新たな神話の誕生
伝「あれっ? 『もう』というか、『やっと』いうか」
太「終わっちゃいましたね、第一章が」
伝「う~ん、半分以上は無駄話で副音声を構成したけど、どうだったろう?
太「さあ、どうでしょうね? この部分は気ままに、思いつつまま喋っていただけですからね」
巫「明日の次回予告では、雷神が出るみたい」
伝「へえ、あの子がね。何しに来るのかしら?」
巫「何でも、大和言葉について簡単に説明するって」
伝「なるほどね。それなら確かに彼女が適任だわ」
太「生徒役は、またボクですかね?」
巫「それが、兄の東風がやるみたいだよ」
太「ええ~~~~っ! 信じられない……」
伝「相変わらず、良いリアクションするわね。え~、それでは皆さま、またいつかお逢いしましょう」
巫「―――第二章のキャストは完全に未定なので、さよならかも知れないけど」
伝「そんなわけあるか~~~~!」
とある町の、とある場所に可愛らしい双子の兄妹がおりました。
二人は双子ではありますが、性格も容姿もまったく違います。
引っ込み思案で臆病な兄と、そんな兄を引っ張るイケイケで、エゲツない手も辞さない妹。
二人はいつも仲良く、一緒に遊んでいました。
そんなある日、二人はまだだれも訪れた事のない、みかいの森へと遊びにいきました。
そこで二人は、とっても大きな大きな木を見つけました。
それはあまりの大きさに、見上げてもてっぺんが見えないぐらいの大きさです。
妹は言いました。『これにのぼってみようよ』と
兄は言い返します『あぶないからやめようよ。それに枝まで高くてのぼれないよ』と
妹は『大丈夫だから、お兄ちゃんが踏み台になってね♪』と可愛らしく、兄の首を締めながらおねだりします。
兄は諦めの境地に達しながら『分かった、分かったよ、我が妹よ(汗)』と、妹の魅力にメロメロになったせいか、フラフラしながらうなずきます。
多少ゲンゴが大人っぽくなった二人は、きょうりょくして木によじのぼることにしました。
妹は兄を踏み台に大きくジャンプ。息がピッタリ合っていたのか十メートルは飛びました。
『いや、絶対にそんな高さじゃないと思う』と兄がわけの分からないことを言っていますしかし、妹はまったくきいていません。
もちまえの『うんどうりょく』と、『こうどうりょく』でぐんぐん上にのぼります。
一体どれだけのぼったんでしょう? 一日? 二日? それとも、一週間?
下の方から『多分、二十分ぐらいだと思うけど?』とするどいツッコミが飛びます。
妹は何のためにのぼっているのかも分からず、ただ『こうきしん』のままひたすらにのぼり続けました。
そして、妹はくなんのすえについにたどりつくのです。(所要時間 一年)
『いや、だから一時間も経っていないって』としつこいツッコミがまた届きましたが私にはきこえません。
妹がそのてっぺんで見つけたのは、なんと一軒家ぐらいの巨大なホールケーキです。
『なんで、その非常識なケーキの大きさだけ真実なの?』と妹の見た物を『双子のいしんでんしん』の術で見た兄が、またまたツッコミます。
妹は喜びのあまり踊りだしました。妹は甘いものが大好きだったのです。
しかし、すぐにかぶり付こうとして思いとどまります。
『これを一人で食べたら、絶対に太るよね』という残酷な現実が、妹の前に立ちはだかったのです。
『仕方ないから、お兄ちゃんにもおっそわけしようか』
妹は長いこと悩んだすえに、断腸の思いで、ケーキを兄に分ける事をけついしました。
『すでに九割は食べてるよね』
一体からだのどこに入ったのか、『ぶつりほうそく』をムシしていますが、物語なので『ごつごうしゅぎ』でとおります
