太陽さんは、雷さんと出会った。
巫「この日は冴えわたる星々が綺麗だったよ。星月夜だったから、私の目では周りがよく見えるぐらいの明るさはあったんだよね。
私もおいしい物は好きだから、太陽の気持ちがよく分かる……」
伝「今までにない長セリフ……あなた、本編ですぐに退場したから前書きで目立ちたいとか思ってる?」
巫「そういう訳じゃないけど、この時は特にやる事がなくて星を眺めていたんだ」
太「やる事がないって、やっぱり飛ばされた先でノンビリしていたんですね」
巫「一人でも大丈夫だと思ったから、その証拠にほら、本当にピンチの時には駆けつけるじゃない?」
太「そう……なんでしょうか? 今一つ、実感があるような、ないような……」
巫「わっはは、はっはっは~~~~」
伝「何かしら、この異様なテンションは? 三日間で何かあったの?」
雨が降りそうだなと空を仰ぐ。聞こえるは、ソフィアさんの叫び声。
何だろうと、振り返ろうとすると、何かが身体を貫いた。
「――――――っ!」
脳天から身体の表面を、何かが走り抜ける。衝撃が強すぎると、悲鳴を上げる事さえ出来ない。実際に頭の中では、ただ???が埋め尽くされているだけ。
「あっ、もう二・三発きそうだね」
こっちはもの凄くテンパっているのに、それに反して能天気なソフィアさんの声。
「(あんた、さっき心配そうに叫んでたよねっ!? 何、落ち着いちゃってるのっ!!)」
一言ぐらい何か文句でも言ってやりたいけど、衝撃で声が出ない。
「――――何を言ってるのか、サッパリわかりません」
両手をあげて、お手上げのポーズを取るソフィアさん。何だか、とっても腹が立つ。
三度の衝撃が自分を襲う。そろそろ、日本なしで立っているのも辛いかも………
………意識が薄れる瞬間、自分が倒れる音は聞こえなかった。
真っ白に染まる視界。力の入らない身体。自分がどんな状況なのか判らない。
――――――
「――――あれっ?」
目を開けると、ボクは道の真ん中に倒れていた。
「え~っと、何があったんだっけ? ボクはどれぐらい気を失っていたんだ……」
地面に触れていた頬がとっても冷たい。というか、汚い。
嫌だなと思いながら、とりあえず立ち上がろうと四肢に力を入れる。
すると、誰かが自分の傍に座っているのに気づいたんだ………そう、座って―――
「大丈夫? 雷が三回ぐらい落ちたけど、傷一つないわね? さすがは、リンの創った装具だわ」
―――座って……ボクのお尻を触っていた。
「ぎゃ~~~~っ!!」
飛び起きながら、反射的に回し蹴りをするけど、軽くかわされた上にバランスを崩してまた倒れた。
「あらあら、そんなあられもない恰好で、スカートの中が丸見えよ?」
「――――っ!?」
どんな姿勢なのか細かい描写は省きますが、蹴れなかったのはくやしいがとにかく立ち上がろう。
「う~~~~~~っ! ソフィアさんっ、人が気絶している傍で何をやってるんですかっ!」
撫でられた感触がまだ残っているお尻を庇いながら、涙目で抗議をする。
「何って、介抱という名のセクハラをしていたんだけど?」
「うわ~~~っ! この人、自分の下心を隠すつもりが欠片もないよ~~~~っ!」
前々から思っていたけど、この人って妙に男気と云うか潔いところがある人だよね。
「実際、ボクはどれぐらい気を失っていたんですか?」
「大体、三日ぐらいかな?」
「いやいやいや、それはないでしょ? せいぜい、数分ですよね」
「それがそうでも無いのよね。何しろ、この辺りで作者?が具合を悪くして、三日ほど筆が止まっていた所だから。あたしは三日間、あなたのお尻を堪能したわ~~」
「すみません、何を言っているのか、サッパリわかりません」
―――などと、訳の判らない会話を挟みながら、ボクは現状を把握すべく辺りを見回す。
この現象は、どうみても誰かの仕業。…というか、他の神にやられたと考えるのが妥当だった。
「一体、誰だよ~~。ボク、まだ誰にも恨まれるような事はしてないのに~~」
「……それはどうかな(汗)?」
何やらソファアさんが訳のわからない事を喋っているけど、服に付いた埃もそのままに周りを見回す。
―――が、暗くてよく見えない。
「おかしいな。ボクってこんなに視力が悪かったっけ?」
あまり、夜間に外出した事がないから比べられないけど、もう少し夜目がきいていた気がするんだけど?
