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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第一章 太陽さんの長い一日
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長い一日の終わりと、怪奇な出来事

伝「何気ない話だけど、雷神ちゃんって、太陽ちゃんに似ているよね?」

太「そうですか? 性格とか喋り方とか全く違いますけど」

伝「確かにそうなんだけどさ。同じ神だからか、雰囲気というか境遇が似ているというか」

太「何を言っているのか、よく分かりませんが……あれ、巫女さんどうしたんですか? 口元が緩んで笑いそうなんですけど……」

巫「いや、何でもない、何でもないから……ふっふっふっふ……」

伝「ああ、これは何かあったな」


とりあえず、このまま夜の公園に突っ立っていても仕方ない。

一体、ソフィアさんは一体ドコに行ったんだろう?

気配を探っても、判るのは自分以外の神の存在だけ。ナルカミさんの気配は今でも判るんだけど、その向こうにもう一つの反応があるんだけど、誰だろう?

「う~ん、とりえあず豆大福でも食べよう」

ヘタに動いて向こうがこちらを見つけられなくなっても困るし、これ以上歩きまわるのは疲れるもんね。


「何が、『とりえあず』なのよ。目が見えない状態で一人っきりにされたのに、随分と落ちついているわね」

公園のベンチに座りいざ食べようとしたら、暗がりの向こうから現れた待ち人は、少しびっくりした顔でこちらを見ていた。

「―――そういえば、そうですね」

考えてみれば、そうだよな。どうして、こんなに落ちついているのだろう?

「あれで、少しは自信が付いたって事かしら?」

「………?」

何やら首を傾げて考え込んでいるみたいだけど、意味を尋ねても教えてくれなかった。


ボクが疲れたと言うと、それを前もって考えてくれていたのか近くに宿を取ってくれていた。

「ボクもココまで来るのによく利用していましたが、どこに泊まるんですか?」

「『鳥啼とりなき亭』よ。小奇麗な宿だけど、とても安くて我が家では頻繁に利用するのよね」

「ああ、ボクも聞いた事はありますよ。綺麗だけど、ご飯がとても不味い事で有名ですよね」

これは、今晩の夕食と、明日の朝食には希望が持てませんな……

「はあ~~~」

「何をしんみり溜息なんか吐いてるの? 道中は暇だから、最後の講義をするわよ」

「は~い」




ソフィアさんの案内で、彼女の行き付けの宿へと向かう事になった。

その道中、ソフィアさんから今日最後の講義が行われる。

ヨミさんから借りたナイフ(狩猟用)で袋とじを開けると、中には最後の心得が書かれていた。


「…………『心得11 一芸を身につけるべし』」

最後の最後に、訳の判らないモノが出て来ました。

これは、何だ? ボクに芸人にでもなれというのか? 

人から笑いを取らねば失格だとでもいうのか? 

訳が判らず傾げているボクに、何時ものようにソフィアさんからの解説が始まる。


「神と云うのは強力な力を持つ存在。故に神同士の戦いは周りに甚大な被害を及ぼす」

「それは……さっき聞きましたね」

「その上、神の肉体は普通の人よりも頑強でね。本気を出してやり合うと決着が付くまでにどれだけ周りに被害が及ぶのか判らないのよね」

それはまあ、何となく判る気がする。ボク自身、宿っている力を持て余していて不安や孤独に駆られなかった日は無かった。


「だから、代理の者を用意するか、別の方法を―――って、ああっ!」

そこまでいって、これが何を言わんとしているかようやく分かった。

「一芸とは、何らかの競技や楽器の事で、それを身に付ければ、別の方法での戦いにおいて有利に立てると。そういう事ですね」

「そういう事よ。力が強いだけの神は実は沢山いてね。珍しくも無いし」

「いや、神と云う存在自体は珍しいと思うんですが……」

問題なのは、珍しさよりもどうすれば神同士の戦いに勝てるかじゃないのかな?

