出会いは衝撃と共に
太「やっぱり、あの棺桶が全てを面倒臭くさせるんですよね」
伝「実際、あたしも不可能だろうなと思いながら、少し離れてついていったもの」
太「そうなんですよね。何でこの時のボクは気づかなかったんだろう?」
伝「それだけ視野狭窄に陥っていたんでしょ。それにしても、少し前から巫女ちゃんの声が聞こえないけど、どうしたのかしら?」
太「彼女なら、ずっと寝ていますよ。やっぱり、昼間起き続けるのはツラいって」
伝「やっぱり、一時間も持たなかったか。まっ、彼女が活躍する頃には目も覚ますでしょ」
罠から何とか抜け出し、よそ見をして倒してしまった棺桶を再び立たせ(結構な振動だった筈なのに、中の人は起きた気配なし。不気味です)、再びゆっくりとした足取りで進んだ。
「ぜえ~~~はあ~~~~はあ~~~~」
直線距離なら大した距離じゃなかった。
なのに、通常の何倍も時間を掛けてやっと家の前に辿り着いた。
ハッキリ言って、ボクは今ボロボロだった。どうボロボロなのか、詳細は省く。
「良かったわね。服がボロボロになっただけで」
「せっかく人が詳細を省いたのに、さらっと説明しないでくださいっ」
どうしてこの人は無傷なんだ? 可笑しいなと思ったけど、口にする元気も無い。
単刀直入に云って、今のボクは半裸だった。
描写すると恥ずかしかったから言わなかったのに、こんな恰好でどうやって帰ろう?
これじゃあ、服屋さんにも入りにくい。
「それじゃあ、呼び鈴鳴らすわよ」
軽く絶望しているボクを無視して、まるで何事も無かったように、門の横にある鈴を鳴らす為の紐を引っ張る。
チリンチリンという軽い音が響き渡る。すると、家の中から『ど~~~ぞ~~~、上がってちょ~~だ~~い』と、応対する声。女性の声だ。
「凄く元気のよさそうな声ですね」
「妙なテンションの声ね。働き過ぎておかしくなったかしら?」
「????」
口調そのものは普段と変わらず、様子もそんなにおかしくは無かった。しかし、その表情は変貌していた。一言で言うと、ゲンナリしている。
「額に青筋立ててますよ。口元もヒクついています」
何かイヤな思い出でもあるのか。その手がドアノブを掴んだり離したりを繰り返す。早く開けないんですかと視線を向けると、覚悟を決めた様子のソフィアさんはドアノブを回す。
「ソフィア~~~~、いらっしゃ~~~いっ」
まだドアノブを回しただけなのに、ドアを突き破っていきなり中から人影が飛び出してきた。その人影は真っ直ぐにドアの前にいるソフィアさんに向かって――――
「ふんっ!」
「ぎゃふっ!?」
―――抱き付こうとして、ソフィアさんに持って来た棺桶で横殴りにされました。
あの棺桶って、武器にもなるんだね。それでも、中の人は起きません。
ホントに死んでるんじゃないかな?
「なっ、何があったんですかっ? ていうか、誰ですかっ?」
「…………」
「…………」
二人からの反応は無い。玄関でうつ伏せになって倒れている人は、まるで死にかけの虫のようにピクピクしています。
そのピクピクも、やがてしなくなる………
「返事がないわね。死んじゃたかな?」
「―――って、こんな事で死んでたまるか~~~~っ!」
「おお、復活した」
死んだと思ってた人が、不屈の闘志で蘇る姿。横で見ていると、やっている人は真剣なんだけど、まるっきりコントだった。
「相変わらずの不死身っぷりね。元気そうで何より、リン」
「ちょっとしたお茶目なのに、本気で殴るなんて。あいたたたたたっ……頭が痛い……」
「そのちょっとしたお茶目で、ドアをぶち壊す人がいますか」
その事に関しては、ボクもそう思った。どうみてもあれば、本気の突貫だ。
こと非常識な人との接触は、既にもう慣れてしまっているせいか大して驚かなかったんだけど、次に続いた言葉はかなり以外なモノだった。
「全く……これが、大陸一の<錬金術師>の姿なんだから、情けないったらありゃしない」
錬金術師? 確か、会いに来たのは薬剤師さんだった筈。……これは、どうして?
「それは関係ないじゃない。ワタシにとってソフィアへの愛は他者への評価なんて関係なく貫くもので――――」
「ああ~~はいはい、ごたくは後で聞いてあげるから中に入れなさい。そこにいる子の神具や神装を取りに来たんだから、完成しているんでしょ」
「もちろん。こういうのは信用商売ですからね。期日は守る為にあるんだから」
「?????」
二人して訳の判らない話しを続けられ、こっちは完全に蚊帳の外。互いの口調からして、二人はとても仲が良く、過激なド突き漫才出来るぐらい理解し合っている。
若干、その愛情がいきすぎている感じがするけど、そこはもう目を瞑ろう。
それにしても、神具とか装備とか、聞き慣れない単語が聞こえる。どうやら、ボクの知らない所で話が進んでいたみたいだ。
――――それにしても、初冬に半裸は寒い。早く家の中に入りたかった。
「良かったわね。代わりの服が手に入りそうよ」
だから、それはとても嬉しいニュースだった。
少なくとも、その時のボクは心の中でガッツポーズをするぐらい嬉しかったんだ。
後々、この一連の出来事は、服がボロボロになったのも含めて、全部仕組まれた事なんじゃないかと疑うぐらい嬉しかった。
キリを良くしたら短くなった。18時過ぎにも投稿します。




