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貞操逆転ヤンキー世界のワケありヒロイン  作者: くにねむりと
第2章 静かに見守る影
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第21話 護衛任務、開始

パン屋の裏手の路地。

紙袋を両腕で抱えた守屋静は、

壁に背を預けてしゃがみこむ。



「……“恥ずかしがり屋さん”…って……」


音無しの静は、パンの袋を両腕で抱きしめたまま、

耳まで真っ赤になっている。


顔を上げることもできず、その場で小さくうずくまった。



「……バレてる……バレてた……そんな、はずじゃ……」


肩が震える。

あの少年の柔らかな声が、何度も頭の中で再生される。


『ちょっと恥ずかしがり屋さんなだけで、

よくパンたくさん買ってってくれるよ』



耳まで真っ赤に染め、静は袋をぎゅっと抱き寄せた。

肩を震わせ、遠くを見ながら、

そのまま過去を回想おもいだし始める。



放課後の路地裏。


夕焼けを背に、静はパン屋の看板を見上げていた。

制服の襟を少し直し、息をひとつ整える。


(最近、ここ……人が少なくて落ち着けたのに)



店内には、見慣れない少年の姿があった。

柔らかい笑顔。整った立ち姿。

静の心臓が、一拍遅れて跳ねた。


「……誰……?」


ドアベルが鳴る。

中に入ると、甘い香りとともに、彼の声が迎える。


「いらっしゃいませ! おひとり様ですか? 

今ちょうど焼きたての――」



静は反射的に目を逸らした。

無表情のまま、わずかに肩が硬直する。

そんな様子を見て、一琉は柔らかく笑った。


「あ、常連さんでした? 僕、まだ入ったばかりで」


「……ぃえ……っ、その、は、初めて……です……」


「そうなんですか、じゃあ今日がご縁ですね。

オススメはこのクリームパンですよ。

僕もさっき味見したばかりです」


その言葉に、静はしばらく黙って見つめた。

目の前の少年が、太陽の光のようにまぶしく見えた。



(……かわいい……)


「……買います……全部……」


「えっ、ぜ、全部!?」



焦る一琉。

静はうつむきながら、財布を出す手を震わせる。

パンを包みながら、彼が笑う。


「ありがとうございます。

よかったら、また来てくださいね」


「……はぃ……」


ぴっ、と不器用な敬礼のように会釈して、

静は逃げるように店を出た。



路地裏。

袋を抱えて歩く静は、ひとり小声で呟く。


「……あの子……かわいかったな……けなげで。」


「……助けようとしてるのかな……あの店……」


(…この街は平和寄りだけど、不良はうろつく。

たぶん今年からはさらに荒れる)


ふと薄暗くなってきた空を見上げる。

一番星が、静かに光っていた。



「……あの子に、怖い目にあってほしくない。

あの笑顔、守る……」


静はフードをかぶり、影に溶けた。



──音無しの静、護衛任務(ストーキング)、開始。



パン屋の裏手にしゃがみこむ静。


「……恥ずかしがり屋……うぅ……」


頬を覆い、静は膝を抱えたまま顔を伏せる。

胸の鼓動が収まらない。



「……一琉クン……そんな風に、思ってたんだ……私のこと……」


少しだけ、口元が緩む。


店の売り場――パンを並べる一琉の姿。

想像の力により壁越しにその笑顔を見た瞬間、

静はそっと立ち上がった。



「……かわいすぎる……一生……護る……」


袋をぎゅっと抱きしめ、彼女は音もなくその場を去る。


風が吹いて、パンの香りだけが、彼女の後を追った。

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