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April 9th,6



「希!」


「大丈夫かおい!?」


勢いよく開かれた扉に入って来たのは椿と和也だった。二人とも全速力で来たのか汗を掻いた姿でぜえはあと息を切らしながらベッドに座っている希に駆け寄ってくる。ここで希はフェンリルの存在を思い出して慌ててフェンリルに隠れるように指示を出そうとしたがもう既にフェンリルの姿は無かった。


「ああ、大丈夫だよ。もうこの通り起きたり出来るようになったしさ」


さり気なく確認を終えた希はほっとしながらも駆け寄ってきた二人に驚きながらも苦笑しつつそう答えて両手を小さく振ってみせる。それでも椿と和也の二人はまだ焦ったまま包帯が巻かれた姿の希を見ている。希は二人をどうにか落ち着かせようと何か話題を振ってみた。


「二人は大丈夫だった? ケガとかはしてない……?」


「おう、俺達は大丈夫だぜ! 安全な場所にいたからよ……その後全員下校になって帰ってすぐに病院に全力ダッシュで来たんだよな!」


「……自宅待機で外出ちゃダメって言われたでしょ多分」


「言われたがな。じっとしていられると思ったか?……しかし、無事で本当によかった」


希がそう聞くと和也は軽く笑いながらそう言い、椿はじっと希を見つめながら緩く首を傾げ、それからほっとしたように深く息を吐いた。希は苦笑しながら「ありがとう」と二人に言って頭を掻く。

ここで笑っていた和也は「にしてもよ」と言って笑うのを止めて深刻な表情になる。


「あの化け物、一体何なんだ?……急に襲い掛かったりしてきたしよ」


和也は腰に手を当てて二人にそう言って唸った。それは今日学校に現れて戦った魔物、ガルムの事だった。和也も椿も、魔物の存在を知らない。もちろん契約者の事も。自分は知っているが「あれは魔物なんだ」とか言っても二人とも信じないだろう。希はあえて黙って話を聞きながら首を傾げておく。


「あの化け物が変死事件の犯人と言っていい。……おそらくあの狼型の他にも多くの種類の化け物がいるだろうな。入って来た狼の化け物の動きを見る限り、人を焼け焦がしたり出来る様な奴じゃない」


「……うん、あの化け物は爪とか牙とか体当たりとかで攻撃してきたんだ。炎とかそういう魔法みたいなのは使えないみたいだった」


椿も腕を組みながらぽつぽつと喋り始める。希は頷きながら答えつつ、全て当たってると心の中で呟いた。二人が来る前に神奈は言っていた。「色んな種類の魔物がいる」「変死事件は全て魔物が関係している」と。椿はガルムを見てすぐに気付いたようだ。手塚椿はスポーツ万能で頭がいいだけでなく勘も鋭い。観察力も状況判断能力も高く、探偵とか刑事とかに向いているような男だった。流石椿だよ、と希は心の中でまた呟く。


「じゃあ、もう犯人が分かったんだしすぐに警察とかに言った方がいいんじゃねえのか!? 証拠は最近の変死事件とか俺達の他にもあの狼の化け物見た奴いっぱいいるんだからよ……!」


「言っても無駄だ。……言ったとしても悪戯と思われて信じてもらえないだろう」


和也が慌てながら椿に振り返って言うが椿は腕を組んだまま首を横に振って俯き気味になりながらため息を吐いて言う。それを聞いた和也は自分の髪をくしゃくしゃと掻き回して椿に背を向けるようにした。希もベッドに座ったまま項垂れる。確かにこんな事言ったって、そんなファンタジーみたいな出来事を世間には信じてもらえるはずがない。椿の言う通りだ。


「……じゃあどうすりゃいいんだよ……! このままじゃどんどん皆死んで行くだろ……!」


和也は髪を掻き回しながら焦るように悔しそうに呟くように言ってその場をうろうろとする。和也は歯を食い縛ってひたすら悔しそうにうろうろし続けている。そんな和也を見て椿が口を開く。