そんな事を疑問に思っていると、ソフィアさんはポツリと後々判る決定的な一言を漏らす。


「それに何より、特技が無いと物語の中で目立たなくなるのよね………」

「えっ? 今、何て言ったんですか」

声が小さすぎてよく聞こえなかった。何を言ったのか尋ねようとしたら、その前に目的の宿に辿り着いてしまった。

とにかく疲れたから、さっさと暖かいベッドに入ってゆっくり寝よう。夕ご飯は、まあ期待は出来ないけど、空腹だからきっと美味しいだろう。


足取り軽く宿の扉を潜ろうとすると、後ろからソファアさんに肩を掴まれた。

「あなた……何時までその格好でいるつもり?」

「………………あっ!」

その言葉に、ボクは今、人前には晒したくない服を着ている事を思い出した。

ソフィアさんが平然としているから、感覚が鈍ってしまったが、これを第三者に見られるのは困る。

結局の所、寒かったんだけどブレスレットとチョーカーに埋め込まれた石に念じてあの恥ずかしい服は解除した。解除したからといって裸になる訳じゃないから。


明日になったら、とにかく新しい服を買おうと……そう思った。

「ちなみに、明日になったら寄る所があるから、早く起きるのよ」

「へ? 行く所ですか?」

「色々あって忘れたかな? 覚えている人は覚えていると思うけどね」




忘れかけたヨミの棺桶を回収し、とりえあずリンのアトリエに向かおうと三人で畦道を歩いていた時だ。

ナルカミが……妹が、とんでもない事を言いだしたのだ。

「あの子の見慣れないお召し物はいずこであがなったのですか? こちらの争う心地を限りなく削ぐ、わたくしを惑わすあのお召し物はっ!!」

「……………えっ?」

俺は未だかつて、これほどまでに熱くモノを語る妹を見た事が無かった。驚きと共に、とてつもない不安と恐怖が襲ってくる。


「あれは、いずこへ往けばあがなえるのですかっ?」

「何処と言われても………欲しいのか?」

「はい!」

「…………」

「あ~あ」

何も言えず、棒立ちをする俺と、これは手遅れだなと声を上げるヨミ。

出来れば教えてくない。赤の他人ならばともかく、実の妹にあの恰好はして欲しくない。

正直、痛々しくて泣いてしまいそうだ。


「まあ、これはこれで面白い事になるかな? ナルカミさん、あれはリンさんが作ったものだから、ついでに頼んでおきましょう」

「まあ、そうなのですか。ならば、ぜひっ!」

「…………」

本来ならヨミを止めるべきなのだろうが、手遅れだと気づいているからか、動けずに未だに棒立ちを続けていた。

「ありゃ? 動かないね、この人。寝不足で立ったまま寝たのかな?」

一体、俺は何処で間違えたんだ? 徹夜明けの頭であんな物を頼んだのが失敗だったのか?


「仕方ないから、棺桶に入れて運ぼうか」

「畏まりました。それよりも、善は急げで向かいましょう」

おい、妹よ。茫然としている兄を、『それよりも』で片付けないで欲しいな。

「リンのアトリエはすぐ先だから、そんなに急がなくても」

ヨミの呆れた声なんて聞こえないみたいに、妹は早く早くと子供のようにはしゃいでいた。

徹夜なんてするもんじゃないなと、痛感した出来事だった。

――――――――



そこは普通の民家に見えるんだけど、どこか桃色の雰囲気を醸し出している家だった。

――――何故、そんな風に感じるんだろう?

庭に咲き誇る、ピンクや黄色や赤色などの暖色の花々が。

白い壁に描かれた可愛らしい動物のイラストが。

覗き込んだ窓の向こうに見える、仲睦まじい『親子』の姿がそう見せるのだろうか?

