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5話「便利な魔法と楽しいお茶会」

 マオンから花束を貰った。

 呼び名も確定した。

 だが彼はまだ何か言いたそうな顔をしている。


「まだ何か用があるのでしょうか?」

「え、あ……じ、実は……」


 彼はもごもごしている。言いたいことを言おうとしてはいるようだが、なかなか勇気が出ないのかもしれない。彼はまだ、はっきりと言葉を発することはできていない。


 取り敢えず待ってみよう。

 そう思って彼を見つめつつ黙っていると。


「でき、れば……茶、いや、お茶、でも……どうです……?」


 彼は時折声をぶるぶるさせてしまいながら、そう提案してきた。


「お茶を飲む、ということですか?」

「はい」

「もちろん、構いませんよ。ぜひよろしくお願いいたします」

「あっ……ありがとう、ございますっ……!」


 マオンは頭を下げた。


 魔王だというのに、他者に、こんな軽く頭を下げて良いものなのか? しかも、ただの妻候補の人間だというのに、大丈夫なのか?


「では準備を……させてきます、ので。また後ほど、お会いしましょう」

「はい。ありがとうございます」


 マオンは去っていった。

 部屋に残ったのは私とヴァッファリーナだけ。


「ローレニア様、茶会までに、少し髪をまとめられてはいかがでしょうか?」

「え。私ですか?」

「はい。邪魔ではありませんか? 垂れていると」


 気にしていなかったが……確かに、言われてみればそうかもしれない。


「よければ、おまとめいたしますよ」


 なぜそこまで積極的なのだろう、と思いつつも、お願いしてみることにした。

 で、作業は数秒で終わった。

 ヴァッファリーナは魔法を使って私の髪をまとめたのだ。


「完成しました」

「えっ」


 まさかの展開。

 もっと時間がかかるものと思っていた。


「驚かれているようですね」

「早いですね!?」

「魔法ですので」

「魔法……そのようなこともできるのですね、凄く便利ですね」




 それからしばらくして、ヴァッファリーナに案内され中庭のようなところへ向かった。

 私がそこに到着した時にはマオンは既にそこにいた。


「お待たせしました、マオン様」

「い、いやいや、いえいえ、待っていません」


 いちいち顔を赤くするマオンを見ていると、失礼ながら、つい「この人が魔王で大丈夫なのかなぁ?」などと思ってしまう。


「あ……あの……」

「何ですか?」

「か、髪……綺麗、ですね……素晴らしい髪型で……」

「ヴァッファリーナさんにしていただいたのです」

「あっ……そう、でしたか……とても、よく、似合って……いる、と、思います」

「ふふ。ありがとうございます」


 それから私たちは美味しいお茶とお菓子を楽しんだ。

 ここではどんなお茶がよく飲まれているのか、それさえ知らなかったので、どんな怪しいお茶が出てくるのだろうと心配もした。けれども普通のお茶、普通の紅茶であった。これまでにも飲んだことがあるような紅茶だったので、特に気分が悪くなることもなく、安心して口にすることができた。

 一方でお菓子はあまり目にしたことのない見た目のもので。クッキーのようなものながら見たことのない木の実が見えていた。が、それも珍しいのは見た目だけで。口に入れてしまえばおかしな点はなく、爽やかな甘さが食べやすいクッキーであった。


「あ、このクッキー美味しい」


 自然とこぼれて。

 でも。


「そ、そそそ、それ! 自作クッキーですよ!」

「え。手作りですか」

「はい! そ、そそ、そうです!」

「美味しいです」

「良かった、です……! 良か、った……!」


 マオンが嬉しそうにしていたので安心した。

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