1‐6 魔物召喚
食料を棚に配置してベッドの位置をヒルドの位置から極力離して設置した後、生成した部屋とそこに出る様小物の確認、召喚の為に最奥の部屋から出て確認して回る。
先ずは畑と酪農部屋。
畑は地面が耕されてはいるけど山が出来てなくて、酪農は広さ的にも区切り的にも3種が限界。
道具は錆や欠け等の問題なしで、バカな使い方をしない限りは直ぐに壊れることは無さそう。
ただ、素置きしてたら、武具として敵の手に渡るよなコレ……。
ダンジョン移動させたら自室に持って帰ろう。
そのままサキュバス達の部屋を確認へ。娼館に行ったギルドの先輩曰く、何ら変わりない部屋でも超エロかったって言ってたから、普通の家具しかないこの部屋でいいはずだ。
そして召喚部屋を一旦素通りして1階層まで上がり焚火を確認する。
あーダメだ。薪木の束を『風刃』で不揃いにしつつ声を掛ける。
「ヒルド、不揃いにした薪を何本か何か燃やしてくれる?」
「ええ、構いませんが。今から使われるのですか?」
「いや第3者が見たときに余りに不自然、綺麗すぎるから。後からでも良いんだけど1度使い終わった風にしておきたい。」
生成した薪木は形が均一過ぎるし、焚火はこれだけの薪木と石での組立が有って使った痕跡が無いと言うのはあまりに不自然。この状態が成立する様な場所は、薪木を蓄えた後何かしらに巻き込まれた曰く付きの場所や魔物の巣。盗賊などが無知な者たちを誘い込むための狩場とかの忌避されるような場所ぐらい。
逆に不揃いの薪木がある程度有り、焚火の痕跡が残っているとなると意味は大きく変わって。
誰かがこれ程の薪木を集めれる程には洞窟外の周囲に危険な魔物がおらず、また火を起こしても問題ない程の危険性が低い洞窟と言う、冒険者に取っては有難いセーフゾーンになる。
ダンジョンでも同じ事が言え、焚火があると言う事は誰かしらが開拓を進め安全性が確保されて休息が取れる場所を表している。
まぁ、悪知恵が働く者は居るので手練れの盗賊は奴隷などを使って危険のない場所に見せかけたり、開拓も出来ていないダンジョンで出てくる魔物調査の為に他のパーティを囮にする為に軽く燃やしただけの焚火スペースを置いていたりするけど。
今回は、ダンジョンの入り口付近に作ったものなので洞窟においての焚火としての演出を移動前かつ、外が明るく煙や火の灯りが見えにくい、人が居ないうちにしておきたいのだ。
うっわ、怪しい状態だし入らないでおこう!ってなってポイントをみすみす逃したくない。
「あぁ、ヒト型が戦争中にやっていた偽装ですか、なるほど。」
「やっぱ、昔からやってたの?」
「有りましたね。ただ、我々の側には嗅覚がや聴覚が発達した種が多く居ましたから、残留してる魔力、匂い、音の反響などで離脱しているかどうか、偽装か使用済みか等は分かっていたので、罠に掛かる事は有りませんでした。今の魔物の特徴と変わっていないモノも多く居ますから。」
燃やしながら、火種や火搔き棒代わりの突く用のモノを作りながら答えてくれる。
対雌の匂いに特化したゴブリン、体液の匂いに特化したサキュバス。音だと恐らくバッド等が当てはまる。風魔法の探知魔法の中に反響を利用するモノがあるので似た感じだろう。
「そうなると、ゴブリンも召喚した方が良い?」
「目的次第ですね。侵入者への凌辱等で肉体的精神的に折るのであれば野生を配下に、優良な雌を母体や生成の素体などで汚したく無いのであれば召喚。周囲の状況把握の道具として使用するのであれば召喚、繁殖力を当てとして侵入ポイントを稼ぐのであれば野生。と言った感じに。」
なーるほどね。
上位にいるモノが何においても優先順位が高くなる為、野生を配下にするとゴブリンは嬲る遊び道具も、女体と言う性の捌け口も我慢を強いられる。我慢すればする程その反動は大きくなるし、相手にとっては圧倒的に弱いゴブリンに手が出せず暴力を受けるしかない、犯されるしかないとなれば精神的にも来る。
