妹よ、余計なことはするな③
帰り道、俺は遂に決心した。
「なあ、友香里」
「何？」
俺は言う……。
「妹ができたんだ！！」
任務完了。さあ、妹と共に、我が家へ。
「また、ゲーム？」
クスッと友香里が笑う。
信じてもらえなかったああああああああああああああああ。
まあ、今までいろんな妹のゲームの話してきたけど……。雰囲気で感じ取ってくれないかな？
「いや、本当にできたんだ」
「はいはい」
ダメだな、よし、方向を変えてみよう。
ただし、一度スイッチを入れることになるが仕方無い……。
「俺、女の子と同居することになったんだ」
バサっ
友香里の鞄が地面に堕ちた。
ここから、始まる。恐怖が……。
「ねぇ、和君？言ってもいい冗談とダメな冗談はあるんだよ？」
友香里の目が怖い。ヤンデレはやめてください、まじで、怖いから。
「冗談じゃあない、そこの琴羽と同居してるんだ」
友香里がギギギと音を立て琴羽の方を見る。
「ひっ！ちょっと、お兄ちゃん！？助けて、殺される」
たぶん大丈夫だ。大丈夫だよな……？
「君は和君の彼女さんって言ってた子だよね？どういうことかな？」
琴羽が生まれたての子鹿みたいに震えている。
友香里さん、マジやべーよ、もう、視線で人を殺せるレベル。
「あ、あたし、彼女じゃあなくて、実は妹なんでしゅ」
噛みまくりじゃあないか……。
……ありだな。
「妹？」
友香里が正気に戻ったようだ。
これで、ひとまず安心だな……。
と思ったのもつかの間。
「和君？ちゃんと説明してよね？」
いきなり振り返るから怖いんだよ。首だけ後ろ向けて……ホラーだよ……。
説明、めんどくさいな……。
「という訳で妹になったんだ」
「とりあえず、分かったよ」
現在、俺の家で説明中。
とりあえずは分かってもらえたようで良かった。
「でもね、和君」
「なんだ？」
「もっと、早く言うべきだよね？」
「今日言ったんだし別に……」
「電話でもメールでもいいからその日に教えてくれればいいのに、それだったら私も勘違いせずに……」
「ごめんなさい」
友香里って基本的には優しいんだけど、たまに怖いんだよな……。これ以上怖くなるときもあるし……。そのときは口調も違うからな、一瞬だけど。
「で、琴羽ちゃん？」
「はい」
さっきのでトラウマを植え付けられたのかビビリっぱなしだ。まあ、無理もない。でも、こいつの責任でもあるしな。仕方無い。
「和君に何もされてない？」
「へっ？」
「和君って、シスコンでしょ？今までは本物がいなかったから良かったけど、本物ができちゃって何かしてないかなと思って」
こいつは俺が妹と分かれば手を出すような変態だと思っているらしい。
おい、俺はそんなことしないぞ、俺は脳内ではしてるが……。
「お兄ちゃんって、シスコンだったの……？」
ああ、若干引いてるのが分かる。俺の妹よ、行かないでおくれ。
「いや、違うよ」
「えっ？違うの？」
手放す訳には行かない。現実妹はこいつ以外ありえない。
「和君はシスコンだから気を付けてね」
「はい」
おのれ、友香里、余計なことをしやがって……。まあいい、それよりも今日が琴羽が飯を作ってくれるんだ、早く帰れ。
「あー、そろそろ帰った方がいいんじゃあね、いや、そろそろ帰った方がいいな、じゃあな、友香里」
「えっ！？早いよ！？」
「俺は用があるんだ、じゃあな友香里、また明日」
「えっ！？また明……」
バタン、強引に扉を閉めた。
半場強引に帰ってもらった。このあとは妹飯だ。楽しみだ。妹、一人いるだけでこうも違うか。もう、俺の人生バラ色だな。
「さあ、妹よ！ご飯を作っておくれ」
「今日、あたしだったっけ？今日は出前でも取ろうよ」
「妹飯が……」
「お、お兄ちゃん？」
俺はこの日を待ち望んでいた。妹に飯を作ってもらうというこのイベント……。どこで選択肢を間違えたんだ……。ああ、神よ、どうかご慈悲を……。
「お兄ちゃん？大丈夫？」
「もう、立ち直れないかも知れない……」
「そんなに！？」
妹よ、先に旅たつことを許しておくれ……。
「もう、明日、昼と夜作ってあげるからそれでいい？」
ピカッ
俺は目をカッと開いた。
「きゃっ」
「妹よ、出前何がいい？」
「もう、調子いいんだから」
妹の愛妻弁当、もとい、愛妹弁当を食べられるんだから今日ぐらい我慢するさ。
「じゃあ、ピザで」
「ＯＫ！」
まったく、妹は最高だぜ!!
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