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第14話 狸オヤジを探せ その4


一方、冬木達が探していた狸のミヤマは意外な事に

闘技場内に居た。彼は景品を一目見ようと景品が

置いてある部屋の前を通りがかった。


「たぬき〜♪たを抜いたらただのぬき〜♪たぬきは

 狐より可愛くてモテ…」


ミヤマはふと横から気配を感じて振り向いた。


「モテ…?」


「…!」


微かに開いたドアからロープで手足を縛られていた

暁楓の姿が見えた。


「え…?キ、キミは確かあの時の……」


「ミ、ミヤマさん…!?何故貴方が此処に…」


「も…もしかして…いや、もしかしなくてもキミが

 景品……?それともそういうプレイ…?」


「はっ倒しますよ?…誘拐されて景品にされたんです

 この縄、解くのを手伝ってくれませんか」


「ヤダ」


「…そうですか、なら1人でどうにかします」


「ちょっ…ち、ちがーう!!」


「あまり騒がないで下さい、人が来ます」


「いやそうじゃなくて!嬢ちゃん、こういう時は

 どうしても助けて欲しいって懇願する所だヨ!」


「……狸に期待する方が馬鹿でしょう」


「く〜っ!キミ、見た目は中性的ですっごい美人

 だけど中身がアレなタイプだよネ!?」


「……」


彼女は黙ってそっぽを向いてしまった。


「はぁ〜っ…じゃ、助けてあげるヨ。今から出す

 クイズに答えられたら、ネ」


「…クイズ?」


「此処は15分に1回見回りが来る…ボクがキミを

 助けてる所を見られたらただじゃ済まないだろう。

 だからキミがこのクイズに15分以内に答えられ

 なければボクは帰らせてもらうヨ」


「15分に1回、ですか…」


「そうサ。でもついさっきキミと会う前に見回りが

 来て、2分ぐらい経ったからあと13分も無いヨ。

 どうする?」


「…やらせて下さい」


「分かった。じゃあよく聞いてネ?」


『蟹の後ろは獅子。羊の後ろは牛。では羊の前は?』


「さ、考えろ考えろ〜ボクは答えが出るまで試合でも

 見てようかナ」


ミヤマは人間の姿に化けて、ひょっこり窓から

下を見下ろして試合を見始めた。


「うわっ、八岐って相変わらず手加減ってものを

 知らないよネ〜…」


(蟹の後ろは獅子、羊の後ろは牛、羊の前は…?

一体どういう事だ……)


「…ちょっと難しい?じゃあヒント、動物以外にも

 (さそり)とか天秤とかもあるヨ。あ、これ

 結構大ヒントかナ」


「……」


羊、牛、蟹、獅子、それに蠍に天秤……共通点は

何だろうか…?


「!そうか…そういう事ですか…!」


「おっ、開始3分で分かったの?」


「はい、羊の前は…魚です」


「正解正解大正解!狸クイズに正解したキミは

 助けましょ〜じゃ、縄を解く間に説明してヨ」


「星座の順番ですね。牡羊座の次は牡牛座、蟹座の

 次は獅子座、この順番で行くと牡羊座の前は魚座…

 という事でしょう」


「そうそう、さすがだヨ。はい、解けたよ」


「ありがとうございます」


「じゃあお礼にありがとうのキスを…」


「さあ、早く行きますよ」


「しーくしくしくしく…」


「無視されたからって泣かないで下さい、見回りの

 人に見つかりますよ」


「…キミはこれからどうする?」


「八岐さん達に会いに行きます、今もああやって

 私の為に戦ってくれていますから。早く行って

 安心させてあげたいです」


「ウンウン、そうかそうか。それじゃあボクに

 任せて。キミを抱えて此処から飛び降りるから」


「…え?」


ミヤマは彼女を軽々とお姫様抱っこすると、部屋の

窓を壊して下へ飛び降りた。


「ん…?何だろアレ…」


一方その頃、冬木達は2試合目の先鋒対決をしていた


<スタッ!>


「華麗に着地!」


(…死ぬかと思った)


「な、何だアイツ…」


「っていうかあそこって景品が置いてある部屋

 だよな…?」


突然の登場に会場は驚きを抑えられない様子だった。


「し、試合は一時中断とします!」


彼は暁楓を下ろし、2人で八岐達の方へ歩いた。


「ふははは!何でぇ、お前(やー)だったのかぃ。

 暁楓を助けてくれてありがとよ」


「女の子が捕まってたら助けるのがカッコいい男

 だからネ。それにしてもキミ、ちゃんと食べてる?

 抱えた感じだとちょっと軽かったけド…」


「ちょっ、ちょっと待ったー!」


「ん〜?あ、冬木…だったっけ?」


「冬木隆之介だよ!早く暁楓ちゃんから離れなよ!

