昨夜の現場に戻ります
伝「皆様、火災現場に到着しました」
太「いきなり、翌朝に話が飛びましたからね。これって、時間軸では一話目の続きになるんですよね」
伝「そうなの。長い前置きすみません。色々編集したらこうなっちゃった」
太「ボク…この時の記憶がさっぱりないんだよね。何があったんだっけ?」
伝「たしか……東風が言うにはフルヌードが拝めたとか」
太「ぎゃ~~~~~!」
本来なら静寂に包まれている筈の村の夜間。
轟々と派手に焼け落ちる館。
突入しようと駆け出し、俺は背中に背負っていた神具を――愛用の弓を取り出して、大気を圧縮して作った矢を玄関に向かって放つ。
扉を粉砕した矢はそのまま向こう側の窓を貫通。
すると、矢が通った場所には火が無くなり、通れるようになる。
「玄関に人がいたら、一緒に粉砕してたね」
「こんな状況下で、お行儀良く玄関から出る奴がいるか」
砕けた扉を乗り越え、炎渦巻く館の中へと入る。
中は熱風渦巻き、息をするのも辛い。
侮っていた訳じゃないが、予想よりも炎の勢いが強い。
「俺の風で、完全に熱を遮断出来ていない。あまり長居は出来ないか。
ヨミ、生存者の気配を感じるか?」
こういう状況だと、野生の感性が発達しているヨミの奴に訊いた方が早い。
しかし、彼女からの反応は鈍く……遅いモノだった。
「反応はある。二つ。左側の上の階。だけど……」
だけど何なのか――続きを聞きながら、曲がり角でもう一度矢をつがえ左側の廊下の天井部分へ射る。
悠長に階段を上っている暇はない。
崩れた天井の瓦礫を足場に二階へ躍り出る。
「その二つから、とても…とても強い力を感じる。これは……神の気配だ」
「神が二柱も? どういう事だ……」
二階の廊下は一階以上に炎が激しい。矢を数本同時に射て、ようやく息が出来るようになった。
「火元と思しき場所と、二柱の神がいる場所が同じ」
やはり、火事の原因はその神たちにあると考えるべきか。
見上げれば崩れた天井部分の隙間から、先程までなかったなかった暗雲が空一面に立ち込めていた。ゴロゴロと不吉な音まで一緒。
「両者から激しい殺気を感じる。多分、戦っている」
その言葉に応えるように、砕けた天井の隙間から見える黒い雨雲が一瞬光ったと思った瞬間、稲妻が館の一室を轟音と共に直撃する。
その部屋は俺がいる所からすぐ近く、斜め向かいにある。
「イヤな予感しかしない。ホントに回れ右しようかな」
「馬鹿なこと言ってないで、行きますよ」
後ろから追いついて来たヨミが、呆れたような眼差しで袖を引っ張って件の部屋を指さす。
炎だけだったら、そんなにビビらなかったんだよ……だけど、あの稲光だけは頂けない。
「俺は昔から、雷が怖くて嫌いなんだよ」
みっともないよう、力強く握り拳を作って言ってみた。
すると何故か、ヨミの呆れ具合はますます深まってしまった。
「仮にもコチは神の一柱でしょ。見え透いた嘘言ってないで、突入するよ」
思い返せば、こいつとは長い付き合いだから、夜の嵐の中で強行軍する羽目になった時、俺は確かに雷を怖がらなかった。
「いや、自然の雷だったら全然怖くないんだよ。問題はその雷を発生させた人物が―――」
などと言い訳を重ねながら、ズルズルと引き摺られる俺。
こんな状況下でも、いたって平常心な彼女の精神力は驚嘆に値するよ。
どう言い訳すればその手を離してくれるのか、試行錯誤しても思い付かない。
―――そんな俺の願いが通じたのか、その部屋から黒い影が飛び出した。
一瞬だけこちらと視線が交差する。
そのまま外に飛ばされ、瞬く間に姿を消した。
「それじゃ、行くか!」
「ヘタレがいきなり元気になったね。さっきの人……知り合い? コチと同じ黒髪の人だったけど、同国の人?」
「はっはっはっは………」
乾いた笑みが自然と浮かぶ。
答えるには時間が無いからそれは後回しだ。
………間違っても、答えると色々と情けない奴だと思われるから、今はとりあえず誤魔化そう―――などとは、思っていない。
「まあ……いいか」
詰め寄った所で情報が引き出せないと思ったのか、最初から興味がないのか。
それとも、後で油断した所をいきなり聞きだしてみようと考えているのか……
色々と考え事をしながら部屋を覗いてみる。
予想では、神の新人さんがいる筈だった。
結論から言ってしまえば……確かにそれは存在していた。
――――問題は、その神が暴走状態で力を放出し続けているという事だ。
「どおりで、あいつが負けるわけか………」
新人でありながら、俺よりも遥かに強い力を放出し続けるその姿に、本気で帰りたくなった。




