崖の上にて
※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。
「◯◯さん、止めて!
駄目よ、もうそれ以上罪を重ねないで!
そんな事をしても、亡くなった奥さんは喜ばないわ!」
「タスケテクレー」
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ここは崖。連続殺人犯を追い詰めた自称一般女性が、犯人を説得している最中です。
この連続殺人犯。
悪事に巻き込まれて亡くなった奥様の仇を討ち続けて早や三人。
今最後の四人目を、ここで手にかける直前です。
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「果たしてそうでしょうか?」
「え?」
「私のやっていることは駄目なのか?ということです」
「ええぇ…こういう時は、『俺が間違っていたのか〜』とか言って、崩れ落ちるところでは?」
「タスケテクレー」
「いえいえ。そんな事、私は致しません。
勿論、法律的、社会常識的には間違った行いであることは理解していますが、
一方で、私は自分の行いに後悔も反省もしておりません。」
「ええと…一般論としてですね。
復讐は無意味といいますか。虚しさが残ると、言うじゃないですか?」
「少なくとも私はスッキリしてますね。毎日快眠です。」
「えぇ〜…」
「タスケテクレー」
「それと妻ですけどね。」
「あ、はい。」
「あなたは妻の何を知っているのかと問いたい。
彼女の座右の銘は『やられたらやり返せ』です。」
「……と、とは言っても!
流石に夫が犯罪を犯すのは、奥様としても辛いのでは無いでしょうか?」
「タスケテクレー」
「昨日、妻が枕元に立ちましてね」
「あ、はい。」
「『良くやった。
お前は何も悪くない。お前を罪に問う法律が、お前に追い付いていないのだ。』
と言っていました。
彼女はむしろ私を応援しています。」
「いや、それはあなたの思い込みによる妄想では…?」
「あなたは私の妻の何を知っているのでしょうか。本日二回目」
「あ、はい。」
「タスケテクレー」
「ということで、今からこいつをコロコロするので、邪魔しないでください。」
「待てーい!!
俺、警察。無視するな!」
「刑事さんですか?お勤めご苦労さまです。
あなたには私を止める権利も義務も有りますね。お仕事ですものね。
でもここは一つ、五分ほどお時間をいただけませんか?すぐ済みますので。」
「タスケテクレー」
「待てーい!!
俺は拳銃を持っている。お前がその手に持っているナイフを使う前にお前を無力化できる。
だからそれ以上動くのは止めろ。」
「読者にも分かりやすい説明ありがとうございます。
そしてさすが専門職ですね。
下手な説得より武力による実力行使。分かってらっしゃる。
どこぞの自称一般女性とは違いますね。」
「うぐっ…、
で、でも、今ならもうその男も罪を認めています。そいつも罪に問われるのですよ。
ならもう復讐はしなくて良いのでは無いですか?」
「先程、聞いてもいないのにベラベラ自白してましたからねコイツ。
…ところで刑事さん。」
「あ、はい。」
「コイツには、どのくらいの刑が与えられますか?
そして、私がここで復讐を止めた場合と、コイツもまとめてコロコロした場合、
私に課せられる刑の重さはどのくらい変わりますか?」
「ええと、そこのクズは懲役10年てところですかね。
あなたは……三人で止めた場合も、四人やってもあんまり変わらないです、はい。」
「コスパが悪いですね。じゃあ行きます。」ナイフグイー
「タスケテクレー」
「大丈夫ですよすぐに済みます。
先に逝かれた三人が、三途の川でお待ちかねですよ。」
「待ってー!!」
「待てぃ待てーぃ!!撃つぞ?本当に撃つぞ!?」
「はあ…煩いですね。
まあ、確かにすでに三人コロコロしてスッキリしてますから、
ここで止めても良いといえば良いのですが。
そこの自称一般女性の、ありきたりな説得では止める気にならないですね。
むしろムカつきます。」
「うぐっ!!」
「ハァ…誰か、私の心に刺さる言葉をかけてくれる人は居ないのでしょうか。」ナイフグイー
「タスケテクレー」
「よし分かった。警察である俺が説得しよう。良いか?」
「ではお伺いしましょう。楽しみですね。ワクワク。」
「では。
……お前がそいつを手にかけると、俺が困る。
目の前の凶行を止められなかったとなると、始末書ものだ。
書くのがとても面倒くさい。その時間分の残業代も出ない。
それと今後の出世にも響く。というか降格しかねない。
給料が下がるのは耐えられない。
Switch2の予約が取れたところなんだ。」
「うわぁ…。それは流石に駄「なるほど、それは私の心に響きました」え!?」
「他人に迷惑をかけるのは良くありません。
私も、つまるところコイツらに迷惑をかけられたからこういう行為に及んだのです。
なのに自分も人に迷惑をかけていたら、本末転倒です。
ということで、復讐はここまでにしましょう。」
「えぇー…」
「さすが本職。私の一番弱いところを突いてきますね。流石です。
どこぞの自称一般女性とはえらい違いです。
さあ行きましょう警察署へ。
今なら何でもお話しましょう。」
取り残される自称一般女性。現実はこんなものである。
「オイテカナイデクレー」




