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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第一章 太陽さんの長い一日
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犯罪隠蔽をする会話

太「――――などと話していたのに、あっさりと彼の株がまた下がってませんか?」

伝「元凶はあなただけどね」

巫「何を他人顔で話しているんだ?」

太「いや、そうですけど、そうなんですけど。何だかとっても心の中で消化できないモノがあるんですよ」

伝「具体的に言うと?」

太「当時のボクがまるで、ただのお荷物な問題児みたいな言い方じゃないですか」

伝「事実だと思うけど。屋敷一つ燃やして何を言ってるんだいキミは?」

太「…………」

「ソフィアか……」

ずっと看病していた筈だが、一息入れに来たか。

水の入ったコップ片手に、こちらの対面に座ると、彼女もまた溜息を一つ。

「いきなりトラブルに巻き込まれるなんて。面倒事は回避出来るならしたいけど、無理なんでしょうね……どうするの?」

「…………」

今はとにかく、新しい神の装備を揃える事。そして、俺自身の休息と情報収集。


相手が俺の予想通りの奴なら、俺一人ではどう考えても勝てない。

暴走状態の彼女の力を見るに、潜在能力は俺よりも遥か上の筈だ。

彼女がまともに戦える状態なら、何とか五分に持っていけると思う。

最善なのは、もちろん戦わない事だ。

しかし、相手の事情が判らないのでは対策の立てようがない。ぶっちゃけ、出たとこ勝負だ。


「それにしても一体誰なわけ? ヨミの話だと、あんたの知り合いらしいじゃない」

知り合い……か。確かにそうだ。俺はあの人物の事を良く知っている。

だかこそ、出来れば会いたくない相手。強さなんて関係なく、ただ合わす顔がないんだ。

「………俺の国の神だよ。歴代の中でも、一・二を争う攻撃力を持つ。

猛る雷をその身に宿す者。敵対した相手を必ず消し炭にする。」

正直、俺なんかが相対しても瞬殺される。―――あいつが本気でやってきた場合だが。

相手が何を目的にしているか分からない以上、用心と準備は最大で行う。


「しっかし…………」

あいつの性格から考えて、他国の神に喧嘩を売るような真似をするだろうか?

こう言っては何だが、あいつの性格はまず自分から手を出すような真似は絶対にしない。ただ、降りかかる火の粉を振り払う為に軽く力を使うだけで、相手を黙らせる事ができ、それ以上の事はしようとしない。

なのに―――それがどうして、こんな事態を招いてしまったんだ? 