妹はのこったケーキを手に、スルスルと木を下りていきました。
木の下には、待ちくたびれてすっかり年老いた兄が待っていました。
『いや、だからそんなに待っていないって。このナレーションおかしいよ』となにやら、私にケチをつけている兄。
『ナレーションさんも歳で、『もうろく』しているんだから温かい目でみようよ』
何とも失礼な事をのたもう妹。二人とも失礼なので天罰を下しましょう。
『何だ、お前のそのゴスロリな格好はっ?』
『お兄ちゃんこそ、なにそのクマのきぐるみ姿は?』
大変です。二人はファンシーな服を着させられる『のろい』にかかりました。
『かかりました――じゃないよ~~!』
『う~ん、こういう時は何でも知っている不思議なお姉さんに相談しよう』
あばれる妹に、兄はれいせいに打開策をていあんしました。
二人は兄のていあんで、不思議なお姉さんにのこったケーキを手みやげに向かいました。
手みやげはお願い事をするときには、とても大切です。みんな、覚えておきましょう
しかし不思議なお姉さんは、手みやげを目にしてひとこと。
『あたし、甘い物は苦手なのよね』
なんと、お姉さんは甘い物がお気に召さなかったのです。
――――二人は『じぜんちょうさ』の大切さを学びました。
『なんか、スキルをゲットしたみたいだけど、そののろいを解きたかったら、しばらく家で働きなさい』
なんと、このお姉さんは『じどうろうどう法』をむしして、二人を働かそうとしました。
『このアホなナレーションは無視して、仕事と言っても大したものじゃないわ。この薬をある人に届けて貰うだけだから』
そして、行った先では二人がオオカミに食われる未来が―――
『―――待ってないから。お願いだから、そんなに怯えないでよ』
やさしい頬笑みで、二人を手まねきする。二人はおそろおそる、くすりを受け取ると他に手はないと、おしごとを受けることにしました。
すぐ後ろに、不思議なお姉さんが黒い笑みを浮かべているのにも気づかず………
――――――――
――――
「それは罠だっ! 行くんじゃない、二人とも~~~!」
「あなた、なに児童向け小説に熱くなっているの?」
「――――あれっ?」
あれから三日、ソフィアさんはずっと部屋に籠っていました。
その間に、コチさんとヨミさんも帰って来たのですが、様子がおかしいです。
とくにコチさん、心ココにあらずと云う感じで、話しかけても叩いても反応がありません。
それに比べてヨミさんは楽しそうに、昼はガッツリ寝て、夜は一人森に狩りに出掛けています。
何があったのか聞きたかったのですが、何か触ってはいけない何かを感じて放っておきました。
そんなコチさんは、何度かソフィアさんに呼ばれて部屋に入って行きました。
何やら事情聴取をされているようです。何を話しているんでしょう?
「………この双子って、もしかしなくてもボクですか?」
その二人の会話内容が何となく分かったのは、ソフィアさんが三日間書いていた小説を読んだ時だった。
小説の内容は、双子の兄妹が様々な艱難辛苦を乗り越えて、たくましく育つ成長物語のようだ。
何と言うか………面白いとは思うけど、モデルがねえ~~~
「彼から教えて貰ったからね。あなたの向こうの世界での姿を」
「……やっぱりそうですか。ソフィアさんって、こんなもの書いていたんですね」
「お仕事でね」
ボクが向こうではどんな姿なのか、それは同じ神でなければ分からない。
それにしても、この内容、児童向けにしてはちょっとブラックな感じがするけど、子供の情操教育に良いのだろうか?
