第十章 近づく脅威
シュアンランの氷の猛攻が荒野を覆う間、砦の奥ではフーリェンと新兵たちが懸命に動き回っていた。半壊した砦の壁や倒れた柱の隙間から、使えそうな武器や物資をかき集める。弓矢や剣、盾に加え、投石用の石や止血用の包帯、簡素な医療用品も含まれていた。数は決して多くはなかったが、まったくないよりははるかにましだ。彼らの動きには焦りよりも、限られた中で最善を尽くそうとする冷静さがあった。
砦の外では、ジンリェンが鋭い眼光で敵を睨みつけていた。シュアンランの凍てつく氷の壁を巧みに掻い潜り、隙をついては襲いかかってくる土人形たちを、彼は力強く槍で叩き潰す。敵の群れを一体また一体と倒しながら、その都度、倒した土人形を氷の領域へと押し返し、シュアンランの戦線を維持させる役割を果たしていた。
それぞれが次の敵襲に備え、身の回りの準備を進める。シュアンランの猛攻を背に、彼らはこの砦を守り抜くという強い決意を胸に、刻一刻と迫る戦いの時を待っていたのだった。
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荒野の奥、深い森の中。静寂が広がるその空間で、のんびりとあくびをした4号がふと冷気を感じ取った。
「寒くなってきたね……」彼はぼんやりとつぶやく。
その声に応じるように、狼の双子、2号と3号が身をひそめたまま話し始めた。
「1号が戦っている」「相手は氷の狼だな」
重く沈む空気の中、双子の冷静な言葉が4号の意識をはっきりと覚醒させた。
「行くか?」と、声を揃えて問いかける双子に、4号はゆったりとした口調で答えた。
「そうだね」
双子は互いに目を合わせて、そして静かに宣言する。
「白狐の双子は俺たちが受け持とう」
その言葉に、4号は穏やかに頷きながら返した。
「分かってるよ」
森を抜けた先には、遠くに広がる白銀の荒野――その中心で、巨大な氷の大剣を振るい続ける狼の姿が見える。氷の爆発が土煙を裂き、無数の土人形を次々と粉砕していた。
「……派手にやってるね」と4号が呟く。
双子は短く頷き、音もなく森を駆け出した。まずは氷の狼――シュアンランの戦線に真っ向から割り込む。その背後で、4号は別の方角へと歩き出す。砦の位置を正確に捉え、その裏手へと大きく回り込むような軌道を描きながら、のんびりとした足取りで向かっていく。
彼らの後ろには、何か大きなものを引きずったような跡だけが、静かに残っていた。