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第12話 狸オヤジを探せ その2

 

ビル群を抜け、森の方へ進んで行くと少しずつ

車通りが少なくなってきた。歩いているうちに

いつの間にか雨が止み、傘が必要無くなったので

鎌鼬は元の鼬の姿へと戻った。


「…八岐さん、あと何分ぐらいで玉藻前の森に

 着きますか?」


「ん?あァ、10分ってとこだなァ」


「はぁ…」


「どうしたんですか冬木さん」


「…上り坂だからキツくてさ……ちょっと休憩したい

 かも…」


冬木は暁楓をうるうるしたすがるような目で見た。

…しかし、効果は無さそうだった。


「駄目です、ついさっき休憩したばっかりですよ」


「え〜」


「ほら、頑張って下さい」


「僕も八岐さんみたいに体力あったらなぁ…」


その時だった。


<スタッ!>


突然木の上から黒子の格好をした何かが降りてきて

一瞬にして暁楓を攫って行った。


「!?暁楓ちゃん!」


「暁楓!」


「っ…!」


冬木は銃弾を3発撃ち、鎌鼬は周りの木を切り裂く

ような風を引き起こしたがいつの間にか見失って

しまった。


「…っ、くそっ…!鎌鼬君!さっきの奴の匂いを

 追って!」


「ああ…!」


一方その頃、少し先に行った八岐は暁楓達の異変に

気付きつつも玉藻前の森の領域に踏み入れていた。


<ザッ>


「…そろそろ玉藻前(あのおんな)の管轄かァ……」


「そこの妖!止まりなさい!」


「ん?何でぇ」


「此処から先は会員証を持つ者以外は立ち入り禁止

 です」


「あァ、そうだったそうだった。ほら」


彼は着物の裾からカードを取り出して見せた。


「…!ゴールド会員の八岐大蛇様でしたか…!」


「おう、今回は選手として参加してやらぁ」


「しかし、残りの2人の姿が見当たりませんが…」


「後から来るさ、必ず来る。冬木隆之介と鎌鼬……

 やる気の無い顔した若い男と鼬が来たら通して

 やれ」


「…かしこまりました、ではお通り下さい」


「頼んだぜ〜」


彼はそう言って門番の横を通り抜けると消えて

しまった。それから数分後…


<ザッザッザッ!>


「…匂いは此処で途切れている」


「え…!?でも此処って…」


冬木は辺りを見回した。森の中だというのにやたら

大きく開けていて、その広さは東京ドームぐらい

だろうか…ただ平原が広がっていた。


「そこの2人、止まりなさい」


「!さっき暁楓ちゃんを攫った黒子か…!」


「待て冬木、さっきの黒子と同じ格好をしているが

 別人だ」


「…そうなんだ?」


「お2人が冬木隆之介様と鎌鼬様ですね」


「ん…何で僕達の名前知ってるのさ」


「八岐大蛇様がこの先でお待ちです」


「この先だと…?どう視てもただの平原だが…」


「そう視えるのも無理はありません、会員証を

 提示していただかなければ視る事は出来なくなって

 おります。しかし、今回特別にお2人を通して

 欲しいと八岐様から言われております」


「悪いんだけどさぁ、八岐さんに伝えといて

 くれない?僕達は暁楓ちゃんを…」


「ーーあの子供の事ですか?」


「!」


「…その方ならつい先程入られましたよ」


「何…だって…!」


「彼女に会いたいというのならお通り下さい」


「……鎌鼬君、行くよ」


「待て、もし罠なら…」


「他にあの子の手がかりは無いし、八岐さんも居る。

 それなら行くしかないでしょ」


「……分かった」


「ご健闘をお祈りします」


2人が黒子の隣を通った瞬間、辺りが光り始めた。


「!?ま、眩し…!」


「何だこの光は……!」


光が収まり、2人が目を開けると…


「!こ、此処は…」


「行けーっ!殺せーっ!」


「何してんだ!早く殺せ!早く殺せーッ!!」


そこは大きな闘技場だった。何千、何万という数の

妖達で観客席は埋め尽くされていた。冬木達は

ぽかんとしたまま、周りを見渡していた。


「え、えーっと…」


「よぉ、早かったじゃねぇかぃ」


「!や、八岐さん…!」


「…どういう事か説明しろ八岐」


「此処は玉藻前の森の敷地にある闘技場でよぉ、 

 毎日のように生死をかけた遊戯(ゲーム)

 行われてる」


「…それがあそこで行われてる殺し合いっスか……」


「そうだ。あそこで戦ってる奴は優勝すれば景品と

 1億円が貰える…んで、観客はどちらが勝つか

 賭ける…単純だろぉ?ルールはそこに書いてるから

 見とけ」


ポスターには次のように書かれていた。


1 賭け金は原則1万円からとする。上限は無し

2 選手は相手を降参、気絶・または殺すまで戦う 

3 武器・技は使用可能

4 試合は3人1組で行い、1人1試合ずつとする

5 優勝者には賞金1億円と景品付き


「…チーム戦って事っスね。八岐さん、此処に

 書いてる景品ってどんなものがあるんスか?」


「そうさなぁ…珍しい宝石とか、世界に1つしかない

 ような珍しい物ばかりだったはずだ……ふははっ!

 何でぇ、随分と回りくどい言い方するじゃねぇ

 かぃ。暁楓について言いたい事があるなら言えば

 いいだろぉ?」


「……知ってたんスか、暁楓ちゃんが誘拐された事」


「あァ、何となく勘付いてたぜ。恐らくアイツは

 今回の戦いの景品にされてる」


「!暁楓ちゃんが…!?」


「言ったろ?此処の景品は珍しい物ばかりだってな。

 …アイツは生きた宝石と言ってもいい程綺麗な

 見た目をしてやがる、だから景品にされてても

 全くおかしくないって事だ」


「でも、どうやって出場するんスか?」


「ふはは!安心しろ、最初此処に来た時にもう登録は

 済ませてあるからよ」


「!な、何勝手な事してるんスか…!」


「まぁ細かい事は気にすんな、俺達はあと2試合後

 だから準備しておけよ〜」


八岐はそう言うと何処かへ行ってしまった。


「はぁ……狸のミヤマ…だっけか?そんな奴を探す

 だけだったのに凄い事なっちゃったな…」


「…そういえばお前は戦えるのか?」


「失礼だなぁ、僕だって祓志士なんだからちゃんと

 戦えるっての。そう言う君だって戦えるの?」


「当たり前だ」


「ふ〜ん、1試合目で負けないでね」


「…お前もな」


「さてさて…準備しよっかなぁ」


2人は控え室へ向かった。

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