来ないでも良いのに、悪夢が訪れました。
伝「この時はどちらかと云えば、ゴスロリじゃなかったっけ?」
太「そうでしたっけ? 迷子の猫を探していた時は、猫みたいな服を着させられてた記憶があったもので……」
伝「ほとんど、着せ替え人形みたいだったね。でも、楽しかったでしょ?」
太「楽しいというか、途中からヤケクソになりましたからね」
伝「女って、開き直ると強いわよね。制作者によると、ジャンルがプリティーでファンシーに固定されるだけで、それ以外の要素は本人の意識が反映されるらしいわよ」
太「いや、確かにそう聞きましたけど、ど~しても信じられないんですよね」
伝「信じる信じないは、あなたの自由だけど。話は勝手に先に進んでいるわよ」
「どうして、教えてくれなかったんですか?」
アトリエの奥にある脱衣所で、ボロボロになった服を脱ぎ捨てる。
借り物の服だったんだけど、これはもう捨てるしかないだろうな。
――――幸運な事に、下着だけは無事だった。
「あまり他人の下着を履くのは、抵抗があるからね」
今履いている下着も借り物なんだけど、一応、新品を買って貰っている。
脱衣所に入る前に手渡された紙袋。
中にはコチさんが出発する前に注文した(どうやって?)物が。
ボクの寸法に合わせて作られた特別な装具(服とアクセサリー)。
それに神具と呼ばれる力を安定させてくれる武器。とてもありがたいモノ。
「サプライズプレゼントよ。その方が面白いじゃない」
ツルツルと滑らかな素材。薄い黒の無地。
特殊な縫い方をしているのか、縫い目が全く見えない。
まるで、爬虫類の皮のようだ。だけど革製ではなく、布製だ。
「見た事が無い生地。さすがは神の為の服」
「そりゃそうよ。お高いんだから、その生地は。完全な防水加工で水着の代わりにもなるんだから」
「いや、そんな必要はあまりないと思いますが……」
新しく渡された服の袖に腕を通す。最初は少しブカブカしてた筈なのに、腕を通した途端に身体に合わせて収縮し始める。
着込んでみると黒い服はまるで身体の一部のように違和感なく全身を覆ってくれる。
この状態だと、あまり着込んでいるという感じではなく下着と大差ない。
「これを付けると、自分の想像通りの服が再現できるって、嘘臭いキャッチフレーズだったけど、ホントにそんなモノがあるのかな?」
最後に両腕と首に赤い石が埋め込まれたブレスレットとチョーカーを。その三つの赤い石に力を込めると自由な服を形成出来るとの事。
神の力を持っていなければ、服として機能しないただのアクセサリーと化す、特別製の奴だ。
「どんな服が出来上がるかは、本人の潜在的な願望が現れるっていうけど……」
ボクの願望ってどんな形だろう?
やっぱり、動きやすくて派手なようで派手でも無い。露出の少ない奴なんかが良いかな。
――――うん。
ボクは精神を集中すると、三つの石に力を込めてみた。
………アマノっていう子が脱衣所に入ってから、ワタシはソフィアからこれまでの経緯を簡単に説明して貰った。
――――その状況は、一言でヤバイという事だ。
「彼の国の神ねえ。彼がそこまで怖がるなんて、一度会ってみたいね」
彼と知り合ってから七年近く経つが、彼のビクビクする姿は見た事が無い。
恋人でもあるソフィアからしたら、珍しい姿でもないかも知れないが。
「あたしもまだ会った事ないから、観察対象として一度顔を合わせてみたいわ」
薬臭い調合室を出て、生活空間である居間へ。
その最中、何度か軽いボディタッチを試みるが、全て棺桶でガードされた。
ヨミ君は、あの状態でも寝続けているんだから、不思議な生き物だ。
居間の隣が脱衣所になっており、ワタシとソフィアはそこで湯呑みを片手にまだ見ぬ神に話の花を咲かせていた。
ちなみに、飲んでいるのは緑茶である。
さっきまでは紅茶を飲んでいたんだけど、そればっかりだと飽きるのでこれにした。
―――などと、二人には説明してある。
お茶受けには長期保存が出来る醤油せんべいだ(長く放っておいて、シケる寸前だった)。本当なら羊羹とか甘い物が良かったんだけど、作るのが面倒くさかった。
これで畳にコタツでもあれば良いんだけど、生憎とこの家にそんなモノは無い。
普通のテーブルと椅子に座っている。
「今年はなかなか雪が降らないわね。もう冬至も過ぎたっていうのに」
「冬至だからって、雪があるとは限らないでしょ。子供は喜ぶけど、実際に降ればただただ面倒くさいし。ただの雪って調合の材料にならないし」
「ただの雪じゃない、高山の貴重な雪を持って来てという依頼は、金輪際無理だからね」
「あっはっはっはっは~~~~~」
状況としてはマズイ筈なのに、世間話に花が咲いている。
――――だから、ワタシは大事な事を尋ねるのを忘れていたんだ。
「………つかぬ事を訊きたいんだけど、あのアマノって子。クマさんやウサギさんは好きかな?」
「いきなり、何を言い出す?」
「いやさ。コチ君のご要望で、ファンシーでプリティな装飾が良いって言うから、どんなに足掻いてもファンシーでプリティな服しか作れないように細工したんだよ」
「……………」
「―――――――――――――――ぐあ~~~~~~~~~~~っ!?」
ソフィアが絶句するのと、脱衣所から絶叫が聞こえたのはほぼ同時だった。
前書きを気にすると、文章が短くなりやすい。
次は、九時過ぎに投稿します。




