お姉さんにゲームを仕掛けられた!
「短編」人生に絶望していたらお姉さんからゲームを挑まれました〜
怠惰
お姉さんからゲームを挑まれた!
人生っていうのはクソだ。
ただ同じ事を繰り返し行う日々、新たな事に挑戦しようとしても結局は何もせずに終わる。
それは僕のような親に捨てられ孤児院で暮らし社会で疎まれているような人間でも同じだ。
僕そんな日々から脱する為に今此処にいる。
此処は麻薬の密売人が多く集う居酒屋など夜のお店がある場所だ。
そう…僕は今日麻薬を売り捌いて貰うために此処に来た。
密売人にSNSで連絡を取り此処で会うという約束をしたのだ。
僕の持ち金は全財産の11258円、有り金全てを使ってでも僕は非日常への扉を開ける。
23時46分約束の時間まであと4分。
密売人は黒いロングコートの下に白いシャツと黒いスーツのようなズボンを履いているの女性だと聞いている。
僕は約束の場所へと向かう。
23時50分約束の時間ジャストぴったり。
僕は条件に合う姿の女性を探す。
条件に合う女性は3人ほどいる。
化粧が濃い中年の女性とバリバリ仕事ができそうなキャリアウーマン、最後に僕とそんなに年が離れてなさそうなボブカットの可愛らしい女性…
恐らく後者2人は違うだろう、飲み会やアルバイトとかそういうので来ている…
僕はそう決めつけ如何にも怪しい中年女性の方へと向かう。
一応密売人側にも僕の特徴や服装を伝えているので間違うことはないだろう。
そうして僕が中年の女性に声をかけようとした時後ろから声をかけられた。
「ねぇ、君もしかして…」
その声は若く僕はまさか、と思いながらも後ろを振り向いた。
するとそこには、候補から外していたボブカットの女性が不安そうな面持ちで僕の事を見ていた。
そこで僕はSNSで決めていた合言葉を言う。
彼女は僕の言葉を聞き笑みを浮かべ合言葉を言う。
僕たちはお互いを確認取引相手だと認識する。
彼女が取引をする場所へと先導してくれる。
そこは居酒屋の個室だった。
僕たちはテーブルを間に向かい合う様に座った。
「ご注文どうぞ〜」
男性の店員さんが聞いてくる。
僕は麻薬を買う為の分のお金しか持っていないので彼女にアイコンタクトで僕は何も頼まないと伝える。
「焼き鳥の塩3と炭酸ジュース2お願いします」
おお〜、凄いな。よくそんな華奢な見た目でそんなに食べられるな。
僕はほんの少しの驚きと安堵を覚える。
注文が来るまでの間僕達は自己紹介をすることにした。
「僕は浅野晶あさのあきら、17歳です。本日限りの付き合いになると思いますがよろしくお願いします。」
「自己紹介ありがとう。それじゃあ次は私だね。私の名前は夜乃朝海よるのあさみ年齢はトップシークレットだから秘密だよ。よろしくね」
その後軽い雑談をしていたら注文していた品が来た。
「お待たせしました。焼き鳥3串と炭酸ジュース2杯になります」
彼女は目を光らせお礼を言う。
本当に単純そうな人だな。
僕がそう思うと彼女は早速焼き鳥を持ちそのまま口の中へと運ぶ。
のではなく僕に差し出してくる。
「あの僕麻薬分のお金しか持って無くて…」
「いいんだよ!私の奢りだからさ!ほら炭酸ジュースも!」
「いや!ご馳走になるわけにはいきませんよ!」
「良いから食べて!」
しばらく押し問答が続いた後に彼女は無理やり僕の口の中に焼き鳥を入れてくる。
「うぐ!」
焼き鳥は少し熱いが塩の味が丁度よくとても美味しかった。
いや違う!美味しいけど違う!遂に食べてしまった!
彼女は僕の様子を満足気に見てから今度は自分の為に焼き鳥を手に取り食べ始めた。
するとまたしても彼女の目は輝いた。
「ねぇ、これすっごく美味しいね!」
彼女はそう言い直ぐに焼き鳥を食べ終えた。
彼女は何故か分からないけど店員さんにお皿と箸を持ってくるように頼んだ。
店員さんは直ぐに持ってきてくれた。
彼女はお礼を言い最後の焼き鳥を手に取りお皿の上に持っていき綺麗に箸で半分個にした。
そしてまだ無理やり口に入れられた焼き鳥を、味わっている僕に皿と箸を渡してきた。
「はい。これで半分個」
「気持ちは嬉しいんですけど良いんですか?僕本当にお金は麻薬の分とその他端数しか持ってませんよ?」
「いいんだよ。これは私の自己満だから」
彼女その微笑んだ顔に少しドキッとする。
しかしその気持を脳から振り払い交渉の場へと移るのだが…
「それじゃあ早速だけど君はなんで薬が欲しいのかな?」
「言わないといけないですか?別にそんな大した理由じゃないですし言わなくてもいいと思いますけど」
「言わないと駄目!今日は私の初仕事でどうしてお客さんが薬を欲しいのか聞きたいの」
なるほど…。ていうか今日が初仕事なのか。
まぁいいか別に変な理由ってわけじゃないし。
「分かりました。まぁ簡単な理由ですよ。ただこの同じ事を繰り返し行う退屈な毎日に刺激が欲しいと思って」
「なるほとなるほど、それで君は麻薬を使ったら何か刺激があると思うの?」
彼女は真剣な眼差しで僕を見つけてくる。
「いや、それはわかんないですけど一時の退屈凌ぎにはなるんじゃないですか?」
「本当にそんなんでいいの?私が言えたことじゃないけどさ。麻薬を使うと依存してもう麻薬無しの生活には耐えられなくやるんだよ?それで麻薬を買うためにお金を稼いでそのお金をまた麻薬に使う。こんな毎日が続くんだよ?」
彼女は密売人の癖に僕に何故か買うのを辞めるよう説いてきたように思える。
僕はそれに思わずムカついてしまい少し声を荒げてしまった。
「なんなんですか!貴女はこの僕の退屈な毎日をどうにかしてくれるんですか!?……それが出来ないのなら勝手なこと言わないでくださいよ……!」
僕は言いながら自分の幼さに嫌気が差してきた。
すぐに僕は彼女に謝るが彼女は黙ったままだった。
僕はやってしまった!という気持ちが強くなり気まずくなる。
しかし彼女は顔を上げると何故か清々しい顔をして僕の方を向いてくる。
「そうだ、そうだよ!」
「どうかしましたか?」
彼女は何故かひとりでに納得していたので僕は気になりどうしたか聞く。
「わかったんだよ。君の人生が楽しくなる方法を!」
「はぁ?なんですかそれ。」
「君は私にこう言ったよね?僕の退屈な毎日をどうにかしてくれるんですか?ってそれで私思いついちゃったんだよね!」
そうして彼女は一息置き僕にその言葉を紡ぐ。
「なぁ少年、私とゲームをしないか?」