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幕間14【氷結の薔薇】のカトレア


 私は最強冒険者パーティー【氷結の薔薇】のカトレア。冒険者の間では博識の聖女と呼ばれている。


 今回はギルドマスターから直接依頼された仕事で、フレッツ王国宮廷軍の護衛任務だった。

 他にも三組の冒険者パーティーも一緒だったが、カスばかりで役に立ちそうになかった。


 宮廷軍は騎士五十名、魔術師三十名の調査団で、規模からしてかなり大掛かりな調査のようだった。


 出立して暫くすると強敵のワイバーンが三体襲ってきたが、可哀想にリーダーとフロリダにあっさりと倒されてしまった。


 私達の実力に感動する冒険者と軍人がいるなかで、【名もなきジョブ】のメンバーは関心がなさそうな態度だった。特にリーダーのジュンイチにいたっては、誰とも目を合わさないようにしているように見えた。


 そんな中、オルタナが【名もなきジョブ】に喧嘩を売ってしまった。

 オルタナに勝てる戦士は近隣の国を探してもいないのに、【名もなきジョブ】のポセイドンと言う二枚目の青年が試合を受けてしまった。


 命さえ落さなければ私の魔法で治療が可能なので、あえて止めもしなかった。

 勝負は一瞬で終わると思ったが、オルタナの剣戟が全て躱されてしまっていた。


「止めなさい、殺す気!」

 負けん気の強いオルタナがスキル、岩切剣を放とうとしたので、リーダーが慌てて叫んだが間に合わなかった。


 オルタナが大剣を振り切ると、砂埃を巻き上げる突風がポセイドンに向かっていったので私は目を閉じた。体が真っ二つになってしまったら、私の聖魔法がどんなに凄くても助けることは出来ないのだ。

 目を開けるとポセイドンが平然と立っていてオルタナが膝を衝いていたので、スキルを放つのを寸前で止めたのだと胸を撫で下ろした。


 今回の任務は何かに呪われているのか、翌日は凶暴化したビッグベアーと出くわしてしまった。


 【氷結の薔薇】全員が全力を出してビッグベアーを倒したが、調査団は凶暴化したオオカミの群れに囲まれてしまった。


 【氷結の薔薇】が戦えない以上、全滅を覚悟しなければならない状況だった。


 ♪~~~♪~~~♪‼。


 オオカミの群れが臨戦体勢に入ったとき、不思議な音が聞こえてきて突然睡魔が襲ってきた。




 目が覚めると、オオカミの群れは山に戻っていくところだった。【氷結の薔薇】がビッグベアーを倒すのを見て、尻尾を巻いて逃げていったようだ。


 調査団が目指していたダンジョンの入り口にはゴーレムが二体立っていて、無謀な隊長の命令で戦いを挑んだ宮廷軍に死者と重傷者が多数でてしまった。


 私の魔力も殆ど残っていなくて、軽症者の応急手当ぐらいしか出来ずに歯痒かった。


「カトレア、一緒に来なさい」

 アルカイン氏と会話をしていたリーダーが、私を【名もなきジョブ】のリーダーであるジュンイチの元に連れて行った。ひ弱そうでおどおどしている男に何の用があるのか分からなかった。


「ジュンイチ殿、カトレアの魔力を回復して貰えないだろうか?」

 冴えない男にリーダーが深々と頭を下げているので、私はキョトンとなってしまった。人の魔力を回復させるには、相手を絶対的に上回る魔力がないと不可能なのだ。


 ジュンイチは渋い顔で、血まみれで唸っている騎士を見渡している。

 私は怪我人の手当てをする時間が惜しかったが、リーダーは頭を下げたままじっとしていた。


「構いませんが、僕の事は人に話さないで下さいよ」

 ジュンイチは何でもないことのように言うと、見慣れない服の内ポケットから光る物を取り出した。


 後で知ったのだが、それはハーモニカと言う楽器らしかった。


 ♪~~~♪~~~♪‼。


 ジュンイチが私の肩に片手を乗せてハーモニカを吹き始めると、体内に少しずつ魔力が流れ込んできたので驚いた。


 ♪~~~♪~~~♪‼。


「凄い魔力だわ!」

 私のマジックポイントは2000を超えているのに、急速に満たされていくのでジュンイチを見詰めた。温かみのある魔力が大量に流れ込んできて、疲労感も吹き飛んでしまった。


 ジュンイチの魔力は温かく、聖女である私以上に癒しの力あり、格下だと思っていた男に敬意の念を抱いた。


 ジュンイチ様に礼を述べた私は、重傷者の治療に全力を尽した。


 魔力が切れても補充して貰えると思うと、惜しみなく聖魔法が使えて多くの重傷者を治すことができた。


「リーダー、彼は何者なんでしょうか?」


「分からないけど、アルカイン・カーソル氏が推薦した冒険者だから、私達が知らない強者なのは間違いないわ」

 リーダーが今まで見せたことのない輝いた瞳で、ジュンイチ様を見詰めていた。


 私もジュンイチ様に憧れの眼差しを向けていると、【名もなきジョブ】の会話が聞こえてきた。


「リーダー。さっさとゴーレムを倒して、ダンジョンの奥を調べた方が良いんじゃないですか?」


「このままにしておくと、また厄介事になると思うわよ」

 アマリアさんとユリナさんが、ジュンイチ様に詰め寄っていた。


 宮廷魔術師の集団攻撃魔法にも耐えたゴーレムを倒すなんて、無茶なことを言うものだと呆れ返った。


「まだ準備が整っていないから、今は止めておこう」

 ジュンイチ様が小さく首を振っているので驚いた。


 ユリナさんの最強魔法でも倒せなかったゴーレムをジュンイチ様は倒せるのだと、【名もなきジョブ】のメンバーの会話から推測できた。


 オルタナを負かしたポセイドンさんといい、ジュンイチ様といい【名もなきジョブ】は、最強を名乗っていた【氷結の薔薇】より遥かに格上の冒険者パーティーだと認識させられた。


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