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April 9th Another,2


利人が走り出したと同時に化け物達も走り出した。トカゲの化け物達より先に白い化け物狼達が牙を剥き出しにしながら猛スピードでこちらに向かってくる。長剣を握り締めながら走って行く利人は白い化け物狼達と距離が縮まった瞬間、右足で強く地面を踏み込みながら握り締めていた長剣を大きく縦に振りかぶって一気に振り下ろした。狙いは自分の真正面から襲い掛かってくる狼の一匹。真正面から襲い掛かろうとした一匹は縦に真っ二つに切り裂かれ、一瞬で黒い煙になりながら光の球体を残して消滅していった。


「…………」


黙って光の球体を睨みつけながら長剣の刃先を球体へ向けると、光の球体は長剣の刃先に吸い込まれるようにゆっくりと向かって行き、刃先から吸い込まれた。他のまだ残っていた化け物狼達は利人とすれ違って行くとすぐに方向転換をしてそれぞれバラバラに飛び跳ねるように素早く連続で移動し始め、利人を囲む。いつの間にか化け物狼の数は増えていた。利人は辺りを警戒しながら見回しては突きつけるように長剣を狼達に向けていく。今いる化け物狼の数は七匹。七匹とも唸り声を上げながら利人を囲んで睨みつけていた。ここで利人の後方にいた一匹が先に飛び掛かった。


「っ!!」


利人は振り向きながら横に長剣を振って襲い掛かってきた一匹を切り裂く。一匹を切り裂いたと同時に次々とバラバラのタイミングで狼達が襲い掛かってきた。また後方から飛び掛かった一匹を振り向きながら斬りつけ、横から飛び掛かってきた一匹の攻撃を回転して受け流しては体勢を整えながら前方から襲い掛かってきた別の一匹を斜め真っ二つに斬りつける。その瞬間、真っ二つにされた狼の後ろからすぐに別の一匹が飛び掛かり、利人は横へ転がり回避して立ち上がりながら下から別の一匹を斬りつける。立ち上がってまた体勢を立て直しているとまたすぐに一匹が飛び掛かり、その狼の腹に長剣を突き刺してすぐに引き抜くと左右から同時に飛び掛かってきた二匹を勢いよく身体を回転させながら長剣を横に振って二匹とも斬りつけた。回転斬りを終えて両足でしっかり地面を踏み締めながら長剣を一振りすると七匹の狼達は黒い煙を身体から出して光の球体だけ残して消滅する。


「……あとは」


残るはトカゲ型の化け物二体。二体とも両手の鋭い爪を細長い不気味な舌で舐め上げながらゆっくり利人に近づいてくる。別の奴だが、自分はさっきこの化け物に殺された。そう思い出すだけでどんどん怒りが湧き上がってくる。二人の警官を化け物達に食い殺されてからは、怒りで化け物達への恐怖など完全に消えていた。長剣を持ったまま二匹のトカゲ型の化け物を交互に睨みつける。


「……叩っ斬ってやるぜ」


利人がそう呟くとトカゲの化け物の一匹が突然走り出し、利人に向かって爪を振り下ろそうとしてきた。利人は振り下ろされる前にトカゲの化け物の腹を蹴りつける。蹴りつけられたトカゲの化け物は爪での攻撃を空振りしながら呻き声のような鳴き声を発しながら後退った。その隙も見逃さず利人は駆け出し、踏み込みながらもう一度トカゲの腹目掛けて蹴りをかます。後退っている最中に蹴られたトカゲの化け物はバランスを崩して仰向けに倒れてしまう。倒れたのを見てまた一気に距離を縮めながら長剣を逆手に両手で持ち、刃先を仰向けに倒れているトカゲの化け物の腹へと向けた。


「お返しだぜ、この野郎!!」


叫ぶように言うと長剣を倒れているトカゲの化け物の腹に突き刺した。トカゲの化け物は大きな奇声を上げて糸が切れた人形のように動かなくなり、身体から黒い煙を発して消滅して光の球体を残し、利人は長剣を持ち直しながら光の球体を長剣に吸収させた。


「キシャァア!!」


すると奇声を上げながらまだ残っていた一匹のトカゲの化け物が飛び掛かってくる。利人は後ろに後退りするように避けて長剣を構え直す。トカゲの化け物は利人にのしのしと二本足で早歩きで近づきながら両手の爪を振り回してくる。利人は長剣を両手で握り締め、刀身で爪の攻撃を右爪、左爪、右爪、としっかり防ぎながら下がり続ける。


「よ、っ……!」


こちらも隙を見てトカゲの化け物の腹目掛けて利人は蹴りを入れ、長剣を大きく振りかぶった。トカゲの化け物は後退りながらもすぐに両手の爪をクロスさせて防御体勢に入る。


「っ、食らえ!!」


右足をだんっと地面に叩きつけるように踏み込みながら長剣を振り下ろした。トカゲの化け物はクロスした両方の爪で受け止めようとしたが長剣はクロスしたトカゲの化け物の爪を斬り砕き、トカゲの化け物の身体も真っ二つに切り裂かれる。トカゲの化け物は真っ二つの状態になりながらも歩こうとしたがゆっくりと地面に倒れて行った。倒れた真っ二つのトカゲの化け物に長剣の刃先を向け、光の球体が出るのを待つ利人。トカゲの化け物から黒い煙が音を立てて出始めるとあっという間にトカゲの化け物の死体(?)は消えて光の球体だけが残り、長剣の刃先に吸い込まれていった。利人は球体を吸い込み終えた長剣を一振りし、長剣を消滅させる。


「少年、よくやった。大したものだ、初めての戦闘でここまで戦えるとは」


ようやく戦闘が終わり、大きく息を吐いていると女性が立ち上がってこちらに近づいてきた。利人は女性に振り向く。


「……アンタ、一体何者なんだ? あと今の化け物達は一体何なんだ?……つーか、もう何が何だかわかんねえよ。頼む、簡単に説明してくれ」


利人は困ったような表情をして左腰に手を当てながら相手を見つめて辺りを見回す。女性は腕を組みながらふむ、と小さく頷いた。そして腕を組んだまま両足でしっかり地面を踏み締め堂々とした様子で仁王立ちをする。


「我が名はヴィーザル。それだけだ」


腕を組んで仁王立ちをしながら女性、ヴィーザルは堂々としながら大きめの声で自分の名を名乗ったのだった。


「…………どんどん分からなくなったからちゃんと教えろ、一から十まで」


ヴィーザルの名乗りを聞いた利人は面倒臭そうな、呆れたような表情で彼女を見ながら呟くように言ったのだった。










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