1-4 引継ぎ説明その1
当たり前のことを説明しようとするとめっちゃムズイというお話。
自分の脳内設定を言語化するのもめっちゃムズイ。
「まぁ長々と説明しても細かいところまで伝わらないでしょうから、先に引継ぎしましょうか。どうぞこちらへ」
説明を受けているうちに如何やらこのダンジョンの最深部の部屋まで来たらしい。自然型ではっきりとは分からないけれど、多分建造物で言う3~4階分の高さは下ったと思う。
手の先にあるソファーに腰掛けると横にヒルドが座る。
そうすると、突如として目の前の空間に向かって指を離したりくっつけたり、指を立てて左右上下に動かし始めた。
何やってるんだろ。
「ん?あぁ見えてないんでしたね、失礼しました。
契約なしの所属……マオ様……っと、これで見えるようになりましたかね?」
そう言われた途端、目の前に向こうが透けて見える大小様々な紙の様なモノが現れた。
本当いきなり現れたから体が攻撃魔法と判断してしまいビクッってなった。
「これはダンジョンを管理する『ウィンドウ』と呼ばれるモノです。コレを操作して魔物やダンジョンを生成していきます。
風魔法に似てる発音の物がありますが調べても関連性が見出せなかったので、人名かダンジョンの魔道具の名の名残かと思われます。」
「……これは所属していると誰にでも見えるの?」
「いえ、ダンジョンマスターとマスターが設定した者だけが操作、観る事が出来ます。権限の高さによって制限等も可能です。でないと裏切り等が発生しますからね。」
ふと心配になって口に出したけど、意図を汲み取って説明してくれた。まぁ当たり前か…
「さて、説明をいたします。」
そう言いながらウインドウを動かしてくれる。
「まず出し方ですが魔法と同じで、『ウインドウ』と短縮詠唱するか、無詠唱で出せます。
そして出てきたウインドウの中から操作したい項目を選び新たなウインドウを開きます。タブと呼ばれるこの部分で切り替えたり複数表示できます。由来はこちらも分かりません。
開いたモノは選んだ状態で左右上下に移動させられますし、指をくっつけた状態から離すと拡大、離した状態からくっ付けると縮小します。
私はコレが1番操作しやすいのですが、目の動きや発声で操作するように変更も可能です。
次に重要なタブですが…情報、構造、生成辺りですかね。
情報はそのまま運営に必要な情報や注意点等が記載されています。こちらはお時間のある時にご確認ください。他にも所有ポイント、所属者及び隷属化した者などの詳細情報も載っています。試しに開いてみましょうか」
そう言いながら私とヒルドの詳細情報を開いた。
〈ダンジョン魔王城:マスター〉ヒルド
種族 :魔族(龍人種)
出身 :魔族領城下街
所属 :魔王城
年齢 :本人及び権限10以上のみ閲覧可
性別 :♀
得意属性:火、水
付与属性:空間
権限 :レベル10
その他 :権限10以上のみ閲覧可
珍しい、ヒルド龍人種なんだ…。ていうかめっちゃ睫毛長いイケメンと思ってたけど女性なんだ…。
あと何かちゃっかり年齢隠してるけど思った以上にいtt「後でどうせ見られるので先に言いますけど人間年齢なら少し年上ぐらいですからね!!」らしい。
「ねぇ、付与属性って何?」
ギルドカードの権限の所がランク位で同じような項目が並んでいたが見慣れない項目が有ったので尋ねる。
「付与属性はダンジョンの特色によって得られる恩恵で、その属性の適性が1段階上がるイメージで、ダンジョンの規模が大きくなればなるほど段階がより増えていきます。
火山地帯の様な場所を再現すれば火や土、海の様な場所で有れば水、光源が無い暗闇で有れば闇の様な感じです。
なので空間属性が付与されている此処は『無の箱』等が扱える様になっていると思います。
また消費量は多いですがポイントを消費する事で付与する事も出来ます。ここは空間魔法が使えた先代様が初代且つ前任者扱いですので特色と反映されたか、管理を任された際に付けて頂いたかですかね。
あ、こちらも権限レベルで制限を掛けられますよ。」
わー!顔も知らないお父さんありがとう!!!空間魔法はすごく便利!!
