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エイアイは古代の歴史なのか?


 子供が好きそうな曲を数曲吹いていると、仲間が戻ってきた。


「大きなお屋敷だけど、本当に何もないんだね」


「君はご両親とここで何をしていたの」

 フレッド君もジュリアナさんも不思議がっている。


「何もしていないよ、ただここに座っていただけだよ」


「食事などはどうしていたの?」

 アマリアさんも納得のいかない顔をしている。


「食事ってなに?」

 巨人は首を傾げている。


(食事もしないで、ただ座って古代の歴史を守っている。でも両親を殺されて泣くような感情はある。この巨人は何者なんだ。それに古代の歴史って何処にあるんだ)

 分からない事ばかりだった。


「君はこれからどうするんだい?」


「お父さんとお母さんが、帰って来るのを待っているよ」


「でも、殺されたって?」


「時間が経てば復活するから帰って来るよ」


「復活する? でも、君は毎晩、悲しくて泣いているよね」


「だって夜になると怖いし、寂しくて泣けてしまうんだ」

 巨人の顔がまた歪んできた。


「分かった、分かったから泣かないでくれ。近くの村の人が君の泣き声に困っているんだ」


「そうなんだ、ごめん」


「どうしたら泣かないでいてくれるかな?」


「ジュンイチがハーモニカを吹いてくれたら、楽しいから泣かないよ」

 巨人が笑顔になった。


「さすがリーダー。巨人もテイム出来るんだ」

 フレッド君が呟いた。


「テイムなんかしていないよ」

 巨人が気分を害するんじゃないかとヒヤヒヤした。


「ジュンイチはテイマーなんだね。だからフェンリルとドラゴンを連れているんだ」


「えッ! フェンリルを知っているんだ。でも、フェニックはドラゴンではなくワイバーンだけどね」


「フェンリルは上位の魔獣でかなり強いんだよね。そしてそっちはワイバーンではなくて、覚醒していないドラゴンだよ」

 巨人がサスケとフェニックの事を指摘してきた。


「ドラゴンなのか?」

 肩に乗っているフェニックを見詰めた。


『主様、怖い顔をしないで下さい。私は自分がワイバーンだとは、一度も言っていませんよ』


「確かにな、僕達が勝手にワイバーンだと思っていただけだからな。本当にドラゴンなのか?」


『角を失ったので、正確にはドラゴンではありません』


「角か、サスケと同じなんだな」


「完全体ではないと言え、ドラゴンを眷属にして会話が出来るなんて、ジュンイチは凄いんだね」

 高い所から見下ろしている巨人が、澄んだ目を輝かせて感心している。


「眷属にしたとは思っていないよ、友達になったとは思っているけどね」


「サスケにフェニックか良い名前だね、羨ましいよ」

 巨人がサスケとフェニックを交互に見詰めている。


『君も名前を付けて貰えば』


『そうだぜ、仲間になろうぜ』


『僕も名前を貰えるかな?』


『主は優しいから大丈夫だよ』


『頼んでみな』

 三体の思念が頭に飛び込んできて、眩暈がしそうになった。


「僕にも名前を付けてくれないかな? 友達になりたいんだ」

 巨人が頭を抱えている僕を見詰めている。


「付けて上げなさいよ」

 向かいに座っている仲間三人のジト目が怖かった。


「名前か?」

 またまたネーミングセンスを問われる羽目になってしまった。


「巨人だからジャイアントと言うのわ? ダメか。ビッグならどうかな? ダメ」

 巨人からはまったく反応が返ってこなかった。


(サスケとフェニックは、僕を守って貰うために友達になったんだが、この子とはどんな関係を結べばいいんだろうな?)


「君は古代の歴史を守っていると言ったよね、僕と友達になったら色んな事を教えてくれるかい?」


「知っている事は教えるよ」


「それじゃ君の名前は、エイアイでどうだい?」

 インターネット時代を生きていた僕は、電子頭脳AIを思い浮かべた。


「エイアイ。僕はエイアイ」

 巨人が呟くと大きな躰が縮んでいき、僕と変わらなくなった。

 体つきはスマートで、顔は目鼻立ちがくっきりした二枚目だった。


「ご主人様、精一杯働きますのでよろしくお願いします」

 言葉遣いが変わり、動きも子供っぽさがなくなった。


「格好いい」

 白衣を着た青年に、アマリアさんがうっとりとした表情になっている。


「君がさっきの巨人? 別人だね」

 フレッド君もジュリアナさんも変貌に驚いている。


「ご主人様が名前を付けて下さったお陰です」


「君はこれからどうしたいのかな?」


「はい。両親を助け出したと思っていますが、まずはご主人様と行動を共にしたいです」

 好青年に頭を下げられると、気が引けてしまった。


「人間の格好なんだから、ジュンイチもしくはリーダーと呼んで貰えないかな」


「それでは先輩のサスケ君やフェニック君に、嫌われてしまいます」


「サスケもフェニックも友達だから気にしないよ」


「ご主人様がそう仰るのでしたら、人前ではリーダーと呼ばせて頂きます」


「そうしてくれ」

 サカガミ村の悩み事を解決するためとは言え、また厄介事が増えそうな気がした。


 巨人の屋敷はセキュリティーシステムに使われていた魔石が壊さ人目に晒されていたが、持っていた拳大の魔石を使ってセキュリティーを復活させると屋敷は見えなくなってしまった。


