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バーニドアで捕まる


 荒れ果てていた大地をガイアの力とユリナさんの魔法で開拓を始めて三ヶ月、トライ村の周辺では麦を蒔く準備が進んでいた。


 北の大地の生活にも慣れてきてこのまま平穏な日々が続く事を祈ったが、厄介事は僕を解放してくれなかった。


 サスケを伴ってフレッツ王国の首都バーニドアで買い物をしている時、アルカイン・カーソルさんに声を掛けられた。


「久し振りだね、ジュンイチ君。娘は元気にしているかね?」


「ご無沙汰をしております。ユリナさんは元気にしておられますよ」


「それは良かった。君に少し話しがあるのだが、構わないだろうか?」

 アルカインさんは偶然を装っているが、僕が時々買い物に来ているのを知って部下に探させていたようだ。


「構いませんよ」


「そうか、では我が家に寄って行ってくれないか」

 アルカインさんの深刻そうな表情をみると嫌な予感しかしなかったが、逃げ出す訳にもいかずお屋敷にお邪魔した。


 奥様が僕を見ると何か話したそうにしていたが、アルカインさんに急かされて挨拶だけしか出来なかった。


「君達がダーダー連合国で巨大ムカデを倒した事は、父から聞いているよ」

 職務室に入るなり、アルカインさんが切り出してきた。


「そうですか」

 コミュニケーション力のない僕は、相槌を打つ事しか出来なかった。


「父の話しでは、その後の調べでも巨大化の詳しい原因は分からなかったそうだが、君には何か思い当たる事はないかね?」


「アルバインさんに報告したこと以上の事は分かりません」


「そうか。魔人メフィストについて、知っている事があれば聞かせてくれないか?」


「構いませんが、その前に何があったのか教えて貰えませんか?」

 一方的な質問で要領を得なかった。


 ソファーに腰を下ろしたアルカインさんは、深呼吸をするとフレッツ王国で起きている事件を話して下さった。


 フレッツ王国に残されている辺境の未開地で新しいダンジョンが発見され、多くの冒険者が探検に出掛けたが大半が戻らず、戻ってきた冒険者から巨大生物が出たと言う報告があったらしいのだ。

 それで宮廷軍の調査隊が派遣される事が決まり、アルカインさんが色々と情報を集めておられるらしかった。




「情報は多いほうが、危険が少なくなるからね」

 アルカインさんは笑おうとしておられるが、頬が引き攣っていた。


「フレッツ王国の軍隊でしたら、出来たばかりのダーダー連合国の軍隊とは桁違いに強いから心配はないのではありませんか?」


「どんなに強い国でも、魔人に勝てるような軍隊を持っている国はないよ」


「そうなのですか」


「魔人メフィストについて知っている事を、全て教えてくれないか」

 アルカインさんが真剣な表情で身を乗り出してきた。


「ダーダー連合国で巨大化事件を起こしていたのはミノタウロスで、そのミノタウロスを操っていたのが魔人メフィストだったのですが、魔人メフィストは僕達が倒したミノタウロスを抱えて消えてしまったので、魔人メフィストの事は良く分かっていません」


「君達が倒したミノタウロスは強かったのかね?」

 アルカインさんは、僕の横で寝そべっているサスケに視線を落とした。


 強かったと言えば自慢しているようだし、弱かったと言えば嘘になるし、返事に困って黙っていると、


「それほどの敵だったか。そしてそのミノタウロスを操っていたのが魔人メフィストだとすると、その力は想像を絶する物なのだろうな」

 視線を僕に戻したアルカインさんは、表情を歪めていた。


「貴重な情報をありがとう。ダンジョンの調査には万全を期すよ。時間を取らせてすまなかったね、妻がお茶でも淹れるから飲んでいってくれたまえ」

 アルカインさんは何か言いたそうにしておられたが、それ以上は口を閉ざされたままだった。




 職務室を出ると奥様が待っておられて、食卓に招かれるとお茶とお菓子が準備されていた。


「ユリナは元気にしていますか?」


「元気ですよ」


「ユリナは今、何をしているのですか?」


「ユリナさんは北の大地で、魔法を使って荒れた土地を農地に開拓していますよ」


「そのような事を。危険な戦いをしていなくて安心しましたわ」

 奥様の顔が少しだけ明るくなったように見えた。


「たまには家に帰るように言っておきますよ」

 両親を亡くしている僕は、両親に気遣われているユリナさんが羨ましく思えた。


「お願いするわ」


「では、これで失礼します」

 お茶を一気飲みして帰ろうと思った。以前お世話になっていたお屋敷だが、豪華過ぎて落ち着かないのだ。


「私が口を出すような事ではないのですが、どうか主人を助けて下さい」

 突然、奥様が頭を下げられたので驚いた。


「どう言う事でしょうか?」


「何でも、今回の調査隊の副指揮官になるそうで、資料集めに苦労しているようなのです」


「そうでしたか、僕に出来る事があればお力添えいたします」

 最後にアルカインさんが呑み込んだ言葉は、護衛の依頼ではないかと考えた僕は、帰って仲間と相談をする事にした。


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