「一応、それの売り上げも大事な収入源でね。それから、その児童小説は児童小説でも、新たな神話を描いた児童小説だから」
「えっ………?」
物語の展開から、多分この前のボクをモデルにしているんだろうなとは分かったけど、それを神話と銘を打たれると非常に抵抗を感じるのは自然の事だと思う。
「どうして、こんな形になるんですかっ?」
「だって、リアルに書いたら夢も希望もないじゃない」
「それは、ソフィアさんがお金の為に『やらせ』をするからじゃないですか~~」
「あっはっはっは、神話なんて、元ネタはあっても展開は嘘八百で塗り固められているに決まってるじゃない」
「うわ~~~、また身も蓋もない事を言ってるよ、この人は~~~~」
こんな人たちと、ボクはこれから何十年も付き合う事になるのだが、それがどんなモノになるのかは、まだ誰にも分からない――と云うか、予想がつかなかった。
――――
誰かが言っていた。嘘には優しい嘘と、そうでない嘘があると。
ワタシにとっての嘘は、面白い嘘か、周りの人が幸せになれる嘘か。その二つだけだ。
それ以外の言葉はただの暴言で、優しい嘘などただの自己満足、偽善に過ぎないと思う。
――――そんな事を説明して何を言いたいのかというと。
「あんたたち、お願いだから嘘だと言ってよ~~~~~!」
ワタシことリンは、ソフィアたちが帰った後、掃除を命じた『自走するチリトリ』と『自立したホウキ』にテーブルに置いてあった研究資料をドコにやったのか尋ねた。
そうしたら、あいつらは柄の部分で指しやがったのだ、焼却炉の方を―――――
「ワタシの一か月をかえせ~~~~~っ!!」
怒りにまかせて、こいつらも焼却炉に放り込もうと思ったんだけど、作り直そうにもその設計図が燃えちゃったのだから、おいそれとは燃やせない。
とにかく、こいつらを一度分解して設計図を作り直さねば………
「――――って、いない!? あいつら逃げやがったな~~~~!!!」
こちらの殺気?に気づいたのか、凄い速さで逃げたみたいで、二つの物体の影も形も見えない。
「道具のくせに、文字通り自走して自立しやがったな。―――まあ、いいか」
色々とありすぎて、怒りを通り過ぎて肩の力が抜けちゃったよ。でも、あいつらとはきっと、いつか再び出会う事もあるだろう。
未来など誰にも分からないのに、何故かワタシはそう確信していた。
この胸に宿る想いは、その時にでもぶつければイイっか。
「もう寝るか」
今日はとても疲れた。徹夜作業はやっぱり疲れる。コチからの依頼は何時も突然で、余裕が無い。もう少し時間的な余裕が欲しいよ。
「あれ……何だ、この音は?」
外から聞こえる罠の作動音。また誰かが引っ掛かったのだろう。こんな真夜中に誰だ?
不審者かと思ったら、やがて聞こえる呼び鈴の音。
疲れている体を引き摺って玄関へと。扉は壊れたままなので訪問者はすぐに確認出来た。
全身の服?(見慣れないけど和服かな? 資料では見た気がする)がボロボロの、長い黒髪の少女が立っていた。
「こちらに、腕の良い錬金術師がいらっしゃると伺ったのですが?」
「ボロボロなのにその表情。随分と根性のある子ね。
ワタシを錬金術師と呼ぶなんて、一体だれの紹介だい? なんて、その黒髪を見ればコチ君辺りかな」
「ざんねん、私です」
「あれま~、ヨミじゃない。どしたの?」
噂をすれば影―――と思ったんだけど、出て来たのは彼の祝女だった。
どうやら、この店まで案内してくれたようだ。
疲れている身としては、イイ迷惑だ―――なんて本心は、営業スマイルで華麗に隠す。
「目の下にクマ作りながら笑わないで。………何だか恐い」
「――――今日は何のご用でしょうか?」
久しぶりに会った彼女は、少し疲れているようだ。何故だろうと思ったら、普段は彼女が入っている棺桶に誰か入れていて、ここまで重かったらしい。
「この店には、いと愛らしくも、目もあやなお召し物があると伺いまして」
「はい………?」
この人が何を言っているのか、何となく判りはするけど、自信が持てない。
「ヨミ、この子は一体何を言っているの?」
「うん、実は――――」
…………
「――――物好きね」
好き好んであんな物を着たがる人がいるとは、世界って広いなと実感したよ。
「まあ、良いか。既存の価値観に、ワタシは価値を認めていないからね」
何時の世だって、新たな発見は、古い価値観を壊す事から始まる。
こういう文化が、一般化するのももしかしたら必然だったのかも知れない。
ワタシはそう独りごちりながら、棺桶の中にいるコチから、料金を徴収していた。
解説
・いと愛らしい とても愛らしい
・目もあや 派手
・店 お店
とりあえず、第一章は終わり。次回予告は、 明日の夕方の六時ぐらいに投稿します。




