冬の葉は枯れていく
静かな蝉の歌、涼しい陽射し。
高校二年の夏が始まった。
台湾での新学期は、夏から始まる。
新入生サポートを担当してる私、水野 葉瑠は、高校二年生であり、「読書部」の部長であり、「バレー部」の会計でもあった。
そう、忙しい夏だった。
新入生たちの面倒を見ながら、部活のメンバー勧誘にも気になっていた。
もちろん、自分の勉強もしっかりしないと。
それどころか、台湾の高校では、二年生になった時、生徒を進路によって改めてクラスを決めることになってる。
地獄のような高校一年を過ごした私は、もう一度他人に心を開けるのだろうか。
わからない。
二日間の新入生サポートが終わったことで、私の責任は一つ消えた。
しかし、これが終わりじゃない。
新入生のサポートが終わったその日、学校では部活の博覧会が開催される。
部活それぞれが新入生を勧誘し、新入生たちもあちこちに回って、ゲームを遊んで賞品をもらう。
簡単にいえば、デパートのセールみたいなもの。
部長として、私も当然このチャンスを見過ごせず、すぐにでも机と椅子をグランドに置いて、そして大好きな本たちをそこに置いた。
そう。
本たちの日向ぼっこだけ。
部員の側に立って、私は人混みを眺めている。
そもそも、ここで新入生を勧誘できるとは思わないし、迷い込んだ子が数人だけでもラッキーだと思う。
他のことを考えている。
始業式以来、私は新入生と部活のことで頭が一杯になって、新しいクラスメートと会話することすらあまりなかった。
まともに参加したのは、初日の自己紹介くらいだった。
こんな私は、残り二年を無事に過ごせるのだろうか。
「はぁ...」
ため息をついた私は、隣にいる唯一の男性部員が、ある少年と話をしていることに気付いた。
あの少年の身長は…180センチかな?かなり高い。
爽やかな笑顔で、性格もよさそう。
見る限り、この二人は仲がいい知り合いだったと思う。
「友達を探しに来たのですか?」
いつものパターンで、私は彼に聞いた。
見知りの人には、いつも優しそうに構えて、相手にリラックスさせることができる。
しかしそれは、ただの癖。
「同級生を探しに来た。」
少年は笑って答えた。
その制服を見れば、同い年の高校二年生だとわかった。
「そうですか。彼ですよね。」
誰がどう見ても、あの二人がクラスメートだと思うのだろう。
あの仲良さ、息もぴったりだし、きっと仲がいいクラスメートだろう。
見ればわかることを言うつもりだったが、彼はそう答えた。
「彼じゃない、君だ。」
陽射しの中で、うまく見えない、彼の顔。
この言葉、このシーン、忘れたりしないだろう。
「私...!?」
クラスメートとの会話が十回以下の私は、この人を覚えてるはずがない。
しかし、ここで相手の名前すら言い出せないと、失礼な感じがするし。
一体誰...!
そういえば、自己紹介の時、こんな人がいた。
背が高いし、顔も結構イケメン。
一年生のある同級生と似ているなーと、この出席番号の人はみんな同じ顔かなーと、思ったことがある。
あの時の考えが、この時思い出させたひらめきになるとは、予想外だった。
「...!出席番号32番の人!」
「正解だ。」
「...クラスにいる時間が短いから、君の顔を覚えていなくて、申し訳ありません!」
そういえば、あの人も背が高い。
私は思わず、二年半、この心に住んでたあの姿を思い出す。
私が葉っぱだというのなら、彼はきっと小鳥の翼だろう。
同じ軽さなのに、違う場所に行く。
私は地面に落ちて、泥まみれになる。
彼は大空に飛んで、飛び回っている。
私は目を閉じた。
もうあの人を考えたくないから。
あの一年間の痛みを、あの人に言いたかった、知らず知らず、あの人に救いを求めていた。
今でも、あの一年間を思うと、彼を思い出す。
わかっている。
あの人は一度でも、私に痛みをくれなかった。
過去の涙に縛られ、前に踏み出せなくなったのは、いつだって私に自身だった。
それでも、私は目の前にある、この少年から目を逸らした。
彼を見ると、いつもあの人を思い出してしまうから。
博覧会が終わって、予想通り、新入生は二人だけだった。
少なくても、クラスメート一人と知り合いになった。
私は自分を説得した。
「そういえば、彼の名前は...?」
出席番号のリストで、私は初めて彼の名前を知った。
「城野...冬和。」
あの時の私は、この名前が私にとって、大きな意味を持つことになると、まったく予想していなかった。
背が高い同級生、しか思わなかった。
あの名前を見たとき、なぜ私は思い付かなかったのだろう。
冬に、葉はない。
そして晴も、永久に続けない。