表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永昼  作者: 雨上がり
2/12

冬の葉は枯れていく

静かな蝉の歌、涼しい陽射し。

高校二年の夏が始まった。


台湾での新学期は、夏から始まる。

新入生サポートを担当してる私、水野 葉瑠(はる)は、高校二年生であり、「読書部」の部長であり、「バレー部」の会計でもあった。

そう、忙しい夏だった。

新入生たちの面倒を見ながら、部活のメンバー勧誘にも気になっていた。

もちろん、自分の勉強もしっかりしないと。

それどころか、台湾の高校では、二年生になった時、生徒を進路によって改めてクラスを決めることになってる。

地獄のような高校一年を過ごした私は、もう一度他人に心を開けるのだろうか。

わからない。


二日間の新入生サポートが終わったことで、私の責任は一つ消えた。

しかし、これが終わりじゃない。

新入生のサポートが終わったその日、学校では部活の博覧会が開催される。

部活それぞれが新入生を勧誘し、新入生たちもあちこちに回って、ゲームを遊んで賞品をもらう。

簡単にいえば、デパートのセールみたいなもの。

部長として、私も当然このチャンスを見過ごせず、すぐにでも机と椅子をグランドに置いて、そして大好きな本たちをそこに置いた。

そう。

本たちの日向ぼっこだけ。


部員の側に立って、私は人混みを眺めている。

そもそも、ここで新入生を勧誘できるとは思わないし、迷い込んだ子が数人だけでもラッキーだと思う。

他のことを考えている。

始業式以来、私は新入生と部活のことで頭が一杯になって、新しいクラスメートと会話することすらあまりなかった。

まともに参加したのは、初日の自己紹介くらいだった。

こんな私は、残り二年を無事に過ごせるのだろうか。

「はぁ...」

ため息をついた私は、隣にいる唯一の男性部員が、ある少年と話をしていることに気付いた。

あの少年の身長は…180センチかな?かなり高い。

爽やかな笑顔で、性格もよさそう。

見る限り、この二人は仲がいい知り合いだったと思う。

「友達を探しに来たのですか?」

いつものパターンで、私は彼に聞いた。

見知りの人には、いつも優しそうに構えて、相手にリラックスさせることができる。

しかしそれは、ただの癖。

「同級生を探しに来た。」

少年は笑って答えた。

その制服を見れば、同い年の高校二年生だとわかった。

「そうですか。彼ですよね。」

誰がどう見ても、あの二人がクラスメートだと思うのだろう。

あの仲良さ、息もぴったりだし、きっと仲がいいクラスメートだろう。

見ればわかることを言うつもりだったが、彼はそう答えた。

「彼じゃない、君だ。」

陽射しの中で、うまく見えない、彼の顔。

この言葉、このシーン、忘れたりしないだろう。


「私...!?」

クラスメートとの会話が十回以下の私は、この人を覚えてるはずがない。

しかし、ここで相手の名前すら言い出せないと、失礼な感じがするし。

一体誰...!

そういえば、自己紹介の時、こんな人がいた。

背が高いし、顔も結構イケメン。

一年生のある同級生と似ているなーと、この出席番号の人はみんな同じ顔かなーと、思ったことがある。

あの時の考えが、この時思い出させたひらめきになるとは、予想外だった。

「...!出席番号32番の人!」

「正解だ。」

「...クラスにいる時間が短いから、君の顔を覚えていなくて、申し訳ありません!」


そういえば、あの人も背が高い。

私は思わず、二年半、この心に住んでたあの姿を思い出す。

私が葉っぱだというのなら、彼はきっと小鳥の翼だろう。

同じ軽さなのに、違う場所に行く。

私は地面に落ちて、泥まみれになる。

彼は大空に飛んで、飛び回っている。

私は目を閉じた。

もうあの人を考えたくないから。

あの一年間の痛みを、あの人に言いたかった、知らず知らず、あの人に救いを求めていた。

今でも、あの一年間を思うと、彼を思い出す。

わかっている。

あの人は一度でも、私に痛みをくれなかった。

過去の涙に縛られ、前に踏み出せなくなったのは、いつだって私に自身だった。

それでも、私は目の前にある、この少年から目を逸らした。

彼を見ると、いつもあの人を思い出してしまうから。


博覧会が終わって、予想通り、新入生は二人だけだった。

少なくても、クラスメート一人と知り合いになった。

私は自分を説得した。

「そういえば、彼の名前は...?」

出席番号のリストで、私は初めて彼の名前を知った。

「城野...冬和(とわ)。」

あの時の私は、この名前が私にとって、大きな意味を持つことになると、まったく予想していなかった。

背が高い同級生、しか思わなかった。

あの名前を見たとき、なぜ私は思い付かなかったのだろう。

冬に、葉はない。

そして(はる)も、永久(とわ)に続けない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