「和也、落ち着け」


「落ち着いていられるか、もう何人も何十人も死んでるんだぞ!? この前なんてよくお世話になってる近所の人まで死んじまったんだよ……! すげえいい人でさぁ……!! 今日は皆から好かれてる鈴木先生が死んでよ、何で何の罪も無い人達がひでえやり方でどんどん死んでいくんだよ!? こんな状況なのに警察が信じねえっつったら俺はその警察ブン殴って」


「和也!!」


和也は振り向いてすぐに言い返して頭を片手で抱えて悔しそうな表情を浮かべてぶつぶつと喋り始める。希は心配そうに和也を見つめる。勢いがどんどんヒートアップしていっている途中で椿が大声で和也の名を呼んだ。その大声で和也ははっと我に返ってまた椿に振り向いた。椿はそれを見て僅かに落ち着いたように息を小さく吐きながら先程とは違って優しく和也に声をかける。


「……ケガ人もいるんだ。……希が心配している」


「……悪い、希。つい、感情的になっちまって……ケガしたりして一番辛かったのお前なのによ……ほんとごめんな」


和也は希に振り向き申し訳なさそうな表情で頭を掻きながら謝った。希は「大丈夫、気にしないで」と希は返しながら小さく笑って申し訳なさそうにする和也の肩にそっと手を置く。手を置かれた和也も落ち着いたように小さく笑いながら自分の手を希の頭に乗せてわしゃわしゃと優しく撫でた。希は瞳を閉じて嬉しそうに受ける。椿は二人のやり取りを見て安心したのかこちらも小さく笑みを浮かべた。


「では、俺達はそろそろ帰ろう。まだケガが治っていないのに邪魔をして悪かった。ゆっくり休んでいてくれ。行くぞ、和也」


「お大事にな、またちょくちょく見舞いとか来るぜ。元気になったらまた学校来いよ!」


「うん、ありがとう。帰りとか気を付けてね? じゃあね、椿、和也」


椿は希にそう言って和也に声をかけると、和也も笑顔を浮かべて希の頭をまた撫でてから椿に着いていき、希は手を振りながら帰っていく二人を見送った。二人が病室に出てからふう、と希は一息ついて体勢を直してベッドに寝転ぶ。二人が帰った事で寂しくなってくる。仕方なく希はリモコンを取り、ベッドの近くにあるテレビをつけた。最初に映ったのはニュースだった。


【次のニュースです。今朝、夜満兎町でまた新たに変死事件が発生しました。被害者は夜満兎高校の教師、鈴木隆弘さん27歳。遺体は自宅前で肉や手首を食い千切られたような跡があり、警察は――――――――】


変死事件のニュースだ。これは学校でも校長が話していた鈴木先生の事だろう。希は下唇を噛みながらニュースを睨みつけて少しだけ俯く。和也の言う通りだ。何故何の罪も無い人々がこんなに殺されていくのか。希は俯いてテレビの画面は見ていないがニュースの内容はどんどん耳に入ってくる。


【そして、夜満兎高校から少し離れた場所でも全身の肉を食い千切られた警察官らしき二人の遺体が発見されました】


まただ。他にも魔物達の餌食になった人がいた。希は素早く顔を上げて身を乗り出し、テレビを両手で掴んで顔を近づけて画面を食い入るように見る。夜満兎高校から少し離れた場所って何処だ、と希は現場が映されるのをじっと待っていたがここで病室の扉が開かれた。


「……今の貴方馬鹿みたいよ」


澄んだ声が聞こえてびくっと跳ねながらテレビから手を離して素早く振り向く。病室の扉の前には何かを買ったのかビニール袋を手に下げた神奈が立っており、冷めたような目つきでこちらを見ていた。


