1話
午後四時過ぎ。
学校も終わり学生は部活動に励むか友達と寄り道するか真っ直ぐ家に帰るかのどれかだろう。
俺――古登峯冬弥はそのどれでもない行動をしていた。
(多分、もうそろそろなんだけどなあ)
目の前にいる人物たちのそれに気付いたのは帰りのホームルームが終わったころだった。
この世界では見ることのないオーラのような物。魔力が俺の数メートル先にいる三人に纏わりつくようにして漂っているのだ。
それはいわゆるマーキング。異世界へと召喚するために条件に合った人物を魔力で覆うのだ。
それは転送される人物を守るためでもあり、異世界での力を得るためのものであった。
よくある異世界に行って俺tueeな勇者物語ってのがあるだろう?あれは召喚の時にマーキングとしてそいつの体を覆っていた膨大な魔力が世界を越えるときに体内に入ることによって同化や変異してそいつの力になるってことだって聞いた。
つまり俺は、そのマーキングをされている三人のストーキング中です。
真ん中の男――立蔵勇気はさわやか風のイケメン。
学業もスポーツも優秀と言う完璧人間。完全に異世界での職業は勇者だな。間違いない。
その左の少女は清水鏡花。黒髪ロングの今時珍しい大和撫子。
誰にでも丁重な振る舞いと俺達の通う高校きっての才女。
その上天然疑惑が上がっており、告白と分かってもらえずに散った男も多いとか。(いったいどんな告白をしたのやら)
反対の右にいる少女は紅取涼音。鏡花とは反対に元気の塊のような少女だ。
茶髪のショートに強気な釣り目がちの瞳。
スポーツは女子では一番で、陸上や水泳などの運動部をいくつか掛け持ちしており、持ち前の明るさやルックスから男女問わずに人気だそうだ。
普通、異世界へ召喚されるのは一人なのだが、三人は幼馴染だそうでいつも一緒だと聞いているから魔力に巻き込まれているのだろう。
何でこんなことを知っているかって?
そりゃ、もちろん――
「きゃっ……!」
「な、なにっ……!?」
「なんだっ!?」
三人が悲鳴を上げる。
その足元には魔法陣が煌々と輝き、今にも世界を飛び越えようとしている。
(あれは……見たことがない魔法陣だな)
陣の方式を分析しながらも俺はその中に走りこんでいく。
(まあいいや。あっちに行ってから覚えれば問題なし!)
「き、君は……!?」
俺が飛び出してきたことに驚いた勇気が声を上げるが、それ以上は続かなかった。
一層召喚陣が輝く。どうやらタイムリミットの様だ。間に合って良かった。
そして俺達は異世界へと旅立った。
彼らにとっては初めての。俺にとっては何度目かの異世界に……
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