そして自分たちでは勝てない敵を倒せ、おこぼれるくれる存在が居るなら。お零れにあやかれる可能性があるなら喜んで伝えに来るだろう。
デメリットがあるとするなら、心から信頼出来ない事と、本能に従って不必要な事をしでかす可能性がある事。
「うーん、それなら一旦は召喚か。」
とあれこれ考えている内に大半のカットを終える。ヒルドの方は消化もして使い終えた自然な感じが演出できていた。待たせるのも悪いし、残りの薪木は無の箱に入れ、闇魔法で2人の臭いを取り除き、ゴミたちを消し去る。
「やはり闇魔法は良いですね。」
「使い方が限定的なの多いし、汎用性高い火や水の方が良いと思うけど?」
「正々堂々、正面からの戦闘は面倒くさいですから。タダでさえ目立つ火と、音か少なからず発生する水が主軸ですと、闇討ちで時短できる魔法が多い闇と言うのは便利に思えるんですよ。」
さて、戦闘の愚痴を互いに吐きながら3階層まで戻ってきた。何かに使えるかもと畑と最奥部屋に薪木を少し出してから召喚部屋に入る。
ひとまず今回召喚するのはスライム、下級サキュバス、ミミックの3種。
「魔物召喚って使い魔契約みたいに、必要な言葉とかある?」
「いえ、元から忠誠を誓う者が来ますので不要です。ウインドウを触れてポンです。」
ポンが何の擬音か分からないが言葉が不要なのは助かる。
召喚の欄から試しにスライムを召喚してみる。
ポンと音がしたと同時に煙が立ち、中から青透明のスライムが跳ねて近寄ってきた。
最近は狩って居なかったが、元々は敵対生物。一応咄嗟の行動は取れるよう身構える。
「 」プルプルプル
「………」
「 」プッ…プルプル
必要ないわ。最初、多分登ろうとしたけど即諦めて足にスリスリし始めた。
踏みそうで怖い…。一旦抱きあげて、2体ずつ召喚の形にする為に追加のスライムと、ミミックの召喚をする。
「はわっ…慈しむ御姿と可愛いのコラボ……」
聞き流しながら召喚をする。
ポンポンポン
「 」プルプルプル
「 」パカパカ
「 」パカパカパカ
言語を話さないから何言ってるか分からないが、何となく伝えたい事と表情が分かる。
ダンジョンのマスターになったからか、自分が魔族側という自認が生まれたからかは分からないが。
多分上から抱っこ、ご主人、よろしくご主人的なニュアンスを笑いながら伝えてくれてる。
取り敢えず、スライムを抱っこしてヒルドに渡し、木の箱に居るミミックを運ぼうと振り返る。
「 」パカパカ
いつの間にか足元にいた…。ミミックの移動って冷静に考えたらなんだ…?
底を覗き込んだが特に穴が開いて足があるわけでもないし、中にいる何かが出てきている訳でもない…。本当にどうやって移動したんだ…??
すごく気になるが、こいつ等も一旦ヒルドの近くに移動して、最後の下級サキュバスを召喚する。
ポンポン
煙の中からは娼館の近くでよく見る、バニー服の様な服を着た黒い羽と尻尾を持つ下級サキュバスが出てきた。
すぐ側まで近づいてきたと思うと、頭、うなじ、脇、股、足と匂いを嗅ぎだす。
「ヨロシク、ゴシュジン。イイニオイ」
「ゴシュジン、オイシソウ。オス?メス?」
「タベタイ?タベラレタイ?」
「ドッチデモイイ」
取り敢えずこの歳で臭いとか言われなくてよかった。言われてたら、結構落ち込んでた自信がある。
目の前で脱ぎだし、しゃがんで脱がせようとして来ている下級サキュバスが居るのでそんな事考えてる余裕が無くなったが。
「おーちょっと、待て待て。やりす「『火輪の刑』」…ヒェッ」
脱がそうとしてきたサキュバスを引き剝がそうと肩を持った所で、目の前のサキュバスの首と両腕へと的確に火の輪が飛んで来てそのまま近くの壁まで飛んでいった。
怖いね。股の前に火魔法が飛んできたのも怖いし、目の前のサキュバスが消えたのも怖いし、さっきまで後ろにいた筈のヒルドが壁に十字の形で磔にされているのサキュバスの前に居るのも全部怖い。
