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第一話 『異端の魔法陣』




 カチリ……。


 時計の針が音を立てて、時を刻み込む。

 既に刻まれた過去を、刻んでいる現在を、刻まれる未来を。


 ――止まらない……過去の繰り返しは。



 ――終わらない……絶望の渦は。



 ――止められない……必然的に。



 ――全ては過去の『再現』に過ぎないのだから。







 「なあ……この町、治安がいいんじゃなかったのか?」



 「私に訊かないで。噂を信じるグレンが悪いのよ」



 路地裏。周りが建物で囲まれていて、入ってくる方向は一ヶ所しかない。それもそうだろう。

 置いてあるものといえばゴミだけで、ここはゴミ捨て場なのだ。そんなところへ好き好んでくる者もいないだろう。

 そこで二人が何をしているのかというと――この場合は何をされそうになっているかなのだが――偶然ながらに、不良もどきに出会い、囲まれているわけだ。



 「へっ……テメェら、早く金目の物置いてけや」



 そのうちのリーダー格であろう男が口を開いた。顔には醜悪な笑みが張り付いており、不快感を催させる。既にシアは見るのも嫌なのか眼を閉じている。



 「無視とはいい度胸だな。俺は他の所で何人もやってんだよ。テメェらもそうしてやろうか?」



 自称他国人殺人者。の割には武器の一つも持ってないし、構えもない。

 グレンたちが抵抗も何もしないからただいきがっているだけなのだろう。



 「もうやっちまえ、兄貴」「そうっす!とっとと殺しちゃって下さいよぉ!」「はやくはやく」

 などと周囲の(おそらく)舎弟から声が飛ぶ。



 「テメェら、そんなに急かすんじゃ――」



 ねぇよ、と言おうとした所で、言葉は途切れた。

 威勢も何もかもが消え、汚い路地裏の床へと倒れこむ。周囲からも声は何も飛ばず、呆然としているだけだった。

 そしてグレンはその瞬間を逃すほどの馬鹿ではない。


 瞬間的に全員へ拳を叩き込み、気絶させる。通行(・・)の邪魔なので、ゴミ箱へと全員片付ける。



 「良い事した後でも気持ちは最悪だな」



 いつも通りの表情で、グレンはそう呟いた。







 そこは奇妙な雰囲気を全体に纏っていた。

 外観的には遺跡にしか見えないのだが、内部は異世界と表現しても正しいかもしれない。

 やはり過去に立てられたものだけあって、壁や床もとても傷んでいる。


 そんな領域に踏み込む者がいた。

 漆黒のローブを纏っていて、更にはフードも被っており表情も見えない。体格的にはそんなに歳はいってないようだ。


 その者はどんどんと奥へ進んで行き、通路に描かれた壁画には眼を貸さない。目的のものは別にある、とでもいうように。

 数分ぐらいたっただろうか……ようやく開けた場所に出た。しかも天井は見えないで、端から中心まで百メートルはあるだろう。いや、それ以上か。



 「失われた文明……というわけか。面白いな」



 僅かに声が弾む。それだけ価値のあったものだったのだろうか。


 その者はしゃがみ込むと床へと手を付けた。その掌から魔法陣が広がり、電子回路を通るかのように、光が伸びて行く。

 全体で繋がると直径で十メートルはある。五茫星の紋様が中心にあり、星の頂点を通る円がある。

 これが全ての魔法に関係する、言わば魔法の始動コードの様な物である魔法陣だ。大きさに比例して魔法の大きさと威力も上がり、その分多大な魔力を使用する。



 「さて……どんなモノが甦るか……楽しみだ」



 普段なら白い、正しいやり方で行った魔法や禁じられていない魔法は白い光を発する。そしてその反対に、禁術を行使すれば黒い……不正な魔法と判断され、とある場所を経て二度と魔法が使えなくなるだろう。

 だが、魔法陣が放った色は白でもなく、黒でもない。

 存在しないはずの禁じられてすらいない魔法……。放つ色はれっきとした灰色だった……。

 

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