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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

りゅう

作者: 沼スノキ
掲載日:2021/09/06

 

 ドラゴンには夢があると思う。

 ただでさえカッコいいのに、強い。

 見目よし強さよしの最強モンスターって感じ。


 ドラゴニュートみたいなドラゴン人間もかっこいい。

 筋肉ゴリラなお兄様もいいけれど、戦闘狂系お姉様も捨てがたい。


 竜騎士の職業もカッコいい。

 ドラゴンライダーだ。僕も乗りたい。


 そんなドラゴンが好きな僕の相棒は6本足の爬虫類もどき。


 ツノが2本、身体はコブだらけ、肌はゴツゴツしていて硬い。首元にもふもふのファーがついていて襟巻きのよう。

 羽根もついていて、コウモリのようなそれはどこまでも飛んでいける体力を持っている。


 それでいて可愛らしい顔付き。

 目は8つある。口は大きくて舌も分厚い。

 耳元にはキュートなエラ。

 身体のあちこちにちょっと溶けている部分があって、そこには毒があるけど、綺麗な花には毒があるというし、そんなところも素敵だしで問題はない。


 普段は肩に乗るサイズでいるけど、本来の姿は10メートルはある巨大サイズ。小型化機能搭載の天才爬虫類だ。


 ドラゴンが好きな僕にとってコイツはとりあえず爬虫類。爬虫類はドラゴンの仲間(偏見)よって、この子はドラゴン(ということにしておく)なのだ。



 僕は相棒と5歳の時に出会った。それはまだ前世の記憶が朧げで、しっかり覚醒していなかった頃。


 子供らしく、家の掟というか村の掟を破り捨てて、元気に山まで遊びに行った日。

 村の他の子は皆誘っても来なかったから一人で探検していた時のこと。

 化け物が出ると噂の場所には特になにもなく、つまらないから帰ろうと思ったら、そこで運命の出会いをしたのだ。


 可愛らしい顔つきの巨大爬虫類もどきがそこにいた。


 その姿を今でもはっきり覚えている。


 堂々たる佇まい。ぎょろりと動く八つの目はあちらこちらに向いていて、半開きになった口から大きな牙が見えた。

 なによりもキュートだったのは、エラ。僕はエラに惚れたと言っても過言ではない。なんて素敵な海の色。

 緑の強い青色が、鮮やかなその色が僕を飲み込んだ。


 一目惚れして、無遠慮に近づき、吹っ飛ばされたのはいい思い出だ。頑丈な僕は怪我もせず、特に深く考えずにまた近づいていった。


 どこの子? 今一人? よかったら一緒に遊ばない?


 今思い出すとどう足掻いてもナンパの常套句にしか聞こえない誘い文句を言いながら、僕はしばらくそれの前で騒ぎ立てた。


 毎日それを繰り返していたら、懐いたのか一緒に来るようになった。


 連れ出すまでの過程でかなり怪我をした。今世は頑丈な体だったので、捻挫はしても骨折はしなかった。一回、勢いよく尻尾で薙ぎ払われた時。僕がぶつかった木が4本折れて5本目を軋ませながら止まった時は流石に息が止まるかと思った。

 全然平気だよとばかりに身体は健康で、すぐに立ってまた近づいて行けた僕。今思えばなかなか恐怖の執着力。


 やっと連れ出せたので、家族に紹介することにした。


 家に連れて帰ったら案の定、元いた場所に返してらっしゃいとか言われたけど、いっぱい説明して、大きいこの子がどれだけ素晴らしいか力説した。

 普段僕がいい子だったこともあってokがもらえた。

 家族にはそれ以来近づかれもしなくなった。



 その代わり、相棒とは寝ても覚めてもずっと一緒だ。



 相棒と暮らすために、まず何を食べるのかが問題だった。王道は肉だろうと思ってナマニクを渡していたが、夕食を盗み食いして以来、調理されたものしか食べなくなった。

 野菜も調味料も好みはあるがどれも平気な顔して食べているのでおそらく雑食。

 甘いお菓子もよく食べる。美味しそうに頬張る君の顔が大好き。



 あんまりにも可愛いのでいつも上着のフードに入れていたが、学校に連れて行ったらこっぴどく叱られたのでカバンやリュックに詰めて隠していくことが増えた。


 ちなみの学校といっても、子供集めて読み書き、計算、一般常識を教えるくらいの簡素なもので、授業の間ずっと遊びまくっている子供がほとんど。


 校則(ルール)なんてあってないような場所だったからペット同伴もいけると思ったんだけどなぁ。


 学校では基本暇を持て余している。

 転生者の僕と周囲とでは精神年齢が違うので、友達に合わせてあげない限りぼっち確定案件だった。合わせる気がなかったので僕はいつもお一人様だ。

 言語はご都合主義で読めるし、計算は和差積商くらいなら求められる。一般常識の授業は楽しいが、図書館に行けば普通に学べる。


 この場に来る意味とは、と検索かけたいところだったが、この世界にネットなんて便利なものはない。


 いい子ちゃんにして周囲の好感度上げも、相棒を連れて歩き始めてから何故だか落ちてしまった。

 怯えられるわ、怒られるわ、泣かれるわ、散々だ。

 相棒のどこがダメだというんだ。

 こんなに可愛いのに!


 一度、村の長のような偉そうなおじちゃんに相棒を盗難されて、ブチギレた時。怒りに身を任せて、ソイツの家をお化け屋敷に改造したのが不味かったのかもしれない。


 別に特別酷いことをしたつもりはない、相棒の囚われている場所探しついでに飾っただけだ。

 材料は、家の近くに生えていた赤い実の汁や黒い布、近所の山にあった白骨死体っぽい何かなどなど。

 人体模型とケチャップで作った悲しい出来だと思っていたのだが、明らかに嘘っぽい遺書のようなものに恐れをなしたらしく、おじちゃんはしばらく教会通いをしていた。


 そんな優しくて少しやんちゃな村人Aを目指す子供に我が親たちが村から出てけと宣言した。

 急すぎてもはや悲しむ気持ちすら湧かない。


 よくよく話を聞くと、昨日雨が止むように吊るしたてるてる坊主が首吊り坊主として扱われ、謎の儀式をしているように見えたのだという。邪教の教祖めと罵られた。


 教徒じゃなく教祖なあたりが不思議でしかない。教徒は誰だ。相棒か?

 失礼すぎる。てるてる坊主には可愛い顔も描いたのに、儀式の生贄だなんて。

彼らの論理を通すと、日本の子供がみんな、雨の降る日に首吊り人形を飾る邪教の教徒になってしまう。


「失礼しちゃうよね……というか異文化すぎて僕とあの村は合わなかったのかもしれない」


 身分証はあるし、金と食料は実家からコソ泥してきた。


 そんな旅の始まりを思い出しながら、目の前の巨大爬虫類もどきを見る。


 でかい。ただひたすらにでかい。

 僕は彼の爪先より小さいのだ。


「大きく育てすぎたのかもしれない」


「ぎゅぎゃぎゃぎゃ」


「うん、まぁ可愛いからいっか」


 今日も相棒の『やつはし』が可愛い。

 どうしてその名なのかというと、八つ目があるやつめちゃんだと安直だから少し改変してやつはしちゃん。


 見目によく合う可愛い名前だと思っている。


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