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キャンメロの日常 5

わたしはのんびりと窓の外を見つめていたら、メイド見習いの友達のマイラから声をかけられた。いつも高そうな衣服で学校に来ているから、多分かなり良いところのお嬢様に仕えている。メイドに対しても見栄えをしっかりさせるお家みたいだ。


「ねえ、キャンディちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど……」

「どうしたの?」

「これ、着てみてもらえない?」

「これって……」

彼女がポケットから取り出した、手のひらサイズの小さな衣服を見て、察した。


「わたし、将来は屋敷内での仕立ての仕事も任される予定なんだけど、まだ人間サイズのは作らせてもらえないから、今はドール用で作ってるの……。でも、これを実際に人が着ているところを見てみたくて……」

「小さくない?」

「だから、キャンディちゃんに頼んでるんじゃん!」


この子、ナチュラルにわたしのことお人形扱いしてない……? ちょっと困ってしまうけれど、名家に仕えるメイドなら親しくしておけば、うちの当主のレジーナお嬢様が喜んでくれるかもしれない。これも仕事の一部と思って割り切って頷く。


わたしは少しお行儀が悪いけれど、机の上に座った。うっかり地面で縮小化してしまったら、机に乗ることは自力ではできなくなる。マイラに乗せてもらうように頼んだら良いかもしれないけれど、この子は多分人形サイズの人間の扱い方に慣れていないから、うっかり強い力で持たれたりしたら嫌だし。


そして、集中して、自分が小さくなっているところをしっかりと思い描く。たったこれだけで縮小できるのだ。小さくなっていくわたしのことをマイラが楽しそうにじっと見つめていた。


「すごい、小さくなれるって本当だったんだ!」

マイラがはしゃいでいる。

「本当だったんだって……。誰かから聞いたってこと?」

呆れたように尋ねると、マイラが大きく頷いた。


「メロディちゃんから」

「あの子……」

わたしは大きくため息をついた。


魔法を使えることをあんまり言ってほしくないわたしと、みんなに言いふらしたいメロディ。もっとこの素敵な魔法をみんなに役立てないと! とメロディはよく言っている。


そりゃ、あの子は良いよ。大きくなる方だから、カッコよくトラブルを解決できる。どんなに強い人が相手でも、メロディが100倍サイズに巨大化でもしてしまったら、勝てる人はいなくなってしまう。幼い頃はわたしたちが出会ったらお終いだった盗賊とかにだって、今のメロディなら一瞬で勝てちゃうんだから。


それこそ、もしメロディに反抗期がやってきて、日常的に巨大化をして、100倍サイズで暴れられたら大変なことになっちゃいそう。止めるには、先輩メイドのベイリーさんも一緒に巨大化するしかないのだろうけれど、100倍サイズの巨人が2人も街に現れて大喧嘩を始めてしまったら、街はめちゃくちゃになってしまいそうだ。メロディには穏やかな反抗期を迎えて欲しいところである。


そんなメロディだからこそ、魔法を使って人助けをしようなんて立派なことを言えるのだ。それに対して、わたしの小さくなる能力で人助けって一体どうしたらいいの? わたしの力を使っても、幼女に負けちゃうような大きさになっちゃうだけだよ……?

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