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第31話 襲撃《カチコミ》蜘蛛の巣会


夜風が、廃公園の木々を鳴らしていた。

連結コンテナの中ではジョロウたち蜘蛛の巣会幹部四人が机を囲み、

金の匂いを数えている。



「当然、パシリの集金は減ってるわね。

……やっぱり一琉クンに働いてもらうしかなさそう。

カンダ、連絡は?」


「う~ん?昨日からメアドがエラーだすんだよねぇ、

連絡先変えたのかなぁ、明日直接伝えてくるわん☆」


「パシリどもはまた増やせばいいさ。

半端者ってのは本当にどこにでもいるから、ね」



状況が好転した安心感で、

どこか弛緩した空気。


ここは“絶対にパシリも知らない”秘密の巣。

だからこそ、彼女たちは油断していた。


「さ、て…あとは——」



その時だった。



ガチャ、と静かな音。

開くはずのない扉が、ゆっくりと押し開けられる。


差し込む月光の中、三つの影が立っていた。

コンテナの空気が一瞬で張り詰める。


「っ……地獄鬼か……!?」

マネキが青ざめ、後ずさる。


「っ…!?いや、違う。落ち着け……

だが、”音無し”に……”虎閃”……だと。

馬鹿な」

アシダカの声は低く、獣の唸りに似ていた。



静は一歩前へ出て、冷たい声で告げる。

「……返してもらう。——一琉クンを」


まるで“恋人を取り返しに来た女”のように。

その一言に、幹部たちの目が一斉に揺れた。



しかしその中、マネキの目が鷹津を見た瞬間、

口元がわずかに歪む。


「……ふぅ、おーけー。三人。

音無しと虎閃を囲めば何とかなる、か。

僕はさっきから睨んでる雑魚をシメて戻るよ。」


鷹津の眉がぴくりと跳ねる。

「ンだとゴラ、マネキグモォ!」


マネキは踵を返し、コンテナの外へ消える。

鷹津は怒声とともに駆け出した。



「男さらった報復しに来たってわけ?」

ジョロウは帳簿を閉じる。その手がわずかに震えている。


静は何も答えず、まっすぐその瞳を見つめていた。


「……アンタの彼は、もうてめえみてえなクズには付き合ってらんねぇってよ!!!」


自らを鼓舞するような嘲笑。



「………」


静の瞳に一瞬、複雑そうな影がよぎる。



ジョロウが机を叩き、叫ぶ。

「カンダァ!!さっさと援軍呼んでこい!!!

遅れたら殺すぞ!!!! 

マネキ! 遊ぶなよ!!」


「ひぃぃっ!? は、はいっ!!」

固まっていたカンダが悲鳴を上げ、

スマホを掴んで裏口へ駆ける。


夏奈がすぐに追う。

「すぐ戻っから!

——彼氏取り戻す前に負けんなよ!」


静は微かに目を細めた。



アシダカが机を片腕で掴み、部屋の隅へぶん投げる。

鈍い音。

静が一歩、前へ出た。


二人の視線が、雷のようにぶつかる。


「…まさか二対一とはな。

自信満々じゃねぇか、“音無し”。

——来いよ、遊んでやる」


「……付き合う義理はない。」



次の瞬間、床を蹴る音が二つ。


静とアシダカの戦いが始まった。

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