後日談 - 歴史は繰り返す
おまけです。
鑑定スキルが消えてから半年後。
異世界の人々は最初こそ不便を感じたものの、すぐに「自分の目で確かめる」ことに慣れていった。水が飲めるかどうかは自分で匂いを嗅ぎ、天気は外を見て確認し、武器の強さは実際に使ってみる。当たり前のことが、当たり前のように行われるようになった。
そんなある日、異世界の住人たちの前に新たな「便利なスキル」が現れた。
「占いスキル」
これは「未来のこと」「見えないこと」「可能性」を知ることができるという魅力的なスキルだった。
「占いスキル発動!この仕事は成功するでしょうか?」
「占いスキル発動!この恋は実りますか?」
「占いスキル発動!この旅は安全ですか?」
人々は我先にとこの新しいスキルを使い始めた。自分で考え、判断する手間が省けるからだ。
しかし、誰も知らなかった。
神の領域のとある新しいビル。そこには「神託占い運営会社」という名の組織があった。
そこでは、かつての神鑑社の社員たちが新たな制服に身を包み、天井から降ってくる紙に回答していた。
「神野さん、この恋愛占い急いでください!」
「すみません、今朝から占い依頼が400件くらい…」
鑑太郎は疲れた目をこすりながら、机の上の紙の山を見つめていた。彼の隣では小鳥遊さんが片手で食事をしながら占い結果を書いていた。
「小鳥遊さん、両手で食事した方が…」
「両手で食事なんてぜいたくですよ」
廊下の向こうからは、全知神の声が聞こえてきた。
「我々の占いは神の声!絶対に間違えるな!気合いと根性で乗り切れ!」
鑑太郎は静かにため息をついた。制服は変わり、社名は変わり、スキルの名前は変わった。しかし、何一つ本質は変わっていなかった。
そして彼の目の前には、「明日の天気を占ってください」という依頼が舞い降りてきた。
「外を見ろよ…」と呟きながらも、彼は回答を書き始めた。
そのうち、彼らはまた考えることをやめるだろう。
これが、占いスキル最初の日だった。