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 ぼんやりとした明かりの灯る部屋の隅に、ふたつの人影が見える。灯りの発光元は、二人が凝視しているパソコンだ。パソコンの画面の中には、激しく性交しあう男女の動画があった。画質は非常に悪い。またカメラの位置は常に定点だ。どうやらアダルトビデオを見ているわけではなく、監視カメラで、リアルタイムの映像を見ているようだ。

 「…おええぇっ!くぶえっ」

突如、画面を見つめていた一人が、しゃがみこんだ。そして足元にあるバケツに、激しく嘔吐した。すでに消化を終えた食物が、胃液と共に、口のなかからねらねらとこぼれ落ちた。

「サヨコ、無理して見なくてもいいんだよ。何だったら、僕一人で行ってもいいんだよ」

嘔吐の後の虚脱感に、ぐったりしている、セーラー服を着た、サヨコと呼ばれた少女。ロングにした黒髪が、夜の闇のように美しく、整った顔立ちをしている。

「いいのよ、テツシ。これは、私のやらなければならないことなのだから」

心配そうに声をかけた男、テツシに、サヨコはつらそうに返事をした。テツシの風貌は、サヨコとまるで正反対だ。坊主頭で筋肉隆々。筋肉でぴちぴちになった、白のタンクトップと、迷彩柄のズボンをはいている。二人をたとえるなら、まるで美女と野獣であった。

 青白い顔のまま、サヨコはすっくと立ち上がった。

そして、パソコン横の、木製クローゼットを、バンと乱暴に開いた。

開いたと同時に、ピストルの玉が数発、転がり落ちてきた。

そして中から、小型のピストルを二丁取り出し、ひとつをテツシに渡し、ひとつを自分の右手に持った。

それぞれ、弾の残数を確認する。

そして次に、サバイバルナイフをテツシにまた渡し、自分はやや大きめの麻袋を持った。サヨコはまたパソコンの画面を見つめた。画面の中では、相変わらず男女が性交をしている。それを見てまたサヨコは嘔吐し、つぶやいた。こいつら、腐ってる。そして口の中に残っていた嘔吐物を、唾と共にぺっと出した。

「行きましょう」

サヨコがつぶやくと、テツシは歩きだした。彼女もそれに続いて行く。サヨコの表情は、怒りと決意に満ちていた。



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