感謝しているよ」
「はいはい、私も毎日愛してる愛してる。だから、さっさと食べなさい」
テーブルの上には、昨日の深夜に強行軍の末に、手に入れた獣の肉が並んでいた。
もう季節は初冬を迎え、肌寒さが身に染みる。居間の暖炉にはもう薪がくべられ火が灯っていた。
―――燃料代の節約の為にも、陽が昇ってる間は消したいのに、本当に嫌な季節になった。
テーブルに並べられていた、純和風の朝食。起き抜けはお腹が空いているのでとてもありがたい。これで、温かいお茶があれば言う事ナシなのだが……
「それで、何のようでこんなに早く起こしたんだ? 言っておくが、俺はついさっき寝たばかりなんだぞ」
「仕事よ。簡単なのか面倒なのか判断できない。厄介なお・し・ご・と」
こちらの質問を予測していたのか、彼女は持っていた手紙をこちらに放ってきた。
片手で手紙を受け取り、もう片方の手でポットを持つ。お茶を催促するのも、用意するのも面倒なのだが、飲みたいので自分でするのだ。
「依頼人は、あの『本の虫』」
「『本の虫』……本の虫、本の虫、誰だっけ? 昨日、書斎でせっせと巣を作ってた八本足の奴の事か?」
軽くボケたら、彼女はフォークを構えだしたっ!
「ああ、思い出した思い出した! あのジジィが依頼人?」
「無駄にイライラさせないで。私も仕事が上手くいってないんだから」
「悪い悪い、俺もまだ寝ぼけていて思考能力が低下してるわ」
普段なら、彼女の感情の機微には敏感なのに、愚かだな俺も。
「面白いネタ、見つからないのか?」
「―――――――早く食べなさい」
とりあえず、さっさと飯を喰おうと、黙々と食器が鳴る音だけが響く。