「……お、おかえり」


まだ少し驚いたままぽつりとそう声をかけるが神奈は黙って瞳を閉じてつんとした表情のまますたすたと歩き、出したままにしていたパイプ椅子に腰かけた。それから脚を組み、ガサガサと音を立ててビニール袋の中に手を入れて中から水色の袋に包まれたアイスキャンディーを取り出した。すぐにその袋を開ければ棒に刺さっているキンキンに冷えた水色の長方形のアイスキャンディーを出して神奈は食べ始める。


「ところでテレビは見なくていいの?」


アイスキャンディーを小さく一口齧って飲み込んでから神奈は希に声をかけた。え、と希は少しぼけっとしたがすぐに自分はニュースで警察官二人の遺体があったという場所を見ようとしていたのを思い出して慌ててテレビの画面に向かって振り向く。


【現場の最上アナウンサーっ!】


【はい! 今私は話題の祭華(さいか)動物園にやって来ております! ご覧ください、この人の数! 平日にも関わらず大勢の方達がこの祭華動物園に来ております!】


しかし先程の事件のニュースは終わり、今は明るい話題のニュースになっていた。中継を繋いで祭華動物園という動物園に若い男性アナウンサーが来ていた。希はがくっと項垂れながらため息を吐いてテレビを見るのを止める。


「……先に言っておくけれど、私のせいにしないで頂戴。ずっとテレビを見てればいいのに貴方が振り向いたんだから」


アイスを食べながら神奈がこちらに視線を向けずにそう言う。別にそんな事言ってないしそんな風には思っていないけどそんな事言われたら何か腹が立つ。希は項垂れたまま細目になってすっと顔を上げながら声をかけた。


「……門限とか大丈夫なの?」


「無いわ、別に大丈夫よ」


「…………ああ、そう」


「帰ってほしいの?」


「いや、別にそうは言ってないけど……」


そんなやり取りをしていたらすぐにお互い黙り込んでしまい静かになる。ムキになって言うんじゃなかった、と心の中で後悔しながらも何とか話を振ろうとするがすぐにその内容は思いつく。


「……魔物の事、皆信じてくれると思う?」


ぽつりと希は呟くように神奈に問い掛けてみた。椿と和也が来ていた時にも出てきた話だが、椿は「信じてもらえない」と言っていたが神奈はどう言うのだろうか。


「逆に聞くけれど、『変死事件の犯人は魔物、化け物です』って言って周り信じてくれると思う?」


神奈はそう答えた。その答えに希は頭を掻きながら黙り込んで俯き、神奈は話を続ける。


「言っても黙っても同じでしょう。警察やカメラマン、軍人や総理大臣等が見たとして国民に言ったって『何言ってるんだ』『寝惚けた事言うな』とか『ふざけるな』と言って言い出した人間を非難して信じてくれないのがオチよ。かと言って黙っていても『警察や国は一体何やってるんだ』『早く原因を調べろ』と非難するんでしょうし、そしてようやく手に入れたちゃんとした証拠も見せて喋っても『どうしてこんな恐ろしい事を黙っていた』『人の命を何だと思ってるんだ』『お前達も化け物と同類だ』なんて言ってまた非難するんでしょうね。……どれにしろ何やったって自分達の事を棚に上げて他の人間を責めるのでしょう? 人間って本当に腐ってるわ。汚物以外の何物でもない、最低最悪。……だから私は人間が嫌いなの」


神奈は不愉快そうな表情をして喋り続け、それからまた食べ進めていたアイスキャンディーを最後の一口を食べて棒を眺める。棒に何も書かれていないのが分かると「ハズレね」と呟いて希が座っているベッドの近くにあったゴミ箱にアイスキャンディーの袋と一緒に入れた。希は黙ってその話を聞いて小さく唸り声を上げる。ここで和也が言っていた言葉を思い出した。「じゃあどうすりゃいいんだ」「このままじゃどんどん皆死んでいく」と。


