1-2 逆召喚
勢いと行き当たりばったりで書いていきます。
最近、性癖の広がりが凄いので誰かしらに刺さるモノを共有出来たらなと。
次に目を開けるとそこは何処かの洞窟、何故かあるベッドに横になっている私、そして頭の下にある柔らかくも筋肉質な触感と、そして見知らぬ面が異様に良い誰かが私の顔を覗き込んでいる様子。睫毛なっが…
「お気づきになられましたか。再び相見える事を嬉しく思います、マオ様。
召喚で来ていただいた際は受け止めましたので外傷とは無いと思いますが…お体に違和感などはありませんでしょうか…?
本来はわたくしが全ての魔力負担を持ち、一切の負担なく来ていただく筈だったのですが、無理矢理召喚されようとした何者かがいたようで……」
「ん???んん…怠いだけで大丈夫ですけど…ここは」
会った事も無い美形の人?(おそらく使い魔)が居る事や、複数召喚に成りかけていた事とか様々な困惑が脳を支配しながらも一先ず目の前の使い魔(予定の者)の話を聞く。
「あの…ここ何処……ですか…?というか会った事も無いと思うんですけど、どちら様で……」
あ、この世の終わりみたいな顔になった。肌が綺麗なせいで顔が異様な程に顔面蒼白。
「そうですよね…マオ様とお会いしたのは、先代魔王様と妃様に後継者の誕生の祝いの詞と品をお持ちした際ですものね……赤ん坊で私の事など覚えておられませんよね」
といじけながらも目の前で拳も入らない位の間隔を手で表しいる。魔王…?
「魔王って何の話を…?」
そう聞くと、目の前の人は優しい目をしながら私を起こしてベッドに座らせる。
そして、私の目の前で片膝をつき首を垂れる。
「改めて自己紹介を。これより死で別たれるまで貴方様に仕えます魔族が一人、名をヒルドと申します。
本来は貴方様の教育係の予定でございました。
ここは先代様から後継者でありご子息であるマオ様を見つけ、成長し引き継いでも問題ないと判断する時まで管理を命じられておりました、これより新たな魔王城になりますダンジョンの一室でございます。」
ヒルド曰く、自分は魔王の血を継ぐ者で、ここはダンジョン。ふむ。
確かに自分は親無き捨て子としてギルドに拾われたけれども…
「あの~。ここから帰して貰うことは?」
「お断りします」
「何かの間違いではないですか…?そもそも前魔王の話って百年以上前の話で年齢が合わないというか…」
「それはおそらくではありますが先代様が、攻め入ってきた人間に対し、敢えて子がいると伝えられていたので、人間達に魔女狩りの様な虐殺をさせつつ、貴方様の命が刈り取られないようダンジョンの機能、もしくは時間魔法や空間魔法等で数十年時を止めておられたからでしょう。
約十五年程前に、貴方様の魔力を微力ながら感知出来るようになり始めましたので、経過時間や魔族の総数が一定数に減少した等、何らかの事が理由で解除されたのだと私は思っておりますし、大きく外れている予想ではないと思います。」
…拾われた時の様相。包まれていた布やカゴ等から、昔の風習が残る農村から子供だけでもひもじい思いをさせない様に置いて行かれたとギルドの人が言っていたけど、当時の風習がそのまま時を越えたのなら……。
それにギルドカードに記載している今の年齢は推定年齢の十六歳であるし、歴史書で魔王城からそう遠くない所に位置する町村に住む子と母親を対象とした殺害を国が行った記録が有る事も知っている。
「……使い魔契約は…?」
「そちらはもう喜んで!!血の契約でも魂の契約でも構いません!
しかし、先代様との約束もありますので少なくともこのダンジョンを引き継いで貰う事が求める対価となります。つまり儀を行った所、学園に戻ることは出来ません。」
使い魔の契約には幾つかの種類が有るが大まかには三つ。
血の契約
契約主が死亡した時解除されるが召喚されたモノの能力が一部制約される契約。
契約内容にも依るが契約の中では軽いモノの為、主が絶対ではない。
扱いが酷い場合は使い魔側から契約を切られる事が有る。
魂の契約
契約主が死亡した時共に死亡するが、一切の制約等が掛けられない。
血の契約をしたモノ達の信頼関係が築かれた場合、コチラの契約に切り替える事が度々ある
隷属の契約
契約主が死亡しても死ぬ事は無いが、多くの能力に制限が掛けられる。
使い魔契約では殆ど見ないが、奴隷等の契約はコチラが基本。
「あの方の事を思うのであれば魔王マオの名が、このダンジョンの名が広まる程の事は成して戴きたいですが…。
ですが、私が今仕えているのはマオ様です。貴方が望まないのであれば強要はしません。侵入者を殺し、犯罪者等をダンジョン内で殺し、ここの存続だけしていただければ十分です。
対価の条件を呑んで戴けない場合は心苦しいですが飲まず食わずで弱るのを待ち、此方が主という形で無理にでも契約を結んでいただきます。」
世間一般的にダンジョンには多くの宝や魔力が満ちる部屋があり、ダンジョンを踏破をした者は名声と巨万の富を手に入れれると言われている。そこの管理者になると言う事は、様々な冒険者や国から命を狙われる立場になる。
だけど、今の自分に断る事は出来ない。少なくとも百年近くは生きているビルドという魔族、何処に位置するか分からないダンジョン、そして魔族の、魔王の血を引き継いでいるという事。
「…わかった。契約しよう。」
まぁ…帰った所でギルドとかの上位層の人間に一般的な種族でないことは一目で見破られるだろうし、良くても監視、収監辺り。一番最悪なのは魔族の根絶という名目で魔力や血液を利用する人体実験辺り。
あー正直置いてきたエルの事が心配。あと色々面倒を見てもらったギルドの人たちに申し訳ないけど…戻れないよなぁ……。
そんな事を思いながら、ポーチに入れていたナイフで指を切りビルドに差し出した。
「賢明な判断に感謝を。契約に関しては魂のでもよかったのですが……」
そう言いながらビルドは血を指ですくい舐め、自分の指を爪で切り差し出してくる。
「アム…ジュ…チュル…ンプファ」
意趣返しで指ごと舐めて血の契約を結んだ。
こうして魔王の私、マオは誕生した。
「ハッ…ハワッ……ワッ」
感情が幼女と化したヒルドも誕生した。
用語解説
【逆召喚】
通常の召喚が対象を自分の元へと呼び出すものに対して、対象の先に呼ばれる事。
逆召喚が出来る=召喚主より力量が何かしらが秀でているというのが基本。
1-1で出した代々同じ種族をパターンでも、問題ないかと言う事で呼ばれることもある。
【ダンジョン】
1-3で説明予定。