「これではエイアイが留守の間に両親が帰って来ても、屋敷に入れないんじゃないか?」


「大丈夫です。両親はそれぞれ暗証番号を持っていますので、セキュリティーを解除できます」


「そうなのか、凄い科学力だな」

 古代の歴史が何か分からないがそれを守るためのセキュリティーに驚く共に、そのセキュリティーを破った存在に恐怖を覚えた。




 サカガミ村に問題の解決を報告した僕達は、ダーダー連合国の王都に戻るとギルドに報告を済ませて報酬を受け取った。


 復興が進み他国から冒険者が流れ込んでいるので宿屋は満室の所が多かったが、僕達には国が借り上げている定宿があった。


 エイアイは初めての光景にキョロキョロして、落ち着かない様子だ。

 宿屋では個室が与えられているが、夕食を済ませた僕達は一ヶ所に集まって今後の事を話し合った。


「フレッドは、エイアイの所を襲った骸骨が何処へ行ったか占ってくれないか」


「そうだね。魔人ゴーストと関係があるかも知れないから、まずはエイアイの両親探しから始めますか」

 フレッド君もジュリアナさんも異存はないようだ。


「アマリアさんは、これからどうするんですか?」

 宿にまで着いてきたので聞いてみた。


「冷たい事を言うのね。やはり私は仲間とは認めて貰えないの?」


「僕達は名もなき職業の集まりなのです、エイアイもジョブは学者ですからね。騎士のアマリアさんは、宮廷に戻った方が良いのではありませんか」

 剣術に優れたアマリアさんが仲間になってくれると助かるが、彼女の将来を考えると別の道を歩んだ方が良いと思えた。


「私は騎士道も剣士道も捨てて流浪人になるわ。職業浪人なら【名もなきジョブ】に入れて貰えるかしら」


「どうする?」

 訳の分からない事を言ってきたアマリアさんへの返事に困って、フレッド君とジュリアナさんの顔を見た。


「リーダー次第だと思うよ」

 アマリアさんから視線を逸らしているフレッド君は、返事に困って逃げたようだ。


「私は構わないと思うわ。何度も助けて貰っているもの」

 ジュリアナさんがボソッと呟いて決まってしまった。


「ありがとう。よろしくね」

 アマリアさんがいつにない笑顔を浮かべている。


「エイアイを襲った骸骨の正体は分かるかな?」

 突然フレッド君が僕とエイアイを交互に見てきた。


「どうなんだい?」

 フレッド君の意思を汲み取り、エイアイに確認した。


「上位アンデッドのスケルトンナイトです」


「スケルトンナイト?」


「はい。アンデッドになった騎士の中でより強い力を持った者を、スケルトンナイトと呼びます」


「リッチの次はスケルトンナイトか、魔人ゴーストの関与は間違いないな。エイアイ、屋敷にいた時はスケルトンナイトの事を言わなかったのは何故なんだ?」


「名前をつけて貰ってから、ご主人様の質問が理解出来るようになったのです」


「そうなのか」


「スケルトンナイトか、これで占い易くなったよ。それと両親が持っていた物を何か預けて貰えないかな」

 フレッド君はエイアイから父親が持っていた懐中時計を受け取ると、自分の部屋に戻って行った。


「私も休むわ」


「ジュリアナ、アマリアさんの部屋が決まるまで相部屋を頼むよ」

 ジュリアナさんが一人で出て行こうとしたので慌てた。


「いいわよ。行きましょうか」


「ちょっと待って。どうして私だけさん付けなの、仲間に入れてくれたんじゃないの?」


「ごめん。まだ慣れなくて、気をつけるよ」


「気をつけてよ。じゃ、お休み、リーダー」

 女性陣が一緒にいなくなってくれたのでホッとした。


(ディフラントシン様、何時になったらゆっくり出来るんですか?)

 天を仰いでも返事はなく、サスケも横になって寛いだまま動く気配はなかった。


「僕達も寝ようか?」


「私は座ったままで休めますので、お気になさらないで下さい」

 一つしかないベッドを眺めていると、エイアイが椅子に座ったまま目を閉じた。


 サスケは床で寝ているし、フェニックは椅子の背もたれを止まり木のようにして寝ている。

 ベッドに潜った僕は、賑やかになっていく自分の部屋に戸惑いながら目を閉じた。


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