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アシナダ村の騒動


 辺境にあるアシナダ村は王都から早馬車でも五日掛かり、二十人の宮廷魔術師が別の馬車でついてきていた。


 道中、アルバインさんからリッチとゾンビに付いてレクチャーを受けた。

 弱点はどちらも太陽の光に弱いのだが、アンデットなので物理攻撃が効かないから焼き払う以外に倒しようがなかった。

 さらにリッチに至っては強力な魔法を使うので、慎重に戦う必要があると言う事だった。


 アシナダ村に近づくにつれて、空気が重たくなってきた気がした。

 バッハの回廊の攻略成功で死への怖さが少し麻痺していたが、体の芯から恐怖心が湧いてきて震えが止まらなかった。


「この静寂は何なのでしょうかね?」


「アシナダ村はアンデットに支配されてしまっているな。夜になるまでに村を制圧しないと、厄介な事になるぞ」

 黒雲のかかった外を見ているアルバインさんが、沈痛な表情をしている。


「ゾンビはどうやって倒すのですか?」


「魔法で焼き払うのがベストなのだが、数が多ければ魔力が尽きてしまうだろうな」


「魔力が尽きたらどうなるのですか?」


「ゾンビに襲われて殺されたら、自らもゾンビになってしまうだろうな」


「それって、ダンジョンの魔物より質が悪いじゃないですか。ジュリアナの力で何とかならないのかい?」


「ゾンビは死んではいるが完全な骸ではないので、ネクロマンサーの力では操れないんだ。そうだね、ジュリアナ」


「そうです」

 アルバインさんの説明に、ジュリアナさんが小さく頷いた。


「時間があれば祈禱で安らかな眠りを与えられるが、時間もなくて数も多くてはどうにもならないよ」

 フレッド君に視線を向けると、首を横に振られた。


「サスケはどうなんだ?」


『僕が力で倒してもすぐに復活してしまいます』


「だよな~~」

 勝機の見いだせない戦いを前にして、馬車が止まっても怖くて降りられなかった。




「一気に集落全域を焼き払いますか?」

 少し遅れて到着したアルカインさん率いる二十人の魔術師が、アルバインさんの下に集まってきている。


「生存者がいるかもしれない以上、それはダメだ」

 冷血にならなければ生きて行けない世界かも知れないが、僕もアルバインさんの意見に賛成だった。


「ジュンイチ、あの雲を消して太陽を出現させられないか?」

 全員が今にも雨の降りだしそうな空を見上げた。


「やってみます。サスケ、おいで」


 ♪~~~♪~~~♪‼。


 明るい日差しを思い描きながら[太陽がくれた季節]を奏でてみた。テンポがよくて踊りだしたくなる曲だ。


 ♪~~~♪~~~♪‼。


 黒い雲が南に流れ、辺りが少しずつ明るくなってきた。


 ♪~~~♪~~~♪‼。


「よし、ドアを壊しても構わないから家の中を確認しろ。だが中には決して入るな、声を掛けて外に出てきた人間だけを保護しろ」

 アルカインさんの指示で魔術師達が村に入っていた。


 ♪~~~♪~~~♪‼。


 黒い雲が流れて太陽の光が差してきているが、ハーモニカを吹き続けた。


 ♪~~~♪~~~♪‼。


「国王様のメイを受けてゾンビを倒しにきた魔術師だ! 人間としての自覚のある者は外に出ろ!」

 魔術師達が大声を出しながら村中を駆け回っている。


 ゾンビ化している人間は、太陽の下には出てこなかった。出てくれば蒸発して灰になってしまうのだ。

 数軒の家から小さな子連れの親子が、痩せ衰えた姿で出てきた。家の中にあった物で食いつなぎ、数日間隠れて過ごしていたのだろう。


「王都から騎士と魔術師が来た筈なんだが、どうなった?」

 アルカインさんが村人に聞いている。


「たぶん、あそこに」

 村人が指差した先には集会所のような建物があり、雨戸の隙間から覗いているような気配があった。


 声を掛けても出てこない所を見ると、全員がゾンビになっているのだろう。


「あまり時間がない。これから村を焼き払う。いないとは思うが、万が一にも襲って来る者がいたら構わないから攻撃しろ」

 太陽の傾きを見たアルカインさんが、魔術師達に指図してアシナダ村を包囲させた。


 一斉に放たれたファイアボールで家々が燃え上がったが、出て来る者はなく黒い煙と共に悪臭が一帯に充満した。


 こうしてアシナダ村は人口の十分の一を残して、フレッツ王国から消滅してしまった。


「諸君、ご苦労だった。君達は村人を連れて王都に戻り、報告をしてくれたまえ。ここから先は他国に入るから、緊急事態ではあるが君達軍属は介入しない方がいい。我々は冒険者だからどこの国に入るのもフリーパスだからな」

 アルバインさんはアイマスクを嵌めると、黒から白の派手なローブを着たバイトルさんに姿を変えた。


「分かりました。ご武運をお祈りします」

 アルカインさん達は生き残った村人を連れて王都へ戻って行った。




「さて、ダーダー王国の王都にはリッチがおるだろうが、一緒に来てくれるか?」


「ここまで連れてきておいて、いまさら何ですか。僕達は冒険者仲間じゃないですか」

 声が震えたが強がって見せるしかなかった。リッチを倒さない限りゾンビの恐怖は消えないのだから。


 フレッド君もジュリアナさんも頷いているところを見ると、同じ考えのようだ。


 ダーダー王国の規模はフレッツ王国とほぼ同じで、周辺の三カ国とも大差はなかった。


 その国がゾンビ騒動で崩壊しそうな状態なのだから、周辺の国々も戦々恐々としている筈だ。


「街や村を回ってゾンビを倒していたのではきりがないから、真っすぐ王都に向かって国王に会ってみよう」

 アルバインさんはバイトルさんに変身しても、決断力は変わっていない。


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