「ソフィア、要約して事態を説明するとだな――――――」

頭の中で整理した事柄。俺自身の予測。

また来るかも知れない襲撃に備えて、俺たちがするべき事。この段階にきてようやく、俺は彼女に説明出来た。

とりあえず今は、本人に悟られないようにしよう。

ヘタにパニックになられても困る。

そして、さんざん悩みに悩んだ末、俺は稲光を出した相手の正体も話した。

どうせ今隠しても、すぐにばれてしまいそうだったからだ。


「…………あんたの妹? そんなのいたんだ……」

「七年以上も会ってないから、確証はないんだけどな。一瞬、顔を合わせただけだし。

ただ、あの長い黒髪と肌の色。それに、年齢もだいたい十七ぐらいだった」

これで実は別人だったなんて事になったら、兄としては悲しいモノがある。

「どうして、会おうとしないの? 随分と恐がっているみたいだけど」

それは、素朴な疑問。当然の質問。的確な指摘。

そして、出来ればスルーして欲しかった事だった。


「俺とあいつは、まあ一般的ではないが仲の良い兄妹でな。器用貧乏な兄に、何でもそつなく完璧にこなす妹。

対照的な二人を、周りの人間は色々と揶揄したけど、幸運な事に兄は超が付くほどのマイペースさでな。全く気にしなかった」

「そりゃ、そうでしょうね」

「おう~おう、含蓄のある言葉だこと――――ほっとけ。

……両親は普通の性格だったのに、二人の子供はどちらも似ていなかった。

完璧すぎる娘に両親は手をこまねいていたが、マイペースな兄だけは普通に接していた」


そこまでだったら、どの家庭でもありえる普通のお話。

ただ、年齢が二ケタにもなっていない少女が、大人顔負けの博識さと弁論を披露するのは、驚きを通り越して周りを唖然とさせた。

「そんな妹が、神としての力を覚醒させた時も、周りは大して驚かなかった。ただ一言、やっぱりな、と。

兄もまた当然の事として―――いいや、良い転機だと思ったんだ」

何の転機だなんて、ソフィアは突っ込まなかった。


「兄は昔から、自分はどうして生きているのか、何をしたいのか判らなかった。色々な事に挑戦しては、ほどほどの成果しか上げられず悩んで、無気力な生活をしていた」

「贅沢な悩みね」

「――――だから、その想いは何時からか国の外へと向けられた。

外ならば、自分の生きがいを見つける事が出来るんじゃないかと」

妹はその時まだ十歳だった。一人残していくには不安な、だけど俺はもう十七で、男が独り立ちするには十分な年齢だった。

両親は普通すぎてあまり信用出来なかったが、神となった少女は厳しい修行の毎日を過ごし、様々な人間と交流する内に、ちゃんと自分の居場所を持っていた。


だから兄は、それを良い転機だと思ったんだ。

確認した事は無いが、周りの人間はきっと、立派過ぎる妹の傍にいられずに逃げたんだと、噂していたんだろう。

「心残りが無くなった兄は、一人で国を出る事にした」

「無気力な人生におさらばって………今も十分、無気力な生活送ってるじゃない? あたしがいなかったら全く仕事もしようとしないし」

「だから、身も蓋も無い結論を言わないでくれっ! ………だから、言いたくなったんだ」

もしも、妹が兄の現状を知ったらどうなるか………きっと、文字通りに雷が落ちる。


何しろ、出立の時にそれなりに格好良い事言って出て行ったんだ。

命がけの航海に、新天地での過酷な生活。神として覚醒もしたのに、その結果、何も変わりませんでした―――

「―――なんて、どの面下げて報告すればいいんだよっ!」

身体は疲れていた筈なのに、その瞬間は元気よく椅子から立ち上がり、両手にテーブルを叩いて叫んでいた。

そんな俺を、ソフィアは肩肘を付いて手に顎を載せながら、冷やかな視線を向けていた。


「……普通さ。昔は立派な人が今は落ちぶれていて、昔の知り合いに会いたくないって話は聞いた事があるけど、今も昔も変わらずぐ~たらだから会えないって………開き直るしかないでしょ」

「やっぱりか……やっぱりそれしかないのか。なんて……無情な世界だ」

「何を馬鹿な事を、握り拳作って言ってるの? マイペースなのがあんたの取り柄でしょうに。

そんな事を言ってる暇あったら、これからどうするのか具体的な話をしましょう」


あまりにも無慈悲な現実に、涙を流して悔しがっていると、再び彼女から冷たい指摘を貰った。

「そう……だな。これ以上遊んでいても仕方ないな」

「遊んでたんかいっ!」

「―――毎週俺たちがやっているお仕事。アマノには病弱な少女に薬を届けるという名目の元に、ちょっと過酷な試練を課そう。

彼女が起きたらリンの所に行って、薬と装備を貰って来てくれ。注文はもう出した」

普段なら俺かヨミがする仕事。だが、装備を取りに行くついでにやってもらおう。


その間、俺はとりあえず寝よう。体力を回復しないとまともに戦えない。

「名目と実態がかけ離れているわね。まあ、あれぐらいの事だったら大丈夫か」

最悪でも、死にはしないだろう。もしも昼間に遭遇したら、赤字覚悟でヨミに手伝って貰う手もある。

「だけど、どうして隠したりするの?」

「最初から全部を話したら、恐くなって逃げ出すかも知れないだろ。だから、土壇場でネタばらしをして、逃げられない様にした方が効率は良い」

「ああ、成程ね」


お互いに鬼畜と言うか、Sっ気が強いというか。マイペースで似た者同士の二人。

……そうだ、ヨミの奴。夜にならないと使い物にならない存在。あれをどう活かすか。

「ついでに、護衛にはヨミの奴を持っていけ」

護衛としては、何気に神である俺よりも戦闘力の高いトンデモ女。

扱いは少々難しいが、この際使えるものは何でも使わなければ生き残れない。


「持ってけって、また棺桶に入れて運ぶの? もう何度もやってるから、周りも不思議がらなくなっちゃって。何時か間違って人をやっちゃっても、それで運べば怪しまれないからしら?」

「知るか。大体、俺が人をヤッちゃったら。原型が判らないぐらいバラバラにして、庭に撒くわ。――――実際、そんな事態にはならないけどな」

どうしてここで、おこしてもいない犯罪の証拠隠滅の話題になるんだ? 

