幕間7天上界のディフラント神
天上界は宇宙空間に、星のように職務室が点在している。
その中で最も豪華な部屋が儂の職務室なのだが、今そこに神官服を着た男が入ってきた。
「ディフラント神様、天上界から持ち出された魔力融合装置の停止が確認されました」
男は地上のエネルギーの変動を監視させている神使の一人だ。
「直ぐに回収してまいれ」
「それが、装置その物の反応が消えてしまいましたので、所在が不明になりました」
男が困った表情で説明している。
「監視していたのではないのか?」
「はい。先ほどまでレーダーで、エネルギーの放出と装置の位置は確認出来ていましたが、突然両方が消えてしまいました」
「エネルギーを放出している魔力融合装置には、特殊な防護服《聖なる衣》がなければ我々でも近づけないのに、誰かが壊したとでも言うのか?」
「分かりません」
「そうか。もう一つの魔力分離装置はどうなっている?」
「反応がありませんので、今も魔族界にあるものと思われます」
「装置の探索と、北の大地の変化を調査して報告しろ」
「分かりました」
深々と頭を下げた男は職務室を出て行った。
(忙しい時に限って、厄介事が起きるんだから困ったものだ)
目の前に並んだ三つのディスプレイを見詰めながら、誰に言うでもなくボヤいてしまった。
地上で何が起ころうが些細な事だが、創造主としての職務は果たさなければならない。
アース神の食事会で聞いたハーモニカの音色が思い出され、急に癒しが欲しくなった。
『ジュンイチよ、ディフラントだが少し良いかね?』
サスケに乗り移ると声を掛けた。
「ディフラント神様、突然どうされたのですか?」
ジュンイチは儂の出現に驚かなくなっている。
『君のハーモニカが聞きたくなったんだが、時間はないかね?』
「大丈夫ですよ。今、北の大地に四季を取り戻すためにハーモニカを吹いている所ですから」
ジュンイチの気さくさは、出会った時と変わっていなかったので安心した。
『北の大地? それでは魔力融合装置を停止させたのは、やはり君だったか』
「魔力融合装置ですか? エイアイの説明では、処分されて存在しないはずでは?」
『魔力を魔石に封じて有効利用するための透明な円柱の装置なのだが、天上界から持ち出されておったんだ』
「そうだったのですか」
『ところで魔力融合装置がどうなったか知らないかね?』
「円柱の装置でしたら、僕が触れたら不思議な光を放って消えてしまいました」
『あれに触れたのかね?』
防護服などなかった筈なのに、驚きと共に無事でいた事に安堵した。
「はい。気を失いましたが、体調に変化はありません」
『それは良かった。もしも目にする事があったら、保管しておいてくれないか』
「分かりました、気に掛けておきます」
『難題ばかり押し付けてすまないね、日本に帰る時には相応の礼をするからよろしく頼むよ。その四季を取り戻すと言う曲を儂にも聞かせてくれるかな』
「良いですよ」
♪~~~♪~~~♪‼。
ジュンイチは[ふるさとの四季]と言う組曲を吹いて聞かせてくれた。
♪~~~♪~~~♪‼。
心が安らぐ音色に癒され、仕事への意欲が湧いてきた。アース神がこの少年に惚れ込んだのも分かると言うものだ。
♪~~~♪~~~♪‼。
『邪魔をしてすまなかった、頑張ってくれたまえ』
♪~~~♪~~~♪‼。
ハーモニカの音色から膨大な魔力が溢れているので、魔力融合装置がジュンイチの体内にあるのを確信した。
「北の大地で農業を頑張ってみようと思っています」
『そうか、少しは生きる力が身に付いてきたようだな』
彼なら魔力を有効に使ってくれるだろうと、見守ることにした。
「ありがとうございます」
こちらが礼を言わねばならないのだが、ジュンイチが深く頭を下げている。まだまだ気の弱さがあるが、それがこの少年の持ち味なのかもしれない。
『癒されたよ。また聞かせて貰いに来るよ』
ジュンイチがこれ以上厄介事に巻き込まれない事を祈りながら、世界を監視する職務に戻った。
神と呼ばれる存在が何に祈るのかと、自分の思いに苦笑しながらディスプレイに目を遣ると、地上では小動物や昆虫などに異変が起こり始めているのが映り出されていた。