「俺が戦うしかない」


希は思わずそう呟いた。その言葉を聞いた神奈は希に向かって振り向き呆れた様子でまた冷めた視線を向ける。


「貴方なら戦ってもすぐに死ぬわ」


冷めた視線を向けたままそうバッサリと言ってきた。希は負けないと言わんばかりにじっと神奈に視線を真っ直ぐ向けて言い返す。


「大丈夫。絶対死なない」


「まぐれで魔物一匹倒したような人間が?」


「もうあんな失敗はしない」


「しないとしても魔物一匹相手に苦戦するような人間が?」


「負けない」


「それでやったら苦労はしないわ?」


言い返せば言い返すほどそんな刺さるような言葉が次々と帰ってくる。希はがっくりと項垂れたが少しムキになったのか、男なのに男らしくない、大人げない、と思いながらも顔を上げながらぽつりと言ってみる。


「……大体そっちだって下級魔物って自分で言ってたガルム一匹相手に苦戦してたじゃないか」


じ、と見つめながらそう言うと神奈もイラッと来たのか氷のような冷たく鋭い目つきで希を睨み付けてきた。希は少し震えあがりながら少しだけ身を神奈側から下がらせる。


「私は人間界に降りてきたばっかりなの。私が住んでいた天界とこの人間界じゃ環境とか重力とか感覚とかそういうのが全く違うから動き辛いの。今ようやく慣れてきたところよ」


何だよそれ、と心の中で希は呟いたが瞳を少し見開きながら神奈の今言った事を思い出す。


「……天界?……人間界?……降りてきたばっかり?」


気になった単語を呟くように神奈に問い掛けてみる。神奈はしまった、と少し面倒臭そうな表情になりながら息を長く吐きつつ視線をそっと逸らした。希はそんな神奈に思い切って聞いてみる。


「……もしかして神奈って人間じゃないのか?」


そう聞いてみると神奈は視線を逸らしたまま小さくこく、と頷いた。神奈は人間ではないらしい。希はまた問い掛けてみる。


「じゃあ、魔物?」


「違うわ」


神奈は視線を逸らしたまま首を横に振って呟くように答えた。希は少し驚く。人間でも魔物でもない? じゃあなんだろう、と希は腕を組んで考え込む。その様子を見た神奈はふう、とため息を吐きながら言った。




「神よ。神の一人」




「…………え」


面倒臭そうに、別に当たり前、みたいな様子で答える神奈をじっと見つめたまま希は固まった。神?……神様?


「……神奈は、神様?」


「そうよ。神と神の間に生まれた神なの、私。……歳は人間達が聞いたら驚くでしょうけど、天界ではまた子供同然に扱われるわ」


困るの、と言いながら脚を組んでため息をまた吐いた。希は唖然としながらじっと神奈を見つめ続ける。自分の目の前に神様がいる。自分は神様と話している。信じられない話だが魔物がこの世界にいる。……嘘とは思えない。