つまらない事を考えたせいか、頭痛がする。――――話を先に進めよう。


「これも不審がられないように、自然な流れで棺桶を運べるよう会話を運ぼう」

「どうやったら自然な流れで棺桶を運べるようになるのか、甚だ疑問ね。無理だったらゴリ押ししましょう」

どうゴリ押しするのか、それはソフィアの手腕に期待しよう。

「あと一つ、絶対に守って欲しい事がある。火事の原因を、絶対に本人にはバレない事」

あれだけ派手に暴走したんだ。前後の記憶が無くなっている可能性が高い。


「あら、隠しちゃうの?」

「ジジィの話を信じるなら、あの子は天真爛漫な性格らしい。

昔から、そういうタイプの人間は、隠し事は下手だと相場が決まっている。

―――知らないなら、知らないままの方が良い…………」

本当に意味もなく、思い付きで最後だけキザッたらしく決めてみた。

自分でやってみて結構ワザとらしいな思ったら、案の定、彼女からのリアクションは冷めていた。

「優しいんだか、打算的なのか判らないセリフね。……だけど、その考えには賛成よ」

―――どう考えても弁償出来ないから。二人して、その意見は共通していた。


バレなきゃそれは罪にならないんだよ。

どう考えても、犯罪者の典型的な考え方。しかしその時、俺たちにはそれ以外の選択肢など存在しなかった。

これが後のトラブルになるかが気にはなるが………

「ヨミの奴はどうした? 看病をしているのか」

「いいえ。館付近に落とした高級菓子折を回収しに行ったわ。無事だと良いんだけどね」

「ああ、そういえばそんな事もあったな。すっかり忘れてた」


男と違って女は抜け目が無いというか、しっかりしている。俺自身はかなり雑で無気力な人間だからな。

その辺り、二人には助かっている。

「あたしはこれからご飯作るけど、あんたはどうするの?」

「……彼女の様子を見てくる」

断っておくが、決して変な気をおこした訳じゃない。………ただ、何となくだ。

椅子から立ち上がってみると、足腰はもうしっかりしている。


彼女に背を向け、ゆっくりとした足取りでソフィアの部屋へ。

中に入ってみるとすぐに感じる、古い紙とインクの匂い。慣れていれば感じなくなるんだけど、いかんせん俺は本の類いには興味が無い。

ソフィアの奴はあれでいて、本業は学者をやっている。それでも普段の生活で、彼女から色々な話を聞かされ無駄に歴史とか詳しかったりする。


「どれどれ、まだ寝ているかな?」

「…………」

ベッドに近寄り、そっと寝顔を覗いてみる。

規則正しい息遣い。閉じられた瞼。寝顔はとても穏やかで可愛らしい。

「はあ~~~~~」

これだけを見ると、昨日の事が夢か幻じゃないかと思ってしまう。

俺がいつまで世話をするのか判らないが、もう二度と暴走してくれるなよ。

もう一度抑え込む自信なんて無いのだから。


精神を向こうの世界に送り続けていると、肉体に戻って来れなくなる。

あの時も、ギリギリのタイミングだった。

「飯が出来るまで寝てるか……」

これ以上ここにいても仕方ない。キッチンに戻って椅子の上で寝ていよう。

立ち去る背中に小さく『二人の子供…』と聞こえた。

明日は『天文学』の方を頑張ろう。

明後日になったらこっちに戻ろう。

基本的に、これからはこの二つを交互にやります。


まだまだ途中ですが、人物紹介などを作りました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どうやったらこんな文章が書けるんだろう。大丈夫ですよね。毎日読んでれば、そのうち、文章力つきますよね。うらやましい。
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