 その距離はアウトだっての!!」


「…どういう事か分かりませんが…」


「ふーむ…ボクにもさっぱりだネ。もしかして、

 キミの彼氏なの?」


「違います」


「ふははっ!激おこ冬木…略して激冬木だなァ」


「何かの地名みたいになってるっスよ!そもそも

 普通はおこ冬木って略しますっス!」


「賑やかな人だねェ…ああいう人は彼氏にしないでネ

 絶対めんどくさいタイプだから」


「何でミヤマさんがそんな事気にするんですか…」


「…ん、まあ……ボクがおじさんだから?」


「おじさんなのは見た目で分かります」


暁楓がそう言うと、彼は少し困ったようにポリポリと

頭を掻きながら言った。


「う、うーん…まぁそのおじさんって事にしとこう

 かナ…」


「それより、もう俺達が此処に居る理由は無くなった

 はずだ」


「そうだなァ…とっとと帰るとするかァ」


「でもどうやって帰るんスか?」


「まぁ此処はボクに任せて頂戴。ちちんぷいぷい」


「は?そんなので帰れるわけ…」


すると辺りが急に輝き出し、気がつくと闘技場に

来る前に来た静かな平原に戻っていた。


「か、帰れた…」


「どう?これがおじさんの力、タヌキマジック!」


「ありがとうございます、ミヤマさん」 


「いや〜そんな事言われると照れちゃうナ〜」


「………チッ」


「はい、そこ!舌打ちしない!」


冬木は軽くミヤマを睨むと煙草を吸い始めた。


「はぁ〜…イライラする…」


「悪ぃなァ、冬木は嫉妬深い奴でよぉ……」


「良いヨ良いヨ、誰でも嫉妬はするからネ。

 暁楓…だっけ?あの子はあまりしなさそうだけド」


「…ミヤマ、そいつについて話がある」


「ん〜?もしかしてボクにあの子をくれたり…」


「やらねぇよ。実はアイツが自分の本当の父親に

 会いたいって言っててよぉ…その為にお前(やー)

 の力を借りてぇんだ」


「成程…もっと詳しく説明してくれるかナ」


「アイツの父親の酒呑童子が居るあの山には妖だと

 偽らなければ入れねぇ。アイツの為だと思って

 やってくれねぇかぃ?」


「モチのロンだヨ、ボクはあの子の為なら何でも

 する。それが彼女への唯一の償いだからネ…」


「…ミヤマ、あの事はお前(やー)のせいじゃねぇ」


「いや…ボクのせいだヨ。ボクのせいで…」


「違ぇ、あれは…」


すると暁楓が八岐達に近づいて来た。


「2人とも」


「あ、暁楓ちゃ〜ん♡」


「何でぇ、どうした?」


「……今回の件、謝りたくて」


「ふはははは!そんな事気にしてんのかぃ?

 気にすんなよ、俺ァ結構楽しめたぜぇ」


「そうだヨ暁楓ちゃん、気にする事じゃないヨ。

 というかボクはキミに会えて凄く嬉しかったヨ」


「…ミヤマさんって誰にでもそういう事言いそう

 ですね」


「ははは…ちょっと傷ついたかも。それより、2人とも

 空を見てみなヨ」


暁楓と八岐は言われるがまま空を見上げた。すると、

そこには昼とは違い、雲1つ無い澄み渡った綺麗な

満天の星空があった。


「…これは……綺麗…ですね…」


彼女はあまりに美しい星空に思わず息を呑んだ。

そんな彼女の横顔をミヤマは寂しそうに、懐かしむ

ように見て呟いた。


「…そういう顔すると…似てるネ」


「?」


「いやいや、こっちの話。そうだ、八岐から話は

 聞いたヨ。キミの父親…酒呑童子に会う為に変装

 したいんだってネ?」


「はい」


「…前にも言ったけど、会うのはオススメしない。

 まぁでも、わざわざボクを探して頼みに来て

 くれたからその願いは聞き入れるヨ」


「!ありがとうございます…!」


「詳しい事は明日話すから今日の所は解散しよう。

 そこの鎌鼬の為にもネ」


彼はそう言うと足元で丸くなって眠っている鎌鼬を

見下ろした。


「全然喋らないと思ったら寝てたんですか…」


「それじゃあ、とっとと帰るとするかァ。帰るぞ

 冬木ィ!」


「あ、はいっス!」


少し遠くから八岐達を見ていた彼は、慌てて携帯用

吸殻入れに煙草を入れると八岐の方へ駆けて行った。


「…鎌鼬さん」


暁楓は名前を呼んでそっと彼を抱き上げ、ミヤマに

軽くお礼を言うと八岐達の方へ行ってしまった。


「明日の朝9時に黄泉ノ桃源前で待ってるからネ〜!

 忘れずにネ〜!」

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