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貞操逆転ヤンキー世界のワケありヒロイン  作者: くにねむりと
第2章 静かに見守る影
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第37話 事後処理

祭りが終わった後のような、

静かな空気が満ちる連結コンテナ内。



ボロボロのハエトリが松葉杖をついて戻ってきた。

縛られたアシダカたちを見るなり、ふっと笑う。


「……こうなったかぁ。最悪すぎて、ちょっと気持ちよくなってきた」


「生きてたか、ハエトリ」


アシダカが苦笑し、ハエトリは肩をすくめる。


「逃げないのかよ?」

「う~ん、ま、腐れ縁だしね」


そういってハエトリはどかりと座り込んだ。

静がその手足を縛り上げる。



「…おい」

鷹津がマネキに声をかける。


「ち、格下に負けてへこんでるんだからさあ、

そっとしといてほしいもんだね」

舌打ちを一つ。

じろりと睨み返し、皮肉気に応えた。


「ふん、そんな格上のマネキさんでも地獄鬼は怖いってわけ?」


「どーせ君じゃ勝てないんだから、聞くだけムダムダ。

手も足も出せなくなって後悔するがいいさ」


「けっ、聞くまでもねえっての。

ビビってるとこ笑ってやろうと思っただけだっつーのよ」


「…その虚勢だけは本物かもね。

デカい一発を喰らわされて泣いてるのが目に見えるようだよ」


「…アンタさっきから」

「もう話すことはないよ。

”本物”には思い付きの武器攻撃なんか通用しないから、

せいぜい技を磨いとくんだね。ま、無駄だけど!」

そういうとマネキは縛られたままゴロリと寝ころび反対を向く。


もう何を問われても応えることは無かった。





「ジョロウさん」

一琉は静かに問いかける。

「暗夜會のやり方は中高生にしては洗練されすぎています。

裏にだれかいるのではないですか?」


「……一本だけ吸っていい? 

“終わりの味”を覚えときたいの」

流し目を一琉に向ける。


「…一本だけ。終わったら縛り直します」



ジョロウは煙草をふかすと話を始める。


「ふぅ……六道鬼の一員、人鬼が持ち込んだやり方よ。

いや、持ち込まされた…かな。

そいつによって暗夜會は、

ただの不良集団から変質した」


梨々花が補足を入れる。

「人鬼…リリアン周辺で勢力を持っていたお嬢様ヤンキーね。

物珍しさから六道鬼に数えられていたけど、

最弱の勢力だったはず…」


表現の違和感、一琉はそこが重要だと直感する。

「持ち込まされた…? それは、誰に?」


「くす…鋭いのね。

でも一本分じゃこれ以上は秘密。

実際に会ったら驚くわよ」

ジョロウは妖艶に笑った。



そして、

煙草の長さが半分ほどになったころ、

沈黙の中でジョロウが呟く。



「さて………完敗…ね」

ジョロウが改めて一琉を見やる。


「何が何でも鬼哭冥夜に報復するためにやってきたけど、

今度は男の子に負けるとはね。

ここまで徹底的だと、

いっそ清々しいわ」



ジョロウは胸ポケットをなでると、

壁に描かれた蜘蛛のマークを見上げ、

一本をゆっくりと吸い切った。





事後の段取りを終え、立ち上がり——

一琉は、蜘蛛たちへ向き直る。


「全部終わったあと、

カノンにパンを食べに来てもいいです。

僕に報復しに来てもいいです。

でも——もう、筋の通らないことはしないでほしいです」


沈黙。

やがて、ジョロウが微笑んだ。


「ねえ一琉くん。

暗夜會は、まだまだ根深いわよ。

どんなニュースが届くか——

少年院で楽しみにしてる。

……せいぜい頑張るのね」


一琉はにこりと微笑んだ。





数時間後。

アジトを離れた一琉たちは、

公衆電話から匿名通報を入れる。


十数分後。


遠くで赤色灯が交差し、蜘蛛の巣へと警官が流れ込む。



幹部は顔と役割が割れ、復帰は困難。

パシリは資料ごと押さえられ、

“被害者兼加害者”として保護の手続きへ。

暗夜會は上納ルートを断たれ、静かに軋む。



夜明け前の風が冷たい。

一琉は振り返り、遠くのコンテナ群を見た。


「……蜘蛛の巣に囚われていたのは、

蜘蛛自身だったのかもね」


そう呟いて、彼は歩き出した。

隣で静が、ほんの、ほんの少しだけ肩を寄せる。

夏菜が前を歩き、鷹津があくびをし、梨々花が忙しくメモを取る。



朝の気配がする風が、軽く背中を押した。

背後で、夜が静かに解けていく。

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