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東風と太陽~神話?はこうして創られる~  作者: 三神 凜緒
第一章 太陽さんの長い一日
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立派な神の心得 その一

太「ああっ、この場面か。無理やり一日で詰め込み授業をされた記憶があるね」

伝「あっ、もう復活してる。早かったね」

太「いや、よく考えたらあの頃はそんなに肉ついてなかったし、そんなに恥ずかしくなかったからなと」

巫「切り替え早いね」

太「さあさあ、話を横に逸らすのはそのくらいにして、この講義ってしばらく続いたっけ?」

伝「いや、次回はまた昨夜の火災現場に飛ぶわ。こういうのって、連続でやると話がだらけるから、やめておいた」

太「……そうですか。まあ、いいですけど」


「さて……それじゃ、内容を読んでみて」

仕切り直しをした後、改めて参考書のページを開く。内容は読む際の注意事項だ。

「はい……ええっと『序 これから記す11の心得。それらを幾つ守れるかで周りの評価が変わります。

0~3 ⇒あなたは悪評の立つ神となるでしょう。

4~7 ⇒あなたは平凡な特徴のない神となるでしょう。

8~10⇒あなたは好評な神となってしまうでしょう。

11  ⇒ ?????』」


参考書の中身はポイント制による性格診断のアンケートのようだった。

ご丁寧に下には1~11までの番号を振った四角いコマまである。ここに○や×を記入しろという事かな。

「本の中身は要点だけを簡潔に書いているから、足りない部分はあたしが解説しながら読みましょう」

「はい……」


どう答えていいか分からず、曖昧な言葉ぐらいしか出て来ない。

とりあえず、どんな内容が書かれているのか、パラパラとページを捲ってみる。

「渡されてからずっと気になっていたんですけど、この参考書の最後のページなんですけど、何ですかこれは?」

「ああ、それは袋とじね。ここに書いてるでしょ。他の全てのページを見てから、中を読みなさいって。ハサミを入れるのは最後にしなさい」

「雑誌みたいだですね…………」


見上げれば空は青く、雲一つなく、どこまでも澄んでいた。

まるで今のボクの心を写すようだ。何も考えていない。頭の中は真っ青だ。

――――こんな事で、ボクは本当に立派な神になれるのかな………

「何を呆けているの? ほら、次のページを朗読してみなさい」

――――――――

「え~と『心得1 神とは世界を変革する力を有している』………? 変革って、現状の国家体制を転覆させたり、大きな大陸を作ったり壊したり、冬を一瞬で春にしたりとか、そういう意味ですか?」

「ああ、それはね―――」

ボクは今、普通の精神状態で質問をしている。半日も経っていない筈なのに、もの凄く懐かしく、嬉しいのは何故だろう? 

思わず涙が出てくる………


「神の力を使えば、確かに大抵の事は可能になるわ。手から炎や氷を出したり、普通の人間よりも長生きが出来たり、老けずに歳をとれたり、それぞれに得意分野があって、全部を一柱の神だけで可能だとは聞いた事が無いけど、沢山集まれば可能でしょうね」

沢山集まればって、確か神は一国に一柱ずつしか生まれない。つまりは、無理という事。


「まあだけど、それはあくまで結果ね。本質は違う。

神っていうのは世界の設定を一部、自分の好きなように弄る事が出来るの。

そして、その範囲や大きさは個人差がある」

一言で言うと、才能の違いによる差という事かな。まあ、それぐらいは予想していた。後はそれに努力を重ねるんだろうけど………

「彼は――コチは神の中では中堅ぐらいの力を持っていると本人は言っているわね。

得意なのは大気や風を操る事。つまりは、空間をある程度自分の思い通りに出来るみたいね」


空間を操るって、良く分からないけど凄そうな力だ。

初めて会った時は疲れているような寝ぼけた顔してたけど、普段はもっと格好良いのかも知れない。

「ボクが最初に使えた力は火でした。指先からロウソクぐらい小さな火が出て来て。一瞬でボンッと火が大きくなって―――――部屋がまる焼けになりました」


その後……その後の事は思い出したくもない。色々と大事な思い出の品とか燃えてしまった。

力の制御なんて全く分からないまま過ごすのは、やっぱり恐い。

――――それが原因で、ボクは今ここにいるのだから。


「神の力を、知り合いの錬金術師は<星を動かす力>なんて呼んるわね。まあ、多分占星術から来ているネーミングでしょうけど、御大層な名前だって彼は気に入ってるわ」

錬金術師って……変わった知り合いのいる人だと思った。噂は聞いていたけど、本当に存在しているのかな。

ボクが興味津々な顔で見つめていると、軽く笑みを浮かべるだけどそれ以上喋ってくれなかった。ただ一言『大丈夫、すぐに会えるわよ』と


「脱線したわね。………ただそんな神でも一つだけ絶対に出来ない事がある。それは、世界を一から想像し、創造する事。神はあくまで現存する世界の一部をちょっと弄れるだけ。それ以上の事をしようとしたら、神以上の存在にならないとね」