正確には空間魔法で収納できる魔道具が便利だったって話なんだけど、空間魔法を使える人がそもそも限られていて値が張るから、そこの出費がなくなるだけでもだいぶ違う。
ちょっとニマニマしながら自分のステータスに目を移す
〈魔王の子〉マオ
種族 :魔族(純血種)
出身 :魔王城
所属 :魔王城
年齢 :16歳
性別 :♂
得意属性:闇、風
付与属性:空間
権限 :レベル9
その他 :権限10以上のみ閲覧可
魔王の子!純血!魔王城生まれ!!丁寧に現実を突きつけられた。いやまぁ、体がメキメキメキって変わったりした訳じゃ無いから別に良いんだけど。人として生きてきたのに突然違うと突きつけられるのは結構クる。
「はぁ~……あ、ヒルド。無の箱の詠唱って何て言うの?」
「無よ、我が万物を受け入れよ。ですね。消費魔力量は初級~中級位です。」
「ん、ありがと。
無よ、我が万物を受け入れよ『無の箱』」
詠唱が終わると目の前に円形の穴ができる。感動を抑えつつ、目の空間に、当分は使わないであろう財布等の物を入れ込む。おぉ~…
「お楽しみの所申し訳ないのですが話を進めますね。
次はダンジョンの全体構造です。
階層を指定しますとその階層情報を見る事ができ、必要で有ればこのように立体表示させることも可能です。設定すれば、ダンジョン内の私達の位置や侵入者の位置をマーク表示が出ます。隠密系の上級魔法などを使われた場合表示されないこともあるので注意が必要です。」
ふむふむ立体で見ると普通の洞窟に見えるけど、階層表記としては3階層となっている。
「そして此方が生成ですね。私的にはココしか使わなかったと言っても良い位です。
魔物生成は御覧の通り基本低級しかいませんが、一部は保管している間に処理した侵入者の影響や時間経過で解放されたらしく生成出来るようになっております。
他にも我々の食料や植物の種、日用品道具、装備であったり魔道具、侵入者にとってのお宝アイテムも此方から作成になりますし、ダンジョンの部屋や階層も此方からになります。」
説明を受けながらタブを操作して生成一覧を見る。
魔物生成にはスライム、ゴブリン、コボルト、スケルトン兵、ゾンビ、アルミラージ、ミミック、低級サキュバス、ガーゴイル等が並んでいる。
侵入者の影響と言うのが解放条件がダンジョン内で人間の死体を発生させるとあるスケルトン兵とゾンビ、時間経過で解放が恐らく低級サキュバスだろう。最悪、魅了を掛けたらダンジョン内に連れ込めるという救済処置だ。
食料は余裕が出れば問題ないけど、長期的に考えるのであれば畑等の自給自足部屋を作るのが正解っぽい。薬草の種も有るけど、市場で売られている効力が少し高い薬草類が見当たらないから一定量の収穫とかしないと出ないのかな?鍬や添え木、水桶が異様に安いからそういう事だと思う。
最後に部屋・階層。
普通の部屋から始まり何もない部屋、拷問部屋や牢屋、畑や牧場といったモノが並んでいる。こっちは豪華さや広さによって消費が増えていく形らしい。
階層の方は生活階層を除くと洞窟、森、平原、湿地、沼地、湖畔、海、火山地帯、雪原、砂漠、荒廃した地など様々なモノがある。自然的か人工的か選べ、消費が激しいが組み合わせる事も可能らしい。
「ねぇ聞いていい?」
「ええ、何でしょう?」
「組み合わせでもないのに消費が多かったり、中途半端な消費があるのは何で?」
部屋も階層も分かりやすく切りのいい消費に対して、えらく中途半端な『普通の部屋』が目に入った。
「それは今いる此処を生成地点としているからですね」
??