彼女が耳元で囁いたのかサキュバスが怯え切った表情になって失禁しだした。
「失礼しましたマオ様。ご希望でしたら教育も致しますので。」
その後魔法は解いてるけど、何時でも殺せる様に片手自由にして意識の1割をサキュバスに向け続けてるのは流石だなと思う。
おかげで、口悪下級サキュバスちゃんお尻以外から色んなもの出てるし、水分って事でスライムたちが近づこうとしてるし、もう一人のサキュバスちゃんは全裸で小さいミミックの後ろに逃げてるし。
「あ、あんまりやり過ぎないようにね。教育は大丈夫。」
取り敢えず捕まえられながらスライムたちが尿とかに辿りつかないよう遮りつつ、全裸ちゃんに口悪ちゃんの回収をお願いする。掃除は後でしよう。
スライムを抱え上げ、魔物達の詳細情報を見る。
スライム1・2(基本種)
種族 :スライム
出身 :ダンジョン魔王城
所属 :魔王城
性別 :無性別
得意属性:水
権限 :レベル1
状態 :親愛度/高
忠誠 :高
殺害 :0
その他 :抱っこされている今の場所が好き。周りに水が無い為サキュバスから漏れ出た液体に興味を示している。
ミミック1・2
種族 :ミミック
出身 :ダンジョン魔王城
所属 :魔王城
性別 :無性別
得意属性:闇
権限 :レベル1
状態 :親愛度/高、恐怖/低
忠誠 :高
殺害 :0
その他 :燃やされるかもしれないとヒルドに対して恐怖している。1は先ほど持ち上げられる行為と高い所が気に入った様子。
下級サキュバス1・2
種族 :サキュバス
出身 :ダンジョン魔王城
所属 :魔王城
性別 :両性
得意属性:闇
権限 :レベル1
状態 :親愛度/中、性愛度/高、恐怖/高
忠誠 :高
殺害 :0
その他 :ヒルドを畏怖すべき者と認識。マオに近づいたのは種としての本能。
〈元ダンジョンマスター〉ヒルド
種族 :魔族(龍人種)
出身 :魔族領城下街
所属 :魔王城
年齢 :261歳(人間年齢26歳)
性別 :♀
得意属性:火、水
権限 :レベル10
状態 :親愛度/最高、性愛度/小
忠誠 :最高
殺害 :14
その他 :性愛が原因で現在、下級サキュバスに対して殺意を持っている。
ダンジョンマスターになった事で権限が上がり、見える箇所が増えている。
同僚と言うか使い魔且つ部下であるヒルドに若干性的にみられてるのヤダな。教育係だったらしいのにそんな目を向けて良いのか??
まぁ、存続の為と元人間側に居た事もあって、殺害数が極端に少ないのは好印象ではある。
癒しであるスライムをぽよぽよしつつ、ミミックを撫でる。
「てっきり、スライム達にも名前とか二つ名みたいなのあると思ったんだけど。そういうの無しに召喚順の番号表記なんだね。」
「個が確立されていませんからね。個の確立をさせない限りは番号表記になります。」
【風魔法:風刃】
字のまま、風による刃を出し対象を切りつける技。そのまま技を出すこともできるが、手の振り払いや蹴り上げ等の先から出す人もいる。理由としては魔法のイメージが簡易である為。
イメージはかまいたちとかが近いイメージ。
【火魔法:火輪の刑】
火の輪を相手の要所に飛ばして磔にする技。的確に飛ばし抑えつける為のコントロールが求められる。
使い手が強くなる程、腹、足首、手首、首と抑えつける箇所が多くなる。
【スライム】
粘性の有る液体状の魔物。高純度の水、若しくは魔力を吸い育つ。
体内に有る核を砕かれるか核を覆っている液体が無くなると死亡する為、物理攻撃にも魔法攻撃にも弱い。
水、魔力を得られない環境では体が少しずつ縮み干乾び死亡するか、周囲の環境に適応し別種として進化する。
基本種は水、進化種は適応環境によって得る耐性が変わる。
【ミミック】
箱に潜む魔物と箱と一体化している魔物と言う2種の派閥がある魔物。実際はどちらも存在しており、一体化しているモノが一定量のモノや生き物を食べ進化すると箱と分離し箱とは別行動が取れるようになる。
死角にはいると移動する。