「――――あのう、ソフィアさん。あの人、ボクの記憶では昨日ヨミさんと大立ち回りをした格闘技を着た女の人―――では無いですよね?」

「現実を直視出来ないのは分かるけど、あのマリチカ本人よ」

「へえ~~~」


もう一度確認してみる。すると、そこには桃色のエプロンをした女の人が、優しいお母さんのような顔で赤ん坊を抱いて微笑んでいるのだ。

顔だちはとてもよく似ているけど、きっと他人の空似。双子か何かだろう。

一目見て、これはソフィアさんのたちの悪いドッキリに違いないと確信。


「悪い冗談はやめてください」

「この子、真顔できっぱりと言い切ったわ。あたしの評価がよく分かる反応ね」

「何をいまさら」

昨日、さんざん人をからかっておいて、何を言っているのだろう? この人は……

そのお母さんの隣には、これまた優しそうな顔した、目鼻の整った綺麗で格好良い夫が同じように赤ん坊をあやしていた。


「あら? お客様ですか。まあまあまあ、ソフィアさんと、昨日初めてお会いしたアマノさんじゃありませんか」

窓から覗きこんでいる二人の不審人物に気づいたようだ。

一瞬、怒鳴られるかなと思ったんだけど、優しく手招きされてお茶まで御馳走されてしまった。

夢とうつつの狭間にいるような気分で、お茶の味なんて全く分からなかった。



気がつくと、マリチカさんお手製のクッキーを片手に、ソフィアさんたちの家へと戻っていた。

「―――はっ! ココはドコ? ボクはダレ?」

このクッキーは何だ? 昨日の豆大福も美味しかったけど、これはこれでとても美味しいんだけど、何かが納得出来ない。

「ここはあなたに宛がった部屋で、あなたはアマノ。なに、お約束のボケをかましているの?」

「あっ、ヨミさんっ!」

ボクの疑問に答えてくれたのはヨミさんだった。何時から部屋にいたのか、振り返ったボクに軽くツッコミを入れてくれた。

「またボケたこと言って。あたしはソフィア。姉妹で似ているからって失礼ね」

確かに、二人は姉妹でとても似ている。似ているのだが、何故か私には彼女がヨミさんにしか見えない

「やだなヨミさん、私をからかっているんですか? 髪の長さや胸の大きさなんて、カツラやパットがあれば誤魔化せるじゃないですか?」

『あっはっは』と、朗らかに笑う私に、ヨミさんはジト目で返してきた。

「あかんわ、こりゃ。一人称まで変わってるし。こうなったら、ショック療法しかないか」

一体、この人は何を言っているのかしら。そんな事よりも、私はこのクッキーに合うお茶でも淹れようと自分の部屋から出て―――

「ていっ!」

―――出ようとして、いきなり後ろから胸を鷲掴みされた。

しかも、痛くせず、かと言って、くすぐったくもない絶妙の力加減で揉まれながら。


「いったい何をするんですかっ!!」

反射的に腕を振りほどき、体を回転させながらひじ打ちを繰り出す。

しかし、それはあっさりとかわされてしまった。

「ちくしょ~~! ――って、あれ、ソフィアさんどうしたんですか?」

「ようやくこっちに戻って来たか」

何やらため息を吐いているんだけど、どうしたんだろう?

しばらく間記憶は戻らなかったんだけど、お茶とクッキーを頂いていると、だんだんと思い出してきたのだ。


「あの緑茶モドキって、凄い効果があるんですね」

「あれは、性格を変えると云うよりは、本人も気づかない温和な部分を表面に出す薬だからね。だから、あの姿もマリチカの本質の一つなんだけどね」

あれはもう、二重人格と言って良いと思う。あれはそっくりさんだと言われた方が説得力はあるのだから、凄いよね。もっとも………


「一番びっくりだったのは、あの人にあんな優しそうでキレイな旦那さんがいた事ですかね。その上、一児の母だっていうんだもん」

世の中、色々とおかしいよね。やっぱり、この世界はやらせと茶番で回っているんだなと実感する事実でした。

「そこまで思わなくてもイイのに……」

「だから、何でソフィアさんはボクの考えている事が解るんですか!」

この人の能力の正体は、結局解らないまま、一日が経ってしまった。

これが解明される日は、何時になったら訪れるのだろうか………


「そんな事よりも、あたしはこれから三日間ぐらい一人で作業に入るから、部屋に入って来ないように。

その間の食事は、台所や地下室にある貯蔵庫にある物を使って自炊して頂戴」

「はあ、分かりました」

一体、これからどんな作業に掛かるのか教えてはくれなかったけど、その決意に満ちた表情から何か大きな事をやるんだろうなってその時は思いました。

「すでに過去形で話しているわね」

「いえ、その決意にあふれる顔があまりにも胡散臭いんですもん」

さきほど、快眠の足のツボについてコメントに発言がありましたのでその場所を説明しますと、両方のかかとの中央辺りです。


次の更新で第一章が終わります。更新時期は、これも明後日の夜の十一時か十二時になると思います。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 出来れば教えてくない。誤字ですか? すごいなー。まさに小説ていう感じの構成、表現ですよね
2019/11/12 09:24 退会済み
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