「太陽の神になった弊害かしら? 日の入りで弱体化するのかな」
「うわ~~、それって致命的じゃないですか」
思わぬところで自分の弱点を発見ちゃったよ~~。
「まあ、弱点といってもそれ以外には何も支障がないか……あれっ?」
「これは、足音かしら? 何か草が地面と擦れるような音がするわね」
暗がりの向こう側。見慣れない服装で、誰かがゆったりとした足取りで近づいてくる。
身構えていると、十メートルぐらいの距離を置いて、立ち止まった。
相手の顔は……薄い布で上半身を覆っているので見えない。
「昨日の返礼として、軽く放ってみたのですが……」
「………」
「浅手は負うと思ったのですが、案に違えましたか」
「……………?」
何だろう? 何を言っているのか何となく判るんだけど、確信が持てない。
古風と云うか、時代と国が違うと云うか、対応に困る人だな。
―――それが、ボクが初対面で彼女に抱いた印象だった。
「あれは、あなたがやったんですか?」
「ええ」
あっさりと認める相手に、ボクは色々と言いたい事があるんだけど、どれから言ったらいいか判らない。
あれだけの事があったのに、ボクは無傷だった。
実質的な被害と云えば、着ていたローブが………ローブが…………
「ああっ! ローブが焼け落ちてる………」
「アマノちゃん、今頃気が付いたの……」
もちろん、中の服は……装具の方は無傷だ。
いや、確かに裸よりはマシだけど、マシだけどさ~~~~
しかし、問題は……問題は、別にあるっ!
「今夜は月が出ていないから、ハッキリとは見えないんだけど……可愛らし~~~い服ね」
「うわっ~~~~~! よりによって、Sっ気全開の人に見られた~~~~~っ!」
ソフィアさんの、ホントに楽しくて愉快そうで、意地悪な笑み。
これが自分の深層心理だなんて信じられないと、恥ずかしさで悶え苦しむ。
「まあ、いいじゃないの。世の中にはイイ歳してファンシーなキャラクターグッズを買い漁る人だっているんだから、あなただけの嗜好じゃないから。安心して」
何を安心すればいいのか、ポンポンと肩を叩く。軽く叩いている筈なのに、叩かれる度に地面に突っ伏しそうになる。
「そりゃ、自覚があれば開き直る事も出来るけど、どう考えてもボクにはそんな趣味が無いですよっ!」
確かにボクだって、小さい頃はこういう類いの物を好んでいた時期もありましたっ!
だけど、年齢が二ケタになる前には卒業したと思ったんだよっ!
――――もしかして、もしかしてだけど、それが表面だけで深層心理では……
「違うんだ違うんだ違うんだ違うんだ…………」
ボク自身に言い聞かせるように、何度も何度も同じ言葉を繰り返し呟く。
そんな様子を、まるで冤罪に苦しむ囚人を見つめる真犯人のような、意地悪な笑みを浮かべるソフィアさん。
「………そろそろ、宜しいですか?」
「んっ?」
「…………あれっ? そういえば、あなたと話している途中でしたね」
随分と醜態をさらしたと思うけど、律義に待ってくれているよ。
それにしても、誰なんだろう、この人は?
何処かで……何処かで会った事がある気がするんだけど、思い出せない。
「何となく、コチさんに似ている気がするんだけど?」
「それって、同じ黒髪だから?」
「彼女、黒髪なんですか? やっぱりよく見えないんですけど、いえただ、雰囲気がそうだなって思ったんです」
この暗がりの中で、薄衣を挟んでよく見えるなと感心していると、相手から不機嫌そうなオーラを感じて、慌てて視線を向ける。
「ごめんなさいっ、先をどうぞ」
自分でも失礼な態度だなと思いながら、相手のご機嫌を伺う。
不機嫌そうなオーラとは対照的に、彼女の物腰は静かだった。
「わたくしの名はナルカミ。新たな天日の神を調むために、此処まで渡って来ました」
その物腰が、何とも恐い感じがするんだけどね。
「別に、来なくてもイイんですけどね。ハッキリ言って、迷惑です」
「それ故に、あなたの力を試させて貰います」
「いえ、遠慮させて貰います」
ボクとしてはさっさと帰って、ご飯を食べて寝たいのだ。
どこかに飛んでいったヨミさんも探さないといけないし、
―――ていうかこの目でどうやって帰ろう? 明かりがなければ本当に前が見えない。
「これを見初めても、同じ事が言えますか?」
彼女は袖?の中から出したモノを見て、ボクの視線は釘付けになった。
「それはお菓子っ! それも、まだ食べた事がない『和菓子』っ!」
それは夢見ながらも、ちょっとお高くて手が出なかった『和菓子』。
包みから取り出されてそれは、恐らく豆大福と呼ばれるモノだろう。一体、何処でそれを手に入れたのだ?
「目が見えないんじゃなかったっけ?」
「ソフィアさんは、黙ってくださいっ!!」
「………甘い物への執念か。彼女があれを持っているのは、あいつの入れ知恵かな?」
外野のうるさい声は無視して、ボクは敵意にも似た感情を向ける。
「暖簾を下ろす頃だったので、安く手に入りました」
「そうか~~~っ! その手があったか~~~っ!」
「心の底から絶叫してるわね。何かあったのかしら?」
そうと知ってれば、あの時……いや、止めよう。もう過ぎ去った話だ。
「これを欲しければ、わたくしと手合わせして頂きます」
――――大切なのは、過去ではなく未来だ。
要約すると、いかにあの豆大福をゲットするかなんだけど………勝算あるのかな?
・返礼 仕返し
・浅手 浅い傷
・案に違う 予想外
・調む 調べる
・手合わせ 勝負
・星月夜 月が出ない夜。つまり新月であり、星が月のように明るい時に用いる言葉。
三日ほど開けたおかげで、体調が何となく戻りました。
次の投稿は、明日の夜の十時過ぎになります。




