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第9話 困惑


「私が…人間ではない……?」


彼女は何度もその言葉が頭の中でループしていた。


「そうだ、キミもボク達と同じ妖だヨ。と言っても

 半分だけどネ」


「半分…?」


「ああ、もう半分は人間だ。その赤い瞳はキミの

 父親譲りだろうネ…その綺麗な白髪は母親だろう」


どういう意味か分からなかった。私はただ困惑した。


「…恐らくあの八岐大蛇は早い段階でキミの正体に

 気づいていただろうね、まぁキミの相方の冬木は

 知らないけど。八岐はキミを混乱させないように、

 成長を妨げないように教えなかったんだと思うけど

 教えないってのは時に残酷な事もある……」


「ーー私は」

 

「ん?」


「…物心ついた時には既に義理の母親に引き取られて

 いました。そしてそれから少しして義母は失踪し、

 義父に育てられてきました」


「…あんまり良い環境だったとは言えなさそうな

 顔だネ」


「……ずっと、ずっと知りたかった。何故私が義理の

 家族に引き取られてあんな地獄のような生活を

 送らなければならなかったのか。何故私の本当の

 親は私を捨てたのか」


ミヤマは少し困ったような顔をして言った。


「捨てた、っていうのは分からないヨ?もしかしたら

 違うかもしれない。捨てたって決めつけない方が

 良い」


「なら…他に何が考えられると言うんですか…!」


いつの間にか空は重苦しく、今にも雨が降りそうな

曇天に変わっていた。


「…嬢ちゃん」


「……ミヤマさん、私の両親は何処に居るんですか」


「そうだなぁ…酒呑童子なら京都にある大江山って

 所に居ると思うヨ、だけど行く事はオススメ

 しない」


「何故ですか」


「さっきも言ったけど、彼は妖を統べる王だ。

 1人で行けば会う前に他の妖達に殺されてしまう…

 死んでしまえば真実を知る事が出来なくなるヨ?

 だから行くのはオススメしない」


「………」


「…じゃあボクは玉藻に貰ったお金分は仕事したから

 これでドロンするヨ、それじゃあ」


ミヤマはそう言うとアライグマの姿になってトコトコ

歩いて何処かへ行ってしまった。そんな彼の姿を

通行人は物珍しそうに見送っていた。


それから少しして、雨がポツポツと降ってきた。

…だが、暁楓は雨が当たらない所に行こうとせずに

黙って空を見上げていた。


「…………」


妖の王・酒呑童子、か…


ふと彼女がぼんやり考えていると黒い何かが現れて

急に雨が止んだ。


「ーーおいおい、女が体を冷やすんじゃねぇぜぃ?」


「…八岐さん」


どうやら雨は止んだのではなく、彼が持ってきた傘に

よって雨が遮られただけだった。


「……スカイツリーからの景色はどうだったよ?」


「…見てたんですか」


「まあなァ、アイツからは嫌な感じはしなかったが

 万が一を考えてなァ…ほら、早く帰るぜ」


「帰ったら…帰ったら教えて欲しい事があります」


「ーーおうよ」


2人は一言も喋らずに黄泉ノ桃源へと戻った。


「あ、お帰り暁楓ちゃん」


「…冬木さん」


「はい、タオル」


「ありがとうございます」


「鎌鼬、もう戻っていいぜぇ」


「え…?」


<ドロン!>


「……俺の毛並みが濡れてふわふわもふもふでは

 なくなってしまったな」


「え!?か、傘に化けてたの君!?」


「そうだが?」


「…どおりで居ないわけだよ……で、僕がサボってる

 間に八岐さんと暁楓ちゃんはデートしてて、

 雨が降ってきたから戻って来たって感じっスか?」


「ふはははは!そいつぁ半分ぐらい当たりだなァ」


「というか仕事サボらないで下さい」


「あ、やっぱりそこツッコむ?」


「はい、息抜きは良いですがサボるのは駄目です」


「…それで、教えて欲しい事ってのは何でぇ」


「……いつものように図書館で話しましょう」


「図書館かぁ…」


「何か不満でもあるのか冬木」


「あそこさぁ、広いくせに喫煙所無いんだよね〜」


「少しぐらい我慢しろ」


「はぁ…吸えないと結構ストレス溜まるんだよね〜」


「…ニコチン中毒者が」


「あはは、それ2回目だよ?」


4人は図書館に入り、いつものように1番奥にある

席に座った。


「ーーで、教えて欲しい事ってのは何だぃ?」


「…ミヤマさんとの会話を聞いていたなら分かると

 思いますが、私についてです」


お前(やー)についてか…ったく、あの馬鹿が

 余計な事言いやがってよぉ……」


「何の話っスか?」


「チッ…まぁいい。何が聞きたい?」


「全部です」


「全部つったってなァ…まぁ知ってるけどよぉ……」


八岐はどこか言うのを躊躇っているようだった。


「…知って後悔するかもしれねぇけど良いのか?」

 

「はい、後悔しようが何であろうが私は自分自身に

 ついて知りたいんです」


「……分かった、お前(やー)の気持ちを尊重して

 教えてやらァ」

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