「載っている部屋は設置物が固定される代わりに纏めて配置されるセット売りみたいなものです。
ここは元々何もない部屋で私とマオ様の生活道具を取り揃えて置いてある状態なのですよ。そこを『普通の部屋』で上書きした場合、元々の部屋で消費したポイントの半分が消え、半分が還元される様になっています。還元の値が上書き先より越えている場合は無料で置き換えられ越えた分はダンジョンへ、越えなかった場合はその分の数値だけ引かれる形になります。
分かりやすく言うのであれば下取りを含めたポイント消費ですね。」
「じゃあ最初から普通の部屋にすれば良くない?」
「セット売りの中のあれこれが要らないとなった場合半分しか戻ってこないので小さいですが損になるんですよね…。なので『普通の部屋』とかを設置する場合は共有スペースなどの方がよいと思います。
因みに生成地点を先程通ってきた通路の横に繋がる形で生成するようにすれば下取りの無い表記になると思いますよ。」
あ、本当だ。タブで光ってる生成場所ズラしたら消費量が変わって切りの良い数字になった。
「消費が多い点に関しては、関連性が低いからです。」
「関連性」
「はい、現在の階層…というか全ての階層は自然的な洞窟で生成しています。ここから新たに階層する場合、鍾乳洞や坑道など有って可笑しくないものは関連性が高いと見なされ通常の消費、多く生成していたら低くなることも有ります。
ですが…例えば火山地帯の先に雪原が現れたらあり得ないと言う事で関連性が低いと判定され、消費が多くなります。」
「え、じゃあ基本的に特殊って言ったら違うかもだけど、この辺りの階層とかは1回設置するまで高いままなの?」
「両者の関連性が高い地形を階層として設置すれば解決なのですが解放されないと高いままですね。
解放するには魔物や設置物がキッカケで載っている部屋に判定が変える必要があり、こちらもそこそこの消費をする形になるので、関連性が低い所の魔物の解放が目的であったり、その先を低い所に関連する階層にしていくならば割り切って設置する方がお得な場合もあります。」
あー緩衝材となる間の地形が必要になるけど、そもそもその地形を解放するのに時間もポイントも必要になってくるワケね。
毒が溢れる階層に繋がる地形が欲しい場合。例えば湿地→沼地→の流れで毒性を持った沼地が欲しいとして、毒性のある魔物や設置物を置いて全体的に毒性を持った地形、毒の沼地(仮称)に変えないといけない。ただ、毒性の魔物を解放するには先に毒が溢れる階層を作っておかないといけない。
「え、面倒くさ!!」
「ご理解が早くて助かります」
助かりますじゃないが
用語解説
【〇属性/魔法】
〇に対応する総称。火・水・土・風・光・闇が基本であり、6属性を元として自然界にあるモノを属性として数多の派生をしていく。
単体で派生する属性(例:水→氷)もあれば、複数属性(例:火×土→マグマ)により派生する物もある。
また空間や時間など、そもそも使える者が限られる属性や魔力消費や代償が大きいが故使われない属性もある。
【詠唱】
魔法を発動する際、イメージする姿形を明確にするための呪文。自分の中で明確にイメージが出来ている場合短縮詠唱と呼ばれる発動する魔法名だけを唱えるものや、何も発声せず発動させる無詠唱が出来る。
同じ魔法でも後半に行くほど消費魔力が通常より多くなる。
また同じ魔法でもイメージした形が違う場合、当然違う形で現れる。教育機関では統一した姿形を手本として見せ詠唱と紐づけ、事故等を防いでいる。
(バリアが自分中心に円で展開する人も居れば、前に障壁を出すイメージの人も居るよねという話)
【〇〇級(魔法)】
魔法の習得のしやすさや、発動のしやすさ。魔力消費量の少ないモノほど級が低くなる。
大まかに初級、中級、上級、最上級と分かれ、使う事を許されない魔法などは禁忌などと呼ばれたりする。
【〇〇級(魔物)】
魔物の強さや危険性から分類される。下から低級・中級・上級・最上級と分かれる。それを上回るモノが現れた時は災害級などと呼ばれたりする。
【空間魔法:ボックス】
生きているモノは入れる事が出来ないが、中では時間が経過しない為鮮度などが保たれる。
その為、冒険者において空間魔法の魔道具は必需品であるが値が張る為、手に入れてからが冒険の始まりと言う人も居る。
【龍人種】
龍種とヒト型との間に生まれた種族。ハーフではあるが龍種の強さと寿命の長さ、ヒト型の素早さ、ヒト型の強い所を引き継いことが多い。
強さから迫害はされないが龍人種同士で番になり総数が減るか、ヒト型と結婚し血が薄まっている傾向にある。
【下級サキュバス】
精や魔力を吸い取る魔物。魅了等で人間の子供などを攫い、巣で吸い尽くし利用価値が無くなったら殺す。或る程度腕の立つ冒険者などは拘束して性欲解消に利用する。また、鎖等で繋ぎ娼館に置かれていたりする。