「神以上の存在なんて、いるんですか?」

「いるんじゃない? 多分」

神以上の存在。それが何なのかも、ソフィアさんは教えてくれなかった。

――――――

「次は……『心得2 神は自らを神と称してはならない』―――秘密のまま、コソコソッと活躍してれば良いの? それって……」

報われなさそうというか、どうしてそんな事やってるのか、理解に苦しむ人種になれと、この本は要求しているのかな。

結構歩いていると思うけど、未だ隣町は小さくしか見えない。


「これは幾つかの理由がある。一つは、神は基本的に大衆に知られない方が動きやすいから。バレると色々面倒なトラブルに巻き込まれるからね。後は、まあ偽モノが現れないようにする為の予防策」

立場ある、力ある存在にとって、それは不可避な問題。ホントに面倒な話だよ。

ボクの代わりに棺桶を引っ張ってもらっている。

多分腕力はボクよりも上な人は、平気な顔で説明を続ける。


「どの時代にも現れるのよ。自称神様という奴はね。手品を使ってそれを神の力だと偽って。つまらない詐欺を働く奴がね」

手品を使ってって……つまりは、大衆には力を持っているだけじゃ、本物か偽物か区別がつけられないって事?

「それじゃあ、どうやって神は自らを証明するんですか?」

「神は昔から、言葉ではなく行動によって自らを主張しなくてはならない。ちゃんと堅実に行動していれば、その内認知される」


「もう一つは、自衛の為かしらね。力が安定していない新人は、他国の神にとって格好の餌食だからね。強くなるまではあまり派手な事はしない方が良い」

信頼出来る他の神に教育されるのが、通例なのもその為。教育期間中はその神に守って貰うようだ。

もっとも、その神は今ここにはおらず、ベッドの上で寝ているんだけど。

何でも、マル二日寝ていないんだそうだ。

その間、二つも厄介事を解決したとか……もちろん、その一つはボクを火災現場から助けてくれた事。


「つまり………」

具体的にやる事をまとめると、皆の信頼度を上げるには行動して成果を出さなければならない。

なのに、その行動は出来るだけ秘密裏に行った方が良い。

難しい注文だ。神って謎のヒーローみたいな存在なのかな? 

色々と理由を教えられたけど、個人的には最後に聞いた理由が一番実感してしまった。

「色々と何だかんだ理由が並ぶけど、最大の理由は、神が自分は神様だ、神様だ、敬いなさい、なんて言ってると、周りが煙たがるから」

「ああ、それは何となく理解出来ます」

――――――

「次は……と『心得3 神は不老でも不死でもない』―――あれっ?」

何か違和感のある、矛盾した内容。

もうしばらくは、町に着きそうにない。歩き疲れたなんて言わないけど、本を読みながら長時間歩いた事が無いから、ちょっと首が痛くなってきた。

「さっき、得意分野であれば不老不死になれるって言ってませんでした?」

「なれるわよ。だから注意事項として記入してるの。深く考えずに実行したりしないようにね」


つまり、クギをさす為の項目。これを守らないと、どうなるのかな? 若いまま、死なない肉体。生物にとって理想であり、夢だと思う。

今までにない真面目なソフィアさんの表情。それはこの心得がそれだけ大事だという事だ。


「不老と不死。これを一度も望んだ事のない人はいないでしょ。現世に満足している人間なら尚更ね。――――幸か不幸か、神にはそれを可能にする力がある」

「幸か不幸か……どっちですか?」

「問題は不老と不死では全く別の力だって事。不老になれば肉体だけが滅びず、精神が滅び、逆も然りだ。中途半端な状態で現世に残ると大変だぞ」

「それってつまり、生ける屍になったり、精神体(幽霊)になるって事ですか?」

「まあ、そういう事ね」

それは絶対にヤダな。間違ってもそれだけはしないでおこうと誓う。

――――――


「次のページでは『心得4 神は王ではない』―――他の土地では知りませんけど、この大陸では王はいませんよ。国の枠組みや法律を形作る人たちはいますけど」

もうすぐ近くに町が見える。この講義は他人に聞かれる訳にいかないから、多分これで最後だろう。

王制を敷いている国―――歴史を少し学べば誰でも知っている。それは過去の異物。


大陸の外に目を向ければそのような国は沢山ある。だけど、個人的な感覚でいえば、文字通り対岸の出来事で王制の敷かれた国には実感がない。

「神の力を持っている人は、無駄に強いからね。昔は神が王になる事はそれほど珍しくなかったのよ」

それは想像に難くない。何だかんだで、力こそが正義なのが世の摂理。

強大な力を持った神は、人間がどれだけ束になってかかっても太刀打ちは出来ない。


「ただ、神になった人って奇人変人ばかりでね。

これがまた、高確率で国が傾くんだよ。何より、神の素養は遺伝で受け継がれる訳じゃないから。

世襲制をしようにも一代で終わる。それで不老不死になろうとして悲劇を見た神も沢山いた」

何というか、王になった神って踏んだり蹴ったりの人生だと思う。間違っても、このような結末だけは迎えたくない。


何となく、頭の中でコチさんが王様になった国を想像してみる。

一瞬で、無理だなと悟る。怠け者の王では国が栄える筈がない。

「強い力を持てば、粋がって増長するのは人の性。何事も分相応を心掛けろという事だよ」

四つ目の心得はその言葉で終わった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 簡潔でわかりやすい説明、ところどころにちりばめられユーモア、楽しいです。ありがとう。
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