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一話

 ぶつかって俺は死んだらしい。

 しかし真っ白な光と共に意識が戻った。

 瞬間的に俺は思い出した。本能的に理解した。

 俺は異世界に転生したんだと──……


「君をこのパーティから追放する、よってクビだ」


 桃色を帯びた白銀の長髪の美女らしき誰かが、俺を見下ろして冷たく告げた。


真っ赤な鬼の面を被っているので顔は見えない。際どい和装から覗く胸元は、こぼれ落ちそうなほどたわわに実っていた。

 ……ところでこいつは何を言っているんだ……?


「主人殿の言う通りだ、今すぐにこの場から立ち去れ」


「……きゅう……ふゆぅ……バイバイ」


 俺を見下ろす二人の綺麗な女達も、口々に俺に別れを告げる。


 一人は、垂れた犬の耳のようにくるくると跳ねた、癖が酷い黒髪。短く太い眉、鋭い海色の瞳の、冷たそうな女。


 もう一人は、浅葱色の長い髪をポニーテールに束ねた大きな紅色の吊り目に、優しく垂れた眉の、気の弱そうな女。


「あ? テメェらみてえなチンカス共はこっちから願い下げだ、ぶァァァァァァアか!!」


 俺の意識と正反対に口が勝手に動き出す。出てきたのはモブ不良Bのような、頭の悪そうな小物の罵倒だった。


 途端に、女二人が目を丸くさせてこっちを凝視した。

 黒髪の女は心底驚いたように。ポニーテールの女は目を爛々と。

 そして鬼の面を被った女は、


「……御宅は良い、無能はいらない。装備品も全て置いてさっさと行け、クソ野郎」


 驚くほどよく透き通る声で辛辣な拒絶を繰り返すだけだった。

 何も分からない状態だが、記憶の断片だけが流れ込んでくる。

 俺が転生したこの男は……神、らしい。

 そして圧倒的な力を持ちながら、鬼の女に足蹴にされた記憶が蘇る。同時に、黒髪の女とポニーテールの女とは、一緒に肩を並べておにぎりを頬張る、仲良くしていた瞬間が断片的に……脳裏に過った。そんな彼女たちは俺を仲間と呼びながら、間に挟んで……肩を寄せ合っていた。


 じゃあ何故この神は……俺は、今見下されている?

 この女二人に……仲間に、騙されていたということか?

 

「仲間じゃなかったんですか……?」


 思わず口を突いて出た言葉にギョッとするのも束の間。黒髪の女は鋭い瞳を更に鋭く狭め睨みつけてきた。


「オマエこそ仲間じゃない! 今すぐに出て行け!」

「あう、……きゅう……」


 泣き出しそうなポニーテールは堪らずに顔を覆ってしまっている。何だ、この神を、……俺を、仲間から追放することに、罪悪感でも覚えたのか?


 ……でも、今更遅い。

 あんなに仲間だと肩を組み合い共にしてきたコイツらが、裏切り者だったなんて……! 絶対に許せない……!


 とどめとして、鬼の面の女はただ辛辣に一言俺に言い放った。


「さっさと帰れ、二度と顔を見せるな」

「そんな、っ……!」

「元いた場所へ帰れ!!!」


 耳をつん裂くような甲高い怒声に、俺は何故か涙が溢れてきた。

 俺はここにはいらない……俺はここに必要のない存在……!


 ……許さないぞ、クソ鬼女。

 必ず復讐してやる……!

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