勇者一行VS僕と友達
その後、【名もなきジョブ】の緊急会議を開くと、僕以外全員がアマリアさんに賛同した。
今のままでは、三人が魔人メフィストに殺されるのが目に見えているからだ。
確かに今のままでは、門番のゴーレムさえ倒せない可能性があった。
「おはようございます」
礼拝堂で一夜を明かした勇者様一行は、完全装備で待っていた。
「ジュンイチさんが【名もなきジョブ】のリーダーだったのですね。昨夜、司祭様からお話しを聞かせて頂きました」
「そうですか。昨夜、アマリアが言っていたように、僕とガイアとポセイドンの三人でお相手しますので、よろしくお願いしますよ」
「【名もなきジョブ】全員でも構いませんよ」
ガイアとポセイドンがドラゴンだとは聞いていないようで、笑みを浮かべているカズラさんは余裕の表情をしている。
「三人で大丈夫です」
「そう。ケガをしてもラブリーヌが治療をしますから、全力で掛かってきなさい」
「分かりました。ここでは狭いですから、草原に移動しましょうか」
僕は前線から身を引いて、ガイアとポセイドンに任せた。
二人には、勇者様とツハリーさんを鍛えるように指示をしておいた。
「準備はいいかな?」
何も持たないガイアと対峙したツハリーさんが、家宝だと言っていた大剣を構えた。
「いつでも構いませんよ」
ガイアが地面に衝いた手を上げると、全身を隠せる程の大盾が握られていた。僕でさえ見るのは初めてなのだから、勇者様一行の驚きは計り知れないだろう。
「行きます!」
怪力がありそうなツハリーさんが、大剣で斬り掛かっていった。最強の戦士と言われているオルタナさんより、機敏な動きだ。
ガン、ガンと大きな音を立てて大剣が盾を打つが、当たり負けしないガイアは平然と立っている。
大剣を普通の剣のように扱うツハリーさんの攻撃は凄まじかった。次第に打撃力が増し、常人なら盾ごと弾き飛ばされて骨折するか息絶えているだろう。
「その程度ですか?」
一歩も動かないガイアが持っている大盾にヒビが入るが、直ぐに修復されてしまっている。
「ラブリーヌ、頼む!」
初めは余裕があったツハリーさんが、険しい表情になっている。
「分かりました。我が友に神の力を与えたまえ。オーバースキル!」
ラブリーヌさんが翳したステッキから白い光りが走ると、ツハリーさんの逞しい体がさらに膨れ上がった。
「行くぞ!」
一振りするたびに風を巻き起こすツハリーさんの大剣が、数撃で大盾を打ち砕いた。
「素晴らしいですね」
笑みを零すガイアは、地面に手を衝くと大剣を引き抜いた。
「嘘だろ!」
ツハリーさんは驚きながらも攻撃の手を休めなかった。流石は一国を率いる武将である。
地響きがしそうな大剣同士の打ち合いは、ツハリーさんが息を切らして跪くまで続いた。
「貴方も準備はいいですか? この剣は聖剣エクスカリバー、大地おも切り裂く剣です。覚悟して掛かってきなさい」
ドラゴンのエンブレムが入った派手な鎧を着たカズラさんは、光を纏わせた剣を構えている。
「いつでもいいですよ」
水色のロングコートの裾をはためかせているポセイドンは、青い刃のロングソードを片手で突き出して挑発的な態度を取っている。
「行きます!」
鎧を着てもスピードの落ちないカズラさんの速攻が、ポセイドンを襲った。
一瞬で勝負が着いたかと思われたが、ポセイドンは青い刃を軽く横に動かしただけでカズラさんの攻撃を躱している。
「消えた?」
ポセイドンの動きについていけないのか、カズラさんが目を擦っている。
「まだまだですね」
ポセイドンが挑発を止めない。
「本気で行くわよ!」
カズラさんがフェイントをかけながら、多彩な攻撃を仕掛けていった。
僕には二人が止まった一瞬しか見えていないが、激しい攻防戦が続いているようだ。
「ラブリーヌ、お願い!」
動きの速さで負けるカズラさんは、援護を求めた。
「分かりました。我が友に神の力を与えたまえ。オーバースキル!」
ラブリーヌさんがステッキを翳すと、カズラさんの全身が白い光に包まれた。
「勇者を甘く見ないでよ!」
光と化したカズラさんが、静止したポセイドンにぶつかっていった。
「そんな無防備な攻撃だと怪我をしますよ」
ポセイドンは突っ込んでくるカズラさんを斬りにいった。
派手な鎧に当たった青い刃が折れて、空に舞飛んだ。
「勇者の武具にはどんな打撃も攻撃魔法も効かないのよ。これまでね、躱さないと怪我をしますよ」
カズラさんが振り下ろした聖剣エクスカリバーを、ポセイドンは青白く光る掌で簡単に受け止めた。
「そんな!」
斬れない物はないと言われている聖剣エクスカリバーを、片手で受け止められて驚愕しているカズラさんは、腹に蹴りを入れられて吹き飛んだ。
「どんな時も油断をしてはいけませんよ」
ポセイドンは折れた剣をトライデントに持ち替えている。
(ドッペルゲンガーに騙されたお前が言うか)
ポセイドンの高速の突きに、一方的に押されているカズラさんに同情した。
「まだ終わらないわ」
カズラさんはかなりの負けず嫌いなのか、気合を入れると果敢にポセイドンに向かっていった。
聖剣エクスカリバーとトライデントの打ち合いは、空気を震わせて、イナズマを発生させながら続いた。
「「参りました」」
激しい攻めを繰り返していたカズラさんとツハリーさんは息を切らして座り込み、ラブリーヌさんは心配そうに二人を見ている。
「私達でも魔人メフィストには勝てないのよ。勇者様にはもっと修行を積んで魔人メフィストを倒して貰いたいわ」
アマリアさんが何時ものドヤ顔をしている。
「はい。修行に励みますので、ご指導をよろしくお願いします」
「ワシもじゃ、よろしくお願いする」
三人は並んで頭を下げている。
「任せなさい。ここを旅立つ時は、今の十倍は強くなっているわよ」
アマリアさんが前面に立ってくれるので後は任せようとした時、
「リーダーのジュンイチさんには、どのような力があるのですか?」
と、革鎧姿に戻っているカズラさんが聞いてきた。
「僕はテイマーなので、ハーモニカを吹いて動物を従わせたりするだけですよ」
ツハリーさんが僕を見詰めているが、苦笑いで誤魔化した。
「その二頭の犬もそうなの?」
「そうです。サスケとツバキと言います」
「忍者みたいな名前ね。肩に乗っている変わった鳥もそうなの」
「そうです。フェニックと言います」
「貴方が皆のリーダーなのでしょ、よろしくお願いするわ」
「僕には戦は良く分からないので、リーダー代行のアマリアと相談して貰えますか」
「分かったわ」
「僕は畑仕事がありますので、これで失礼します」
勇者様一行の指導はアマリアさんに丸投げした。
その日からアマリアさんの指揮のもと、特訓が始まったようで、夕方になると疲労困憊の三人の姿を見かけるようになった。