「別に信じるも信じないも貴方に任せるわ」


「い、いや、信じる! 信じるよ!……人間達が聞いたら驚く歳って」


神奈が言った事に希は慌てて返しながらもぽつりと呟く。聞こえたようで神奈はじろ、と希を睨み付けてきた。


「……貴方、いつも他の女性に普通に年齢を聞くの?」


「べ、別に聞かないけどさ……!? ただ、聞いたら驚くって言うから気になっちゃって……」


希はまた慌てておろおろとしながらそう返す。神奈はじっと睨み付けるように見つめていたがふう、と息を吐いてパイプ椅子に座り直した。


「まあ、別にいいのだけれど。教えたら言われたりするのも当然だろうし、怒ったって仕方ないわ。……人間年齢だと1600歳よ」


「せっ……」


希は驚きのあまり言いかけてしまう。自分と同い年の姿なのに1600歳とは。希はまた唖然としながら神奈を見つめる。


「1600歳か……俺達の世界じゃ物凄いおばあさ」


と言いかけた瞬間、神奈はくわっと瞳を見開いて希を鋭く睨み付けてきた。怒ったらしく、怒りでワナワナと震えながら睨み付けている。あまりの怒りで病室内がどんどん寒くなってきた。南極にでもいるのかと思うくらいのあまりの寒さに希は布団に包まって寒さを耐えようとする。しかしやはり寒く、希は布団を包まったままガチガチと歯を鳴らして震え出す。その内希を包んでいた布団は凍ったのか希を包んだまま固くなっていき、希を拘束しているようになった。


「怒ってるじゃん! 怒ってるじゃん!!」


自分が悪いと思いつつも寒さで震えながら大きめの声で言う。少し経つと神奈の怒りは収まったのかすぐに病室内の寒さは消え、希はほっとしながら布団から出てきた。神奈はまだ怒っているらしく腕と脚を組みながらじっとこちらを睨み付けていた。


「今のは頭に来たわ。……デリカシー0なのね貴方って。最っ低」


ギロ、と見下すような視線を向けながら希に言い放った。もちろん自分が悪いので何も言えない。


「……ごめんなさい」


「聞こえなかったわ。もう一度言って頂戴」


頭を下げながら謝るとすぐにそう言ってきた。「え」と希は顔を上げて神奈に視線を向けるが神奈は「もう一度」と呟くように言う。まだ残っている寒さなのか、神奈への恐怖からなのか、希は小刻みに震えながらベッドに座ったまま深く頭を下げる。


「ごめんなさい」


「何に?」


「…………おばあさんって言いかけた」


少し黙ってから呟くように言うとまたさっきの南極のような寒さが病室内に発生した。


「謝ってる最中だよね!? 謝ってる最中だよね!?」


「ええ、そうね。でも寒さなんて関係無いでしょう? 謝っているのだから。……そうね、ベッドに座ったままじゃ駄目よ。謝るならそこに座りなさい。もちろん正座よ」


神奈は脚を組んだまま自分の足元、地面を指差した。まだ南極のような寒さは解除してくれない。南極のような寒さのせいで神奈の言葉はより一層冷たく、痛く感じる。それだけでなくこの寒さのせいでケガの傷口が凄く沁みる。ケガしてるのに、と希は心の中で呟きながらもベッドから痛みに耐えながら降りて神奈の足元に正座をした。寒さのせいで地面が冷たい。ぶるっと震えながらも何とか耐えて希は正座をしたまま見上げる。神奈は脚を組んだままこちらをじっと見下ろしていた。希は寒さと神奈への恐怖で震えながら正座をしたまま頭を下げて土下座をする。


「……デリカシー0な事を言ってすみませんでした」


「………………まあいいわ、今日はこの辺で許してあげる」


神奈は土下座をして謝る希を見てため息を吐きながら病室内の寒さを消した。希は安心してフラつきながら立ち上がり、ベッドに倒れるように転がった。


「……やっぱりまだ許さないっていう気が少しあるわ」


「えっ」


ベッドに横になって神奈に背を向けた状態の希は神奈の言葉を聞いてびくっと少し跳ねる。警戒しながら恐る恐る希は起き上がった。


「……そうね、ここの病院には売店があるのは分かるでしょう?」


「それは……知ってる、けど」


「この病院の売店に売ってあるアイスを全種類一つずつ買ってきなさい。それで許してあげるわ」


「……え」


腕と脚を組みながら神奈はそう言い、希は少しだけぽかーんとする。


「私、アイスが好きなの。……今ならそれで許してあげるわ。私の気が変わらない内に早く買ってきなさい」


「わ、分かったよ……!」


希はベッドテーブルに置いてある自分の財布を持ってベッドから降りるとまだ少しだけフラフラと歩きながら病院の売店へと